シンプラル法律事務所
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論点整理(敵対的買収関係)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

米国の状況
Activist Investors 2種類の投資家 ㋐TOB・公開買付を視野においた投資家。
㋑株主提案をしようとする投資家。
公開買付:上場会社の株式を市場価格より高い価格で買収
⇒会社の経営を改善して会派の価値を引き上げる⇒より高い価格で売却
株価 株価の決定要因:present value of net cash flow:
企業の将来の純キャッシュ・フローの現在価値による。

経営改善とは、収益を上げて費用を抑える⇒株価が上がる。
現在価値とは、これから将来のすべての収入と費用を考えて決まっている⇒
長期的とか短期的とかいう発想自体に問題がある。
2種類の買収 ①委任状争奪戦 15~25%の株主が他の株主に議決権行使を依頼。
⇒味方を取締役会に入れる。
価値増加分は持株割合分しか享受できない。
②公開買付け 1960年代に、委任状争奪から公開買付に
公開買付⇒100%の株式を買収⇒全部自分の収益になる。
買収防衛策 ポインズン・ピル 標的会社がその株主に新株予約権を割り当てる。
株主への割当てで、新しい株を無償か割引で購入することができる権利を与える。
①買収会社があるレベル以上(10%~15%)を買い入れると、ポイズン・ピルが発動されて、買収者以外の既存の株主は、株式を安く更に手に入れる権利を持つ。

買収者の株式の議決権比率が下がるとともに、経済的価値も下がる。
②買収者以外の既存の株主にとっても、買収者に公開買付で株を売るよりも、保有しておいてポイズン・ピルが発動された方が、安い価格で新しい株を手に入れることができる

株を売らない方が良い。
①②

買収者に対する抑止的効力。
委任状争奪戦により撤廃できる⇒期差任期取締役会(staggeredu boeard)と組み合わせることにより、有効な防衛策となる。
期差任期取締役会 ①例えば、12人の取締役会のメンバーを3組、4人づうtに分ける。
②任期を1年間ではなく3年間にする。
③毎年4人づつ選任する。

1度の委任状争奪戦では、4人しかいれられない。
but
1年後までに、会社はいろいろな防衛策を取り入れることができる。
買収者にとっても、1年以上も後に公開買付けによる買付けの実行になるが、1年後の株価がどうなっているかはわからない。

ポイズン・ピルと期差任期取締役会制度の組み合わせは有効な防衛策となる。
デッド・ハンド・ピル ポイズン・ピルを導入した取締役会しか撤廃できないもの。(大抵のポイズン・ピルは取締役会が撤廃しようと思えば撤廃できる。)

買収者が委任状争奪戦に勝利しても、ポイズン・ピルを撤廃できない。
デラウェア裁判所では違法との判断。
㋑株主提案を主張する株主 私的なファンド・組織ではない。
(私的なファンドはTOBに目をつける。)
米国だと労働組合の年金基金。
⇒取締役会に労働組合の要求を受け入れてくれるような人間を送り込もうとしている。
対応 聞いてアイデアとして良いアイデアであれば受け取り、意味のない提案であれば断ればいい。

