シンプラル法律事務所
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論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
債務不履行責任と不法行為の関係 | ||||||
■ | 最高裁昭和38.11.5 | 運送取扱人の責任(不法行為との関係) | ||||
事案 | B会社がYに搬入う、Bを預け主とする運送貨物受取証がYから発行交付。 Bは右物件の一部を事故を荷受人として発送以来、YはBに引き渡した。 |
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AからYに対し、「以後Aに通知しないで発送しないように」との申し入れ。 ⇒Bから残貨につき発送方の請求があったが、YはAの意向を伝え拒絶。 その後、Bの承諾なく、Aに引渡し。 |
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判断 | 運送取扱人ないし運送人の責任に関し、運送取扱契約ないし運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法杭に基づく賠償請求権の強豪を認める | |||||
右請求権の競合が認められるには、運送取扱人ないし運送人の側に過失あるをもってたり、必ずしも故意又は重過失の存することを要するものではない。 | ||||||
Y会社呉支店の係員は、本件貨物を預け入れたB会社の承諾がないのに拘わらず、何ら先にB会社に宛てて発行交付した判示受取証を回収するとかb会社の承諾を確認するに足る取引上相当の措置を講ずるとかすることなく、漫然電話による同意ありと誤解して、Aに対し本件貨物を引渡し、よってこれを喪失しなのと同一の結果を生ぜしめた。 | ||||||
原判決が、この点においてY会社呉支店係員に過失の責があるとし、これによって生じたかかる事態は運送品の取引上通常予想される事態ではなく、かつ契約本来の目的範囲を著しく逸脱するものであるから、債務不履行に止まらず、右係員の過失に基づく不法行為上の損害賠償請求権の発生をも認めうるとした判断は首肯することができる。 | ||||||
解説 | ● | A:請求権競合説(判例) 〜料請求権は全く要件効果について違うものであるから、運送取扱人ないし運送人に関する特則は、あくまで契約責任についてしか、適用がなく、不法行為責任には影響を及ぼさない。 vs.運送取扱人ないし運送人の責任の減免に関する特則が空洞化される。 |
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B:非競合説(商法学者の有力説) 〜契約法と不法行為法とは特別法と一般法との関係にあたるから、契約責任が不法行為責任を排除して成立。 vs.運送人の故意または重過失に基づく場合まで、不法行為責任を認めないとするのがはたして妥当かとの批判。 |
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C:折衷説 〜競合説を修正し、契約の存在は行為の違法性を阻却するのが普通だから、契約に予想された程度をを逸脱する行為があった場合(故意または重過失による場合)にはじめて不法行為責任を生ずる。 vs.契約の存在をもって、不法行為の違法性を阻却するとは解せられない。 |
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D:現在の修正競合説: 運送人の運送契約について債務不履行責任を定めている規定のうちで、その規定の趣旨が運送人の責任を限定もしくは軽減することを運送企業の維持や契約両当事者の利益均衡上適当としているもの(商法578条、580条)については、不法行為責任の内容につてもこれにより影響を受け、同様の限定を受けるべき。 運送人の短期消滅時効(商法589条、566条)については一般人の保護のため、一般不法行為の3年の時効に服せしめるのが妥当。 vs.結論から見れば合理的であり、バランスのとれたものと考えられるが、2つの請求権を出発点として、要件効果が違うことを前提としながら、結果において、両者を近接させるもので、理論的に矛盾。 |
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● | 国際海上物品運送法は、立法的に解決し、修正競合説と同様の立場を明定。 | |||||
国際海上物品運送法 第20条の2(運送人等の不法行為責任) 第三条第二項、第十一条第四項及び第十二条の二から第十四条まで並びに前条第二項において準用する商法第五百七十八条の規定は、運送品に関する運送人の荷送人、荷受人又は船荷証券所持人に対する不法行為による損害賠償の責任に準用する。この場合において、第三条第二項中「前項」とあるのは、「民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百十五条第一項本文及び商法第六百九十条(同法第七百四条第一項の規定により船舶賃借人が船舶所有者と同一の権利義務を有することとされる場合を含む。)」と読み替えるものとする。 2 前項の規定により運送品に関する運送人の責任が免除され、又は軽減される場合には、その責任が免除され、又は軽減される限度において、当該運送品に関する運送人の使用する者の荷送人、荷受人又は船荷証券所持人に対する不法行為による損害賠償の責任も、免除され、又は軽減される。 