シンプラル法律事務所
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論点整理(ビジョナリーカンパニーA 飛躍の法則)


ビジョナリーカンパニーA 飛躍の法則 ジェームズ・C・コリンズ 
   
    ★第1章 時代を超えた成功の法則 
  ◆あくなき好奇心 
  ■第1段階 探索(p8) 
  ■第2段階 比較対象(p10)
  ■第3段階 ブラック・ボックス内部の調査(p12)●●
  ■第4段階・・・カオスから概念へ 
●第5水準のリーダーシップ 
万事控え目で、物静かで、内気で、恥ずかしがり屋ですらある。
@個人としての謙虚さと、A職業人としての意思の強さという一見矛盾した組み合わせを特徴としてる。
●最初に人を選び、その後に目標を選ぶ 
最初に適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人がそれぞれにふさわしい席に坐ってから、どこに向かうべきかを決めている。
×「人材こそがもっとも重要な資産」
○「適切な人材こそがもっとも重要な資産」
●厳しい現実を直視する(だが、勝利への確信を失わない) 
捕虜になって生き残った人たちの方が学べる点が多い。
「ストックデールの逆説」:
@どんな困難にぶつかろうとも、最後にはかならず勝てるし、勝つのだという確信が確固としてなければならない。
A同時に、それがどんなものであろうとも、きわめて厳しい現実を直視する確固たる姿勢をもっていなければならない。
●針鼠の概念(3つの円のなかの単純さ) 
中核事業で世界一になれないのであれば、中核事業が飛躍の基礎になることは絶対にありえない。
3つの円が重なる部分に関する深い理解に基づいて、中核事業に代わる単純な概念を確立すべき。
●規律の文化 
規律のある人材⇒階層組織は不要
規律のある考えが浸透⇒官僚組織は不要
規律ある行動⇒過剰な管理は不要
@規律の文化とA起業家の精神の組み合わせ。
●促進剤としての技術 
技術を変化を起こす主要な手段とは使っていない。
偉大な企業への飛躍にしろ、没落にしろ、技術そのものが主要な原因になることはない。
●弾み車と悪循環 
革命や、劇的な改革や、痛みを伴う大リストラに取り組む指導者は、ほぼ例外なく偉大な企業への飛躍を達成できない。
巨大で重い弾み車をひとつの方向に回し続けるのに似ている。ひたすら回し続けていると、少しづつの勢いがついていき、やがて考えられないほど回転が速くなる。
●ビジョナリー・カンパニーへの道 
本書:よい組織を偉大な実績を持続できる組織に飛躍させる方法。
「ビジョナリーカンパニー」:偉大な実績をあげている企業を、偉大さが永続する卓越した企業にする方法。
■時代を超えた法則   ■時代を超えた法則 
  この本のテーマはひとつ。
良好から偉大への飛躍をもたらす法則、しかも時代を超えた法則。
良い組織を、偉大な実績を持続できる組織に変える法則。
★野心は会社のために(第5水準のリーダーシップ)      ★野心は会社のために(第5水準のリーダーシップ) 
■    ■予想していなかった点 
  第5水準の指導者は、自尊心の対象を自分自身にではなく、偉大な企業をつくるという大きな目標に向けている。
我や欲がないのではない。
それどころか、信じがたいほど大きな野心をもっているのだか、その野心はなによりも組織に向けられていて、自分自身には向けられていない
■     ■謙虚さ+不屈の精神=第五水準
  (ジレットの)モックラーの価値観では、安易な方法をとって自社を食い物にしようとする人物に経営を明渡し、偉大な企業になる道を閉ざすことは、選択肢のひとつにはなりようがない。
  リンカーンにとって、和平を求めて偉大さを永続できる国を建設する道を永遠に閉ざすことは選択肢にならなかった。
  ■偉大な企業を築く野心・・・会社の成功のために後継者を選ぶ 
ファニーメイのマクスウェル:
野心は何よりも会社の成功に向けられており、自分の名声や資産には向けられていない。
自分が引退した後に会社がさらに成功を収めるよう望んでおり、成功の基盤を作った自分の努力に世間が気づきもしないだろうことを問題にしない。
●  比較対象企業の経営者は、偉大な経営者だとの世評を集めるのに熱心で、自分が引退した後に会社が成功を収められるようにはしていない場合が少なくない。
(自分が去った後に会社が転落していくことほど、自分の偉大さを示すものはあるだろうか)
比較対象企業の4分の3以上の経営者は、後継者が失敗する状況を作り出すか、力が弱い人物を後継者に選ぶかしており、両方にあてはまる経営者もいた。
「最良の犬」症候群。
■     ■おどろくほどの謙虚さ 
  「われわれは素晴らしい人に恵まれたのだ」
「会社にはCEOになればわたし以上の仕事ができる人がたくさんいる」
物静か、控えめ、謙虚、無口、内気、丁寧、穏やか、目立たない、飾らない、マスコミにどう書かれても信じない
  比較対象企業の3分の2以上では経営者の我が強く欲が深く、この点が会社が没落したり低迷が続く一因になっていた。
■    ■不屈の精神・・・なすべきことを実行する 
  謙虚や控え目だけでない。
極端なまでの不屈の精神、禁欲的なまでの決意によって、偉大な企業に飛躍させるために必要な点は何であれ実行する姿勢が必要。
  ウォルグリーンは何年にもわたって経営幹部の間で自社の外食事業について対話を進めた結果、ついに問題と方針を経営陣が明確に理解できるようになったと感じた。
自社の事業で将来性がもっとも明るいのは、利便性が高くドラッグストア・チェーンであって、外食サービスではない。