新株・新株予約権の発行
新株発行 種類 ㋐通常の新株発行
㋑特殊な新株発行:
①取得請求権付株式、取得条項付株式、全部取得条項付株式を会社が取得する際の新株の発行
②株式分割、株式無償割当てによる新株の発行
③新株予約権の行使による新株の発行
④吸収合併、吸収分割、株式交換の際の新株の発行
方法 ㋐公募:
募集株式を引き受ける者を募集し、応募者に募集株式を割り当てる方法。
応募者の中の誰に対してどれだけの募集株式を割り当てるかについて制約はなく、会社が自由に決定することができる。(割当自由の原則:法204①)
㋑第三者割当て:
特定の者に募集株式を割り当てる方法。
株主に割り当てる場合でも、その持株数に比例せずに募集株式を割り当てる場合は第三者割当てとなる。
㋒株主割当て:
既存の株主にその有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を与える方法。(法202①②)
発行手続
公開会社の場合 ㋐取締役会による募集事項の決定:
公開会社においては、有利発行の場合を除き、取締役会が募集株式の発行方法(公募か第三者割当てかなど)および募集事項についての決定を行う。(法199①、201①)
募集事項は均一でなければならない。(法199⑤)
㋑有利発行(公募または第三者割当ての場合):
株主割当て以外の場合で募集株式の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額であるときは、前記の募集事項は株主総会の特別決議により決定。
取締役は、その株主総会においてとうらい払込金額(=特に有利な金額)による募集株式の発行が必要な理由を説明しなければならない。(法199③、309②(5))
(株主割当ての場合は、払込金額が特に有利な金額であるときでも、募集事項の決定は取締役会決議で足りる。)
非公開会社の場合 ㋐株主総会の特別決議:
非公開会社が募集株式の発行等を行う場合、発行(処分)される株式は譲渡制限株式(法107①(1))か譲渡制限種類株式(法108①(4))
この場合、その都度、原則として株主総会の特別決議により募集要項を決定。(法199①②、309②(5))
尚、募集要項、一部の者に有利に定めることは許されず均等でなければならない。(法199(5))
㋑取締役会・取締役への募集事項決定権限の委任
株主割当ての場合に限り、取締役会設置会社では取締役会(取締役会非設置会社では取締役)が決定すると定款に定めることができる。(法202③)
but
有利発行であるか否かを問わず、公募及び第三者割当ての場合に、募集事項等を取締役会(取締役会非設置会社では取締役)が決定すると定款に定めることはできない。
発行等の差止め ①株主に募集株式発行等の差止め請求権が認められる。
←違法又は不公正な募集株式の発行等が行われた場合、株主によっては持株割合の減少や持株価値の減少という不利益を被ることになる。
②これを本案として募集株式の発行等の差止めの仮処分を求めることができる。(民保23条)
←差止めの訴えの係属中に募集株式が発行されてしまうと訴えの目的が達し得なくなり、訴えは却下されることになる。
要件 募集株式の発行等が、
①法令もしくは定款に違反する場合、または、
②募集株式の発行等が著しく不公正な方法により行われる場合であって、
それにより、
③株主が不利益を受けるおそれのあること
が必要。(法210条)
①法令・定款違反 法令違反:
募集事項が均等でない場合、特に有利な払込金額による第三者割当発行が株主総会の特別決議を経ていない場合など。
定款違反:
定款所定の発行可能株式素数を超過する場合、定款に定められていない種類株式を発行する場合、定款に定められた株主の募集株式の割当てを受ける権利が無視された場合など。
②著しく不公正な方法 支配権争いが生じている最中に自派の持株割合を増加させる目的で第三者割当の募集株式発行を行うことは、「著しく不公正な方法」に当たる。
買収防衛の目的の場合も、基本的に同様。
判例は、正当な資金調達の目的が認められる場合には、特定の株主の持株比率を高める結果を伴っても、募集株式発行の差止めを認めない。
新株予約権の発行 新株予約権 その権利者(新株予約権者)が権利行使期間内に会社に対しあらかじめ定められた権利行使価額を払い込み、その権利を行使することにより、株式の交付を受けることができる権利。(2条21号)
新株発行契約の予約権であり、会社の債権者としての側面をゆうすr。
決定機関 公開会社 特に有利な条件または特に有利な金額による新株予約権の発行の場合(法238③)を除き、公開会社が株主割当て以外の方法により新株予約権を発行する場合には、取締役会の決議により募集事項を定め(法240①)、割当日の2週間前までに株主に対し募集事項の通知・公告をしなければならない。(法240②③)
非公開会社 株主総会の特別決議により募集事項を定める。(法238②、309②(6))
有利発行 新株予約権の払込金額<新株予約権そのものの時価 の場合が「有利」。
新株予約権を無償で発行する場合には無償であることが特に有利な条件であるとき、または、新株予約権の発行に際し一定の払込金額の払込みを要する場合にその金額が特に有利な金額であるときには、取締役は株主総会においてそのような新株予約権を引き受ける者の募集が必要であることの理由を説明しなければならず(法238③)、株主総会の特別決議が必要となる。(法240①)
発行の差止め 新株予約権の発行が、
①法令または定款に違反する場合、または
②著しく不公正な方法により行われる場合であって、
ぞれにより、
③株主が不利益を受けるおそれがある時は、
株主は会社に対して募集新株予約権の発行の差止めを請求することができる。
(法247条)
募集株式の発行の場合と異なり、新株予約権の発行については資金調達の必要性は必ずしも要求されない。
支配権の争いがあるような場合になされる新株予約権の特定の者への発行が不公正発行にあたるか否かは具体的事例ごとに判断するしかない。
支配権の維持・争奪の目的 実態 募集株式の発行等につき株主総会の特別決議を要しない公開会社において、会社支配の帰属をめぐる争いがある場合に、取締役会の多数派が自派にのみ募集株式を割り当てる第三者割当てを行い議決権の多数を維持・争奪しようとする。
考え 裁判例には、取締役会が募集株式の発行等を決定した種々の動機のうち、自派で議決権の過半数を確保する等の不当目的達成動機が他の動機に優越する場合にその発行等の差止めを認め、他の場合には認めない「主要目的ルール」と呼ばれる考え方が有力であり、かつ、実際には不当目的達成動機が優越していたとはめったに認定しない(会社に「資金調達の必要」があったことが認定されれば、調達方法の選択には原則として取締役会の判断を尊重する)傾向が強い。
公開会社(法2条5号)でも、実態は閉鎖型のタイプの会社において、とりわけ多数派株主の過半数支配を失わせるような募集株式の発行等が行われる場合には、不当目的達成動機が強く推定されるべき。(江頭p701)
上場会社において、株式を買い占められた際に対抗措置として行われる第三者割当ての方法による募集株式の発行等については、著しく不公正と認めることを裁判所に躊躇させる事情があった。