3 第四条第二項及び第三項の規定は、運送品に関する運送人の使用する船長の荷送人、荷受人又は船荷証券所持人に対する不法行為による損害賠償の責任について商法第七百五条の規定の適用がある場合に準用する。この場合において、第四条第二項中「運送人」とあるのは「船長」と、「前項」とあるのは「商法第七百五条」と、「前条」とあるのは「同条」と読み替えるものとする。 4 第十三条第四項の規定は、運送品に関する運送人の責任が同条第一項から第三項までの規定(第一項において準用する場合を含む。)により軽減される場合において、運送人が損害を賠償したときの、運送品に関する運送人の使用する者の責任に準用する。 5 前三項の規定は、運送品に関する損害が、運送人の使用する者の故意により、又は損害の発生のおそれがあることを認識しながらしたその者の無謀な行為により生じたものであるときには、適用しない。 |
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最高裁昭和44.10.17 | 国際海上物品運送契約における運送人の債務不履行責任と不法行為責任の関係 | |||||
規定 | 国際海上運送法 第14条(責任の消滅) 運送品に関する運送人の責任は、運送品が引き渡された日(全部滅失の場合には、引き渡されるべき日)から一年以内に裁判上の請求がされないときは、消滅する。 2 前項の期間は、運送品に関する損害が発生した後に限り、合意により、延長することができる。 3 運送人が更に第三者に対して運送を委託した場合における運送品に関する第三者の責任は、運送人が、第一項の期間内に、損害を賠償し、又は裁判上の請求をされた場合においては、同項の期間(前項の規定により第一項の期間が運送人と当該第三者との合意により延長された場合にあつては、その延長後の期間)が満了した後にあつても、運送人が損害を賠償し、又は裁判上の請求をされた日から三月を経過する日までは、消滅しない。 |
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原審 | 債務不履行責任と不法行為責任の競合を認めたうえ、本件において、日通は運送契約の当事者ではないから、契約上の責任を軽減する前掲の規定は、同人の責任に直接関係がないとして、被上告人の請求を認容。 | |||||
判断 | 最高裁昭和38.11.5は、「両請求権が当然競合することを肯定しているのであって、当裁判所もこれを認容するものである。」と判示し、右料請求権が当然競合することを肯定しているのであって、所論の如く、不法行為責任の成立するのを、運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する場合にだけ限定したものではない。 | |||||
のみならず、荷役業者である上告人は、運送契約の当事者ではないから、運送委託者に対して直接契約上の義務を負うものではなく、運送人の運送契約上の債務不履行に基づく損害賠償義務のいかんは、直ちに荷役業者の右不法行為に基づく損害賠償義務の成否に影響を及ぼすものとはいえない。 したがって、本件につき、これと同旨の見解のもとに料請求権が競合して成立するとしたうえ、被上告人の本訴請求を認容した原審の判断は、相当であって、論旨は理由がない。 |
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国際海上物品運送法14条の規定は、商法における運送人の責任に関する規程と同様に、運送人の運送契約に基づく債務不履行責任に関するものであって、運送人または荷役業者に対する不法行為に因る損害賠償の請求については、その適用がない旨の原審の判断は、正当である。 |
総説 | 運送営業 | 人または物品を場所的に移動させることを業として行うこと。 そのような営業を行う者が運送人。 |
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運送人 | 「陸上又は湖川、港湾に於いて物品又は旅客の運送を業とする者」(商法569条) | ||||
陸上運送、海上運送、航空運送、複合運送を含む。 | |||||
運送人には商人性が認められる(商法502条4号)。 | |||||
規定 | 陸上運送(湖川・港湾における運送を含む。)⇒569条以下 物品運送(商法570条〜589条) 旅客運送(商法590条〜592条) |
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海上運送⇒737条以下及び国際海上物品運送法 | |||||
航空運送、複合運送〜私法規制はない。 (国際航空運送についてはワルソー条約などの国際条約が適用される。) |
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物品運送 | 運送契約 | 物品運送契約は、荷送人と運送人との間で締結される請負契約の一種。 | |||
運送人が荷送人の依頼を受けて、物品を場所的に移動させることを約し、これに対して荷送人が報酬を支払う諾成、不様式の契約。 | |||||
荷受人は運送契約の当事者ではない。 but運送契約を通じた経済的利益を有するし、法的にも運送品に関する一定の権利義務が規定(商法583条)。 |