日本で従来行われた上場会社の株式買占めは、ほぼ例外なく、支配権取得が真の目的ではなく、取引所金融商品市場(金商2条17項)を通じてジリジリ買い上がったすえに高値による市場での売却または会社関係者に対する高値肩代わり要求をねらったもの(⇒裁判所も取締役の対抗措置を容認せざるを得なかった。)
判例 ①東京高裁H17.3.23:
対抗措置として新株予約権が発行された事案につき、特定株主の持株比率を低下させることを主要目的とする措置でも、特段の事情がある場合には「著しく不公正」に当たらないケースがあることを認めつつ、特定株主会社を「食い物」にすることが明らかな場合(「4要件」と呼ばれる)のみが当該特段の事情に当たるとする。

取締役会が独立委員会の判断に従い新株予約権の行使を可能とする決定を行うタイプのポイズン・ピルの発動が適法と認められる可能性は、きわめて小さい。

コラム
未曾有の株安に対する上場会社側の対応
(商事法務1942)
状況 東日本大震災から6か月、日本の株安が深刻。
大半の情状会社のPBRは、理論的に説明できないほど低い値に陥っている。
●第1:買収をするチャンスであるとともに、買収されるチャンスでもある。
震災の痛手⇒国内資金からなかなか拠出されない。
日本株を買い増しているのはひとえに外国人投資家。
日本の金融当局が勧めている持合解消策⇒金融機関による事業会社株式の保有が困難になりつつあることの成果でもある。
中国マネーが際立った存在感。
ここ数年、世界的な金融危機によってもたらされた過剰流動性は、その多くが中国に流れ着いている。
中国資金の大半は半官半民で、数兆円規模の額を簡単に拠出できる。
●第2:リーマン・ショックで痛手を受けた各種ファンドにも、資金が再度集まりつつある。
イベントドリブン型の投資ファンド(「騒ぎが大きくなればなるほど必ずもうかる」投資ファンド)の活動の機会。
買収 長年のしがらみ経営を続けてきた日本企業側にとって「話せばわかる」的な状況ではなくなりつつある。
敵対的買収で始まり敵対的買収で終わることはあまりない。
←敵対的なままで買ってもそのあとで得るものがない。
当初は対象会社の経営陣からみると敵対的だったのが、株主や主要債権者等の外堀をどんどん埋められ、最終的に売却せざるを得なくなる非友好的買収ば大半。
防衛策 どの資本主義国も、市場買付けや公開買付けという買収者側のアクションに対して、株主総会による株主医師繁栄の機会を事前に保障している。

市場買付けや公開買付けでは、賛成票を当事者有権者である株主は株を買われており選挙後に不在になるので、歪みが生じる。
現行の日本では、買収防衛策が導入されていない限り、株主総会による意思反映の機会が法制上保障されていない。⇒企業が自ら買収防衛策を入れておくほかない。
買収防衛策は、両当事者(買収者と経営陣側)の力関係を対当化させるプロセスを保障するツール。
買収防衛策の真の機能から逃げずに、適正に使いこなせる日本企業が、過酷なグローバル資本市場を生き抜いていけるワンランク上の企業。
買収防衛策の中でも、買収提案があった場合の出口での総会意思確認の機会が必ず保障されている買収防衛策であれば、買収防衛策導入という入口段階での総会承認は法的に必要ない。
今後株安が続くと、買収防衛策の真の機能が改めて見返される時が早晩来る。
それは、複雑なしがらみを背負った日本企業の各種再編が待ったなしで進行し、日本の経済復興がみえてくる道でもある。


企業買収関係
敵対的買収 買収の対象となる企業の経営陣の同意を得ないで行われる買収のこと。
買収防衛策の展開 平成17年2月初旬に、買収者は、東京証券取引所の上場会社に対して、株式公開買付(TOB)によらず、東京証券取引所の立会い外取引という特殊な取引を通じて対象会社の株式を買い集めた。
これに対して、対象会社は、対抗策として新株予約権をグループ会社に発行することで買収者の持株比率を薄めようとしたが、裁判所はそのような新株予約権の発行を差し止め、対抗策は不発に終わった。(東京高裁決H17.3.23)

6月下旬の株主総会で、いくつかの上場企業が買収防衛策を付議したが、なかには、大口株主である機関投資家によって反対され、経営者の提案した議案(授権株式数の増加・取締役の員数の上限設定等の定款変更)が否決される例もでた。
政府等の対応とその後の流れ 平成17年3月に国会に提出された証券取引法改正案に、急遽、立会い外取引を規制する改正が盛り込まれ、この改正は6月に国会で成立し、立会い外取引規制の部分は異例の早さで7月に施行された。
3月と4月には、東京証券取引所等は、投資家保護の観点から黄金株等の一定の防衛策や関連する大量の株式分割等の行為は上場会社にふさわしくないとして、その自粛を求めた。
経済産業省の「企業価値研究会」は買収防衛策に関する考え方を整理した報告書を5月27日に公表したが、同日、経済産業省と法務省は共同で「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を公表した。
「指針」は、法的拘束力はないが、実際には影響が大きい。
企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則
買収防衛策の目的は、企業価値(株主利益に資する会社の財産、収益力、安定性、成長力などを指す)ひいいては株主共同の利益(株主全体に共通する利益)の維持・向上とする。
事前開示・株主意思の原則
買収防衛策は、事前にその内容などを開示し、株主等の予見可能性を高める、株主の合理的意思に依拠したものとする(株主総会の承認を得て導入する、取締役会で導入する場合には株主の意思で廃止できる措置を採用する)
必要性・相当性の原則
買収防衛策は過剰なものとしない(株主の財産権保護、経営者の濫用防止をはかる措置が必要)
裁判所は、ある上場企業が採用した「平時」導入型の新株予約権を用いたスキーム(具体的な敵対的買収者が現れるよりも前の段階である「平時」において導入しておく対策をいう)について、裁判所はその新株予約権発行の差止めを認めた。(東京地裁決H17.6.1、H17.6.9)
5月・6月には、事前警告型と呼ばれる防衛策を採択したり、信託を用いた新株予約権スキームの防衛策を株主総会の特別決議を経て導入する上場企業も登場。
7月に入って、政府は、株式公開買付け制度の見直しを検討することを明らかにし、その見直し、平成18年に証券取引法の改正として実現し、平成18年12月13日に施行された。
「事前警告型」防衛策 意味 突然の大規模買付けに備え、あらかじめルール(①買付者・買付内容等に関する情報開示、②検討期間等の確保)を提示しておき、ルールに違反した場合もしくは提案そのものが企業価値を毀損するおそれがある場合に、事前に開示している対抗措置(新株予約権の無償割当等)を発動する防衛策。
スキーム ①買付者出現。
②買付者による意向表明書(大規模買付けの実行に先立ち、買収者が当該会社取締役会に提出する、当該買収防衛策に定める手続を遵守する旨の誓約文言等を記した書面)の提出。
③提出会社による必要情報リスト(いわゆる質問状)の提出。
④買収者による必要情報の提出。
⑤取締役会による買収提案の評価・意見形成・代替案立案。
⑥取締役会による発動・不発動の決議。
取締役会が善管注意義務に則り最終判断することが求められるが、この際に取締役の意思決定プロセスの中立性を担保する仕組みとして「独立委員会」または「株主意思確認総会」(もしくはその両方)が設置されるパターンが大勢を占める。
導入方法 ①取締役会決議型:取締役会のみで導入。
②普通決議型:株主総会の普通決議で導入。
③定款変更型:株主総会の特別決議で導入。
会社法上、買収防衛策の導入自体は特別決議事項ではない
⇒ここでいう特別決議とは、買収防衛策を総会決議事項とする旨や買収防衛策の対抗措置として新株予約権を発行する旨、あるいは買収防衛策の発動を株主総会に付議する旨等を定款変更として付議するという方法。
つまり①定款変更に係る特別決議+②買収防衛策導入の普通決議のセットで決議をとる方法。
③の定款変更型を採用する企業が増加。