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運送人の権利 | 運送賃請求権 | 規定 | 商法 第512条(報酬請求権) 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。 |
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民法 第633条(報酬の支払時期) 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。 |
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商法 第576条〔運送賃請求権〕 運送品ノ全部又ハ一部カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルトキハ運送人ハ其運送賃ヲ請求スルコトヲ得ス若シ運送人カ既ニ其運送賃ノ全部又ハ一部ヲ受取リタルトキハ之ヲ返還スルコトヲ要ス A運送品ノ全部又ハ一部カ其性質若クハ瑕疵又ハ荷送人ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ運送人ハ運送賃ノ全額ヲ請求スルコトヲ得 |
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説明 | 運送品の全部または一部が不可抗力により滅失⇒運送人は運送賃を請求することができない。(商法576条1項) 「不可抗力」とは「当事者の責めに帰すべきでない事由」 |
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運送品の全部滅失⇒運送賃の全額を請求できない。 一部滅失⇒滅失の部分に対する運送賃を請求できない。 |
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不可抗力による運送品の毀損・延着には本条第1項の適用はない。 | |||||
運送品の全部または一部が運送品の性質もしくは瑕疵または荷送人の過失により滅失⇒運送人は運送賃の全額を請求できる(商法576条2項)。 | |||||
時効 | 規定 | 第589条〔準用〕 第五百六十二条〔留置権〕、第五百六十三条〔中間運送取扱人の代位〕、第五百六十六条〔責任の短期時効〕及ヒ第五百六十七条〔債権の短期時効〕ノ規定ハ運送人ニ之ヲ準用ス |
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第567条〔債権の短期時効〕 運送取扱人ノ委託者又ハ荷受人ニ対スル債権ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス |
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説明 | 運送人が委託者または荷受人に対して有する債権については1年の短期消滅時効が適用される。 | ||||
運送人の義務 | 損害賠償義務 | 一般規定 | 規定 | 商法 第577条〔損害賠償責任〕 運送人ハ自己若クハ運送取扱人又ハ其使用人其他運送ノ為メ使用シタル者カ運送品ノ受取、引渡、保管及ヒ運送ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ運送品ノ滅失、毀損又ハ延著ニ付キ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス |
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説明 | 運送人は自己もしくは運送取扱人またはその使用人その他運送のために使用した者が、運送品の受取、引渡、保管および運送に関し注意を怠らなかったことを証明しなければ、運送品のん滅失・毀損・延着について損害賠償責任を負う(商法577条)。 | ||||
滅失:物理的滅失を意味するが、誤って荷受人以外の第三者に引渡され、没収され、あるいは盗難にあった場合なども含み、運送品が返還不能jになったすべての場合をいう。 毀損:物質的に損傷を生じ、価値の減少を生じたこと。 |
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過失責任。 過失がないことに関する立証責任は運送人が負う。 履行補助者の行為により滅失等が生じた場合、運送人はその選任・監督に過失がなかったことだけでなく、履行補助者が滅失等について無過失であったことも立証する必要。 |
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損害賠償額 | 規定 | 第580条〔損害賠償の額〕 運送品ノ全部滅失ノ場合ニ於ケル損害賠償ノ額ハ其引渡アルヘカリシ日ニ於ケル到達地ノ価格ニ依リテ之ヲ定ム A運送品ノ一部滅失又ハ毀損ノ場合ニ於ケル損害賠償ノ額ハ其引渡アリタル日ニ於ケル到達地ノ価格ニ依リテ之ヲ定ム但延著ノ場合ニ於テハ前項ノ規定ヲ準用ス B運送品ノ滅失又ハ毀損ノ為メ支払フコトヲ要セサル運送賃其他ノ費用ハ前二項ノ賠償額ヨリ之ヲ控除ス |
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第581条〔同前〕 運送品カ運送人ノ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リテ滅失、毀損又ハ延著シタルトキハ運送人ハ一切ノ損害ヲ賠償スル責ニ任ス |