買収防衛策導入は株主総会の法定決議事項ではなく、普通決議で付議したとしても宣言的決議・勧告的決議にすぎない⇒定款変更によって総会付議事項としたほうがより法的な安定性が増すとの判断。
対抗措置発動の判断手続 一般的な事前警告型では、買収ルール違反または企業価値を毀損するおそれのある買収提案の場合、買収者に対し対抗措置(買収者が行使できない旨の条件を付けた新株予約権の無償割当て等)を発動することができるとするのが一般的。
①取締役会のみで判断するタイプ
②独立委員会による勧告を行うタイプ
③株主意思を確認するタイプ
④独立委員会の勧告と株主意思確認を併用するタイプ
②が一番多い。
独立委員会の構成 企業年金連合会の「企業買収防衛策に対する株主議決権行使基準」では、「原則として肯定的に判断できない」ケースの1つとして「独立委員会に当該会社と利害を有する者が含まれている場合」をあげている。
「利害を有する者」について、「会社との実質的な独立性」が要請されるとし、「主要取引先、顧問アドバイザー、メインバンク等の債権者、親族、元従業員」などは「実態を慎重に精査し、株主の納得と理解が得られるものでなければならない」。
買収者への対価交付 対抗措置発動⇒買収者の保有株式は希釈化され、結果的に経済的なダメージを与えることになる。
その際に買収者に対し経済的対価を交付するか?
最近の導入事例では、ほとんどが経済的対価支払の可能性を明記していないスキーム。
「企業価値研究会報告書(平成20年6月公表)」
「そもそも、被買収者の取締役が、株主共同の利益を毀損する買収であるから金員等の交付を行わなくても買収防衛策を発動できると責任をもって説明できる場合でなければ、買収防衛策は発動されるべきではない」
「金員等の交付は却って発動を誘発する」
「金員等を交付することで、株主共同の利益に貢献したはずの資金が買収者に移転することになる」

経済的な対価を支払うケースを真っ向から否定。
会社法と防衛策 ライツ・プラン 買収者の議決権比率を低下させる方法
㋐種類株式を使う方法として、一定割合以上の株式を買い占めた買収者の株式を強制的に取得して議決権制限株式に転換したり、取得対価として金銭を交付したりすることができる種類株式を発行することができたが、会社法では、既に発行している普通株式をそのような防衛策対策の施された種類株式に転換することが可能になった。
㋑新株予約権を使う方法として、会社法では、買収者が一定割合以上の株式を買い占めた場合には、買収者の新株予約権は消却され、かつ、買収者以外の株主には自動的に株式が発行されるような新株予約権を発行できるようになった。
拒否権付き株式等(黄金株) 平成17年改正前商法のもとでも、有効的な企業に対して拒否権付株式等を発行することができたが、そのような株式は他の者に譲渡されないよう譲渡制限をかけることが求められるところ、改正前商法では一部の種類の株式についてのみ譲渡制限をかけることができなかった。
会社法では、会社が一部の種類の株式についてのみ譲渡制限をすることができるようになった。
事業報告での開示 規定 会社法施行規則第118条3号(株式会社の支配に関する基本方針)
事業報告は、次に掲げる事項をその内容としなければならない。

三 株式会社が当該株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下この号において「基本方針」という。)を定めているときは、次に掲げる事項
イ 基本方針の内容の概要
ロ 次に掲げる取組みの具体的な内容の概要
(1) 当該株式会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
(2) 基本方針に照らして不適切な者によって当該株式会社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
ハ ロの取組みの次に掲げる要件への該当性に関する当該株式会社の取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の判断及びその理由(当該理由が社外役員の存否に関する事項のみである場合における当該事項を除く。)
(1) 当該取組みが基本方針に沿うものであること。
(2) 当該取組みが当該株式会社の株主の共同の利益を損なうものではないこと。
(3) 当該取組みが当該株式会社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないこと。
敵対的買収についての視点 評価 企業価値を高めるような買収は良い買収で、企業価値を損なうような買収は悪い買収。(企業価値研究会の報告書)

企業価値を損なうような買収は実現されるべきでぇなあく、その実現を止めるような防衛策は合理性があり、他方、企業価値を高めるような買収は実現されるべきで、その実現を止めるような防衛策は合理的でない。
企業価値は、株主価値とステーク・ホルダーに帰属する価値の合計であり、株主価値と企業価値は同じではない。
ステークホルダーから株主に所得移転だけを行う買収提案は、株主にとってメリットがあるように見えるが、企業価値には中立的であり、長期的にはマイナスになる可能性がある
誰が判断するか 「平時」導入の際には、株主総会決議によるべきであるとする意見もあれば、取締役会での導入も一定の条件で認められてしかるべきであるという意見もある。
「平時」に導入したとしても、「有事」になった際(具体的な敵対的買収者が出現した時点で)、企業価値を損なうような買収であれば防衛策を発動し、企業価値を高めるような買収であれば防衛策を発動すべきではない⇒発動・不発動を「有事」になった時点で誰かが判断しなくてはならない。
「有事」に株主総会を開いている暇は通常ないので、取締役会で決めるか、誰か社外の中立的な第三者等に決めてもらうか誰も判断しないこととして株式市場における投資家の株式売買という帰趨に委ねるかなど、意見は分かれている。
導入 平成20年秋の時点で、上場会社のうち570社程度が事前警告型と総称される買収防衛策を導入しており、約10社が信託を用いたい新株予約権による防衛策を導入。
種類株式を用いた防衛策は、平成16年秋に石油会社の例があるが、それ以外には、証券取引所が消極的であることもあって導入されていない。