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説明 | 運送品が全部滅失⇒引渡をすべきであった日における到達地の価格により定めた額が損害額(法580条1項)。 一部滅失・毀損⇒運送品を引き渡した日における到達地の価格が基準。 一部滅失・毀損の上に延着⇒引渡をすべきであった日における価格を基準として損害額が算定(商法580条2項)。 |
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法580条は、損害の範囲から得べかりし利益(消極的損害)を排除し、損害額の定型化を図っている。 | |||||
民法416条の特則であり、大量の運送品を取り扱う運送人の地位に照らし、運送人保護の見地から損害額を限定するとともに、損害額の範囲を定型化することにより、法律関係の画一的処理を図る規定となっている(最高裁昭和53.4.20)。 | |||||
商法580条により算定される損害額より実損額が少なくても、運送人は本条所定の額を賠償する責任を負う。 荷送人などにまったく損害が生じなかった場合には損害賠償義務は生じない。 |
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運送品の滅失・毀損により、荷送人らが支払う必要がなくなった運送賃その他の費用については、損害額から控除される(商法580条3項)。 | |||||
運送人の悪意・重過失により運送人が滅失・毀損⇒民法の一般原則に戻って運送人は一切の損害を賠償(商法581条)。 使用人などの履行補助者に悪意・重過失がある場合も同様(最高裁昭和55.3.25)。 商法581条が適用される場合において、実損額が商法580条所定の額を下回った場合であっても、580条所定の額より責任が軽減されることはない(最高裁昭和53年判決)。 |
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高価品に関する特則 | 規定 | 第578条〔高価品に関する特則〕 貨幣、有価証券其他ノ高価品ニ付テハ荷送人カ運送ヲ委託スルニ当タリ其種類及ヒ価額ヲ明告シタルニ非サレハ運送人ハ損害賠償ノ責ニ任セス |
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説明 | 運送品が貨幣、有価証券その他の高価品 ⇒荷送人が運送を委託する際にその種類および価額を運送人に明告しなければ、運送人は損害賠償責任を負わない(商法578条)。 ← @このような高価品は盗難等による滅失が生じる危険性が高い上に、滅失・毀損による損害が巨額になるおそれがある。 A高価品として明告されていれば、運送人も相応の注意を払うことができ、付保や割増運賃の請求など適切な対応をとることができた。 Bそこで、運送人保護の見地から、運送契約成立時までに高価品としての明告を欠いた場合には、運送人は一切の損害賠償責任を負わない。 |
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「高価品」とは、容積または重量の割に著しく高価な物品を指し、高価であることが一見して明瞭な物は該当しない。 外国製研磨機は該当しない(最高裁昭和45.4.21)。 貨幣・有価証券のほか、貴金属・宝石や重要情報の入ったフロッピーディスク(神戸地裁H2.7.24)が一例。 |
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明告を欠く⇒運送人は普通品としての損害賠償責任も負わない。 | |||||
明告はされなかったが、運送人が運送品の内容等について知っていた場合。 〜普通品の運送に必要な注意義務も欠いていたのであれば、高価品としての損害賠償責任を免れない(多数説)。 |
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特別消滅事由・短期消滅時効 | 規定 | 第588条〔責任消滅の要件〕 運送人ノ責任ハ荷受人カ留保ヲ為サスシテ運送品ヲ受取リ且運送賃其他ノ費用ヲ支払ヒタルトキハ消滅ス 但運送品ニ直チニ発見スルコト能ハサル毀損又ハ一部滅失アリタル場合ニ於テ荷受人カ引渡ノ日ヨリ二週間内ニ運送人ニ対シテ其通知ヲ発シタルトキハ此限ニ在ラス A前項ノ規定ハ運送人ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス |
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第589条〔準用〕 第五百六十二条〔留置権〕、第五百六十三条〔中間運送取扱人の代位〕、第五百六十六条〔責任の短期時効〕及ヒ第五百六十七条〔債権の短期時効〕ノ規定ハ運送人ニ之ヲ準用ス |
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第566条〔責任の短期時効〕 運送取扱人ノ責任ハ荷受人カ運送品ヲ受取リタル日ヨリ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス A前項ノ期間ハ運送品ノ全部滅失ノ場合ニ於テハ其引渡アルヘカリシ日ヨリ之ヲ起算ス B前二項ノ規定ハ運送取扱人ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス |
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特別消滅事由 | 運送人の責任は、荷受人が留保せずに運送品を受け取り、かつ、運送賃その他の費用を支払ったときに消滅する(商法588条1項本文)。 「留保」とは、一部滅失・毀損の事実およびその概要を運送人に知らせること。 ← 運送人の運送品に関する証拠保全の機会が失われていることに配慮し、運送契約に基づく法律関係を早期に解消する趣旨の規定。 but 運送品の全部滅失の場合には適用されない。 |
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運送品に直ちに発見することができない一部滅失・毀損があった場合において、荷受人が引渡の日より2週間内に運送人に通知⇒運送人の責任は消滅しない(商法588条1項但書)。 運送人に悪意あり⇒責任は消滅しない(法588条2項)。 |
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時効 | 運送人の責任については、運送品の引渡をなすべきであった日(全部滅失の場合)、もしくは荷受人が運送品を受け取った日(一部滅失・毀損の場合)から1年を経過すると時効消滅(商法589条、566条1項2項)。 ←運送人の地位に鑑み、早期に運送人の責任を消滅させる趣旨。 but 運送人が悪意の場合は本条は適用されない。 「悪意」: A:運送品に一部消滅または毀損のあることを知って引渡した場合をいう(最高裁昭和41.12.20)。 B:故意に運送品を一部滅失・毀損させ、または一部滅失・毀損を隠蔽することを意味する(多数説)。(←運送人の免責を認めることが適当でないほどの不当性が認められる場合に悪意の範囲を限定。) |
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不法行為責任 | 商法577条以下の規定は、運送人の債務不履行責任に関する規定。 | ||||
判例は請求権競合説 ⇒運送人に債務不履行責任を追及できない場合であって、不法行為責任を追及できる。 ⇒578条(高価品の特則)などの適用が回避され、その趣旨が貫徹されない。 but この場合でも、過失相殺の法理によって損害賠償額を抑制することは可能であり、これにより実質的に578条・580条の趣旨を反映することはできる。 |
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約款に責任制限条項がある場合に、同条項を不法行為責任についても適用することが、当事者の合理的意思に合致するという判例(最高裁H10.4.30)。 | |||||
相次運送 | 意義 | 相次運送:数人の運送人が同一の運送品の運送に関与し、相次いで異なる区間における運送を行うこと。 | |||
@下請運送: 一人の運送人が全区間の運送を引き受けるが、その区間の全部または一部について他の運送人(下請運送人)に委託する形態。 下請運送人は荷送人とcj北摂の契約関係には立たない⇒契約上の責任は負わない。 |
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A部分運送: 複数の運送人が独立して特定区間の運送を引き受ける形態 |
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B同一運送: 数人の運送人で全区区間の運送を引き受け、内部的に各運送人の相当区間を定める。 各運送人が運送契約の当事者となるため、担当区間にかかわらず全区間について連帯して責任を負う。 |
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C連帯運送(共同運送) 1人の運送人が荷送人との間で全区間の運送を引き受け、他の運送人が荷送人のためにする意思をもって相次いで運送を引き受ける形態。 |
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運送取扱人 | 意義 | 規定 | 第559条〔意義〕 運送取扱人トハ自己ノ名ヲ以テ物品運送ノ取次ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ A運送取扱人ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外問屋ニ関スル規定ヲ準用ス |
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説明 | 運送取扱:物品運送の取次をなすことをいい、これを業として行う者が運送取扱人(商法599条1項)。 | ||||
取次ぎ:自己の名をもって、他人の計算において法律行為をなすことを引き受ける行為。 | |||||
権利・義務 | 時効 | 運送取扱人が運送取扱契約上負担する債務は、「商行為による生じた債務」であるから、5年の消滅時効にかかる(商法522条)。 運送品の滅失・毀損・延着における運送取扱人の責任については1年の短期消滅時効が適用される(法566条1項2項)。 ただし、運送取扱人が悪意であった場合については、本条は適用されない。 |