東京高裁決H17.3.23
商法上,取締役の選任・解任は株主総会の専決事項であり(254条1項,257条1項),取締役は株主の資本多数決によって選任される執行機関といわざるを得ないから,被選任者たる取締役に,選任者たる株主構成の変更を主要な目的とする新株等の発行をすることを一般的に許容することは,商法が機関権限の分配を定めた法意に明らかに反するものである・・・。
一般論としても,取締役自身の地位の変動がかかわる支配権争奪の局面において,果たして取締役がどこまで公平な判断をすることができるのか疑問であるし,会社の利益に沿うか否かの判断自体は,短期的判断のみならず,経済,社会,文化,技術の変化や発展を踏まえた中長期的展望の下に判断しなければならない場合も多く,結局,株主や株式市場の事業経営上の判断や評価にゆだねるべき筋合いのものである。
そして,仮に好ましくない者が株主となることを阻止する必要があるというのであれば,定款に株式譲渡制限を設けることによってこれを達成することができるのであり,このような制限を設けずに公開会社として株式市場から資本を調達しておきながら,多額の資本を投下して大量の株式を取得した株主が現れるやいなや,取締役会が事後的に,支配権の維持・確保は会社の利益のためであって正当な目的があるなどとして新株予約権を発行し,当該買収者の持株比率を一方的に低下させることは,投資家の予測可能性といった観点からも許されないというべきである。
したがって,現に経営支配権争いが生じている場面において,経営支配権の維持・確保を目的とした新株予約権の発行がされた場合には,原則として,不公正な発行として差止請求が認められるべきであるが,株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情があること,具体的には,敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく,敵対的買収者による支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情があることを会社が疎明,立証した場合には,会社の経営支配権の帰属に影響を及ぼすような新株予約権の発行を差し止めることはできない
例えば,株式の敵対的買収者が,
①真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず,ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(いわゆるグリーンメイラーである場合),
②会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権,ノウハウ,企業秘密情報,主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど,いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合,
③会社経営を支配した後に,当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合,
④会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産,有価証券など高額資産等を売却等処分させ,その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合など,
当該会社を食い物にしようとしている場合には,
濫用目的をもって株式を取得した当該敵対的買収者は株主として保護するに値しないし,当該敵対的買収者を放置すれば他の株主の利益が損なわれることが明らかであるから,取締役会は,対抗手段として必要性や相当性が認められる限り,経営支配権の維持・確保を主要な目的とする新株予約権の発行を行うことが正当なものとして許されると解すべきである。


ブルドックソース判決 (最高裁H19.8.7)
ブルドックソースの新株予約権の無償割当ての内容   ア 新株予約権無償割当ての方法により,基準日である7月10日の最終の株主名簿及び実質株主名簿に記載又は記録された株主に対し,その有する相手方株式1株につき3個の割合で本件新株予約権を割り当てる。
 イ 本件新株予約権無償割当てが効力を生ずる日は,7月11日とする。
 ウ 本件新株予約権1個の行使により相手方が交付する普通株式の数(割当株式数)は,1株とする。
 エ 本件新株予約権の行使により相手方が普通株式を交付する場合における払込金額は,株式1株当たり1円とする。
 オ 本件新株予約権の行使可能期間は,9月1日から同月30日までとする。
 カ 抗告人及びSPVⅡを含む抗告人の関係者(以下,併せて「抗告人関係者」という。)は,非適格者として本件新株予約権を行使することができない(以下「本件行使条件」という。)。
 キ 相手方(ブルドックソース)は,その取締役会が定める日(行使可能期間の初日より前の日)をもって,抗告人関係者の有するものを除く本件新株予約権を取得し,その対価として,本件新株予約権1個につき当該取得日時点における割当株式数の普通株式を交付することができる。
相手方は,その取締役会が定める日(行使可能期間の初日より前の日)をもって,抗告人関係者の有する本件新株予約権を取得し,その対価として,本件新株予約権1個につき396円を交付することができる(以下,これらの条項を「本件取得条項」という。)。なお,上記金額は,本件公開買付けにおける当初の買付価格の4分の1に相当するものである。
 ク 譲渡による本件新株予約権の取得については,相手方取締役会の承認を要する。
 (7)相手方取締役会は,6月24日,本件議案の可決を受けて,本件新株予約権無償割当ての要項を決議するとともに,税務当局に対する確認の結果,株主に対する課税上の問題から,非適格者である抗告人関係者から本件取得条項に基づき本件新株予約権の取得を行うことができないと判断される場合であっても,抗告人関係者の有する本件新株予約権の全部を,相手方として抗告人関係者に何らの負担・義務を課すことなく1個につき396円の支払と引換えに譲り受ける旨決議した。
(最高裁H19.8.7 ブルドックソース)
論点 結論 内容
株主平等原則(法109条1項)と新株予約権 における差別的取扱い 直ちに、株主平等原則(法109条1項)違反ではない。
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その趣旨は、新株予約権無償割当ての場合に及ぶ。
新株予約権無償割当てが新株予約権者の差別的な取扱いを内容とするものであっても,これは株式の内容等に直接関係するものではないから,直ちに株主平等の原則に反するということはできない。
しかし,株主は,株主としての資格に基づいて新株予約権の割当てを受けるところ,法278条2項は,株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法についての定めは,株主の有する株式の数に応じて新株予約権を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定するなど,株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提としているものと解されるのであって,法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,新株予約権無償割当ての場合についても及ぶというべきである。
(最高裁H19.8.7 ブルドックソース)
会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合における,その防止のための差別的取扱いの可否。 当該取扱いが衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。 個々の株主の利益は,一般的には,会社の存立,発展なしには考えられないものであるから,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の存立,発展が阻害されるおそれが生ずるなど,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には,その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても,当該取扱いが衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない
(最高裁H19.8.7 ブルドックソース)
特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かの判断 判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り株主総会の判断を尊重。  特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,最終的には,会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものであるところ,株主総会の手続が適正を欠くものであったとか,判断の前提とされた事実が実際には存在しなかったり,虚偽であったなど,判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り当該判断が尊重されるべきである。
(最高裁H19.8.7 ブルドックソース)
衡平の理念に反し,相当性を欠くものであるかどうかの判断 ①株主総会での手続き、②対価の取得を考慮し、相当性を欠くものではないとの判断。  抗告人関係者は,本件新株予約権に本件行使条件及び本件取得条項が付されていることにより,当該予約権を行使することも,取得の対価として株式の交付を受けることもできず,その持株比率が大幅に低下することにはなる。
しかし,本件新株予約権無償割当ては,抗告人関係者も意見を述べる機会のあった本件総会における議論を経て,抗告人関係者以外のほとんどの既存株主が,抗告人による経営支配権の取得に伴う相手方の企業価値のき損を防ぐために必要な措置として是認したものである。さらに,抗告人関係者は,本件取得条項に基づき抗告人関係者の有する本件新株予約権の取得が実行されることにより,その対価として金員の交付を受けることができ,また,これが実行されない場合においても,相手方取締役会の本件支払決議によれば,抗告人関係者は,その有する本件新株予約権の譲渡を相手方に申し入れることにより,対価として金員の支払を受けられることになるところ,上記対価は,抗告人関係者が自ら決定した本件公開買付けの買付価格に基づき算定されたもので,本件新株予約権の価値に見合うものということができる。これらの事実にかんがみると,抗告人関係者が受ける上記の影響を考慮しても,本件新株予約権無償割当てが,衡平の理念に反し,相当性を欠くものとは認められない。
(最高裁H19.8.7 ブルドックソース)
対応策を予め定めていなかったことと、「著しく不公正な方法」 著しく不公正な方法によるものとはいえない。 事前の定めがされていないからといって,そのことだけで,経営支配権の取得を目的とする買収が開始された時点において対応策を講ずることが許容されないものではない。本件新株予約権無償割当ては,突然本件公開買付けが実行され,抗告人による相手方の経営支配権の取得の可能性が現に生じたため,株主総会において相手方の企業価値のき損を防ぎ,相手方の利益ひいては株主の共同の利益の侵害を防ぐためには多額の支出をしてもこれを採用する必要があると判断されて行われたものであり,緊急の事態に対処するための措置であること,前記のとおり,抗告人関係者に割り当てられた本件新株予約権に対してはその価値に見合う対価が支払われることも考慮すれば,対応策が事前に定められ,それが示されていなかったからといって,本件新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない。
(最高裁H19.8.7 ブルドックソース)
専ら経営を担当している取締役等またはこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するための新株予約権無償割当て。 原則として著しく不公正な方法によるものとなる。 株主に割り当てられる新株予約権の内容に差別のある新株予約権無償割当てが,会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく,専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するためのものである場合には,その新株予約権無償割当ては原則として著しく不公正な方法によるものと解すべきであるが
(最高裁H19.8.7 ブルドックソース)