「より、ここで期限を決めよう。外食事業から5年間で完全に撤退しよう」
「時刻が時を刻んでいることを忘れないように」
半年後
「よく聞いてほしい。残りの時間は4年半だ。6か月前に5年と言った。いまからなら4年半だ」
世界で最高になれる事業、コンビニ型ドラッグストアに資源を集中するために長年の家業から撤退しなくてはならないのであれば、ウォルグリーンはそうする。
静かに、根気強く、愚直に。
  ■窓と鏡 
「わたしは人生の出発点から大きな幸運に恵まれてきた。最高の両親のもとに生まれ、遺伝子に恵まれ、恋愛で幸運に恵まれ、仕事で幸運に恵まれ、イェール大学の同窓生が1941年初めにワシントンに勤務するよう命令書を書き換えてくれたお陰、北大西洋で沈められて全員が死亡した艦艇への乗り込みを危うく逃れ、海軍に勤務する幸運に恵まれ、85歳まで生きられる幸運に恵まれた」
ベスレヘム・スチール:
「当社にとっての問題は第一が輸入、第二が輸入、第三が輸入」
ニューコアのアイバーソン:
輸入品との競争は幸運
「運に恵まれている。鉄鋼製品は重い。競争相手は重い製品を大洋の向こうから運んでこなければならないのだから、われわれたとてつもなく有利だ」
アメリカ鉄鋼業界が直面している問題の核心は経営陣が技術革新のペースについていけなくなっている点にあると主張。
第5水準の指導者は
成功を収めたときは窓の外を見て、成功をもたらした要因を見つけ出す(具体的な人物や出来事が見つからない場合には、幸運を持ち出す)
結果が悪かったときは鏡を見て、自分に責任があると考える(運が悪かったからだとは考えない)。
■  ■第五水準のリーダーシップを習得する
  自分を見つめる機会、意識的な努力、指導者、偉大な教師、愛情豊かな両親、世界観が変わるような体験、第五水準の上司などの条件があると、本来の能力が開花するようになる。
ダーウィン・スミス:癌に侵されて能力が開花
ジョゼフ・カルマン:ぎりぎりの段階の命令変更で降りた艦隊がその後に沈められ、全員が戦死
コールマン・モックラー:福音派に改宗
〜ボストンで企業幹部のグループを組織し、頻繁に朝食会を開いてキリスト教の価値観をビジネスに活かす方法を議論
★だれをバスに乗せるか       ★だれをバスに乗せるか
最初に人を選び、その後に目標を選ぶ 
  ●  「このバスでどこに行くべきかは分からない。しかし、分かっていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められるはず。」 
@「何をすべきか」ではなく「だれを選ぶか」からはじめれば、環境の変化に適応しやすくなる。
A適切な人たちがバスに乗っているのであれば、動機付けの問題や管理の問題はほぼなくなる。厳しく管理する必要も、やる気を引き出す必要もない。最高の実績を生み出そうとし、偉大なものを築き上げる動きにくわわろうとする意欲を各人がもっている。
B不適切な人たちでは、正しい方向が分かり、正しい方針が分かっても、偉大な企業にはなれない。
ウェルズ・ファーゴのディック・クーリー:
銀行業界がいずれ厳しい変化の時期をむかえると予想していたが、どのような形で変化が起こるかはわからない。
⇒人材を限りなく注入していくことに全力をあげる。
傑出した人材が見つかり次第採用し、何を任せるかが発揮ししないまま雇用することも少なくなかった。
「これが将来を築く方法だ。今後の変化を予想する力がわたしになくても、これらの人材にはある。きわめて柔軟なので、変化に対応できる」
経営陣が対等の立場で激烈な議論を繰り広げて最高の答えを探していった。
バンク・オブ・アメリカ:
「弱い将軍と強い部下」とうい方法。
「・・異論が出てこないだけでなく、意見すら引き出せなかった。皆、風がどの方向に吹いているのかをみきわめようとしていた」
1970年代の経営幹部を、どんな形にもなる「プラスチックのようだ」。
ワンマン型のCEOの命令を黙々と実行するよう訓練されていた。
ファニーメイのマクスウェル:
まずは経営陣に適切な人材を集めることに全力を投入した。
「これからきわめて厳しい課題に取り組むことになる。どれほど厳しい仕事になるか、よく考えてほしい。そんな厳しいしごとはかなわないというのであれば、それはそれでいい。だれからも憎まれたりはしない」
「会社をどこに導くべきかは分からない。しかし、適切な人材を集め、的を射た質問をして徹底的に議論していけば、偉大な企業に飛躍する道をかならず見つけ出せる」 
■    ■「一人の天才を一千人で支える」方式はとらない。
天才であれば、一流の経営陣はいらない。
大企業を率いる力をもった人材を何人も集める理由はない。必要なのは善き兵士であり、偉大な考えを実行できる優秀な部隊。しかし、天才が去ってしまえば、兵士はなすすべがなくなることが多い。
天才でない後任者が天才の方式をまねて大胆な行動をとろうとし、失敗を重ねていく。
シングルトンは、大事業家になる子供のころからの夢を実現したが、偉大な企業を築く点では全く失敗している。 
■    ■だれに報酬を支払うかが問題で、どう支払うかは問題ではない
経営者の報酬と飛躍を結び付けるような一貫したパターンは発見できなかった。
経営陣の報酬のある仕組みが偉大な企業への飛躍をもたらす主要な要因になるとの見方を裏付ける事実はなかった。 
統計的に意味のある違いがあったのはただひとつ、飛躍を導いた経営陣が転換点から10年間に、凡庸さから抜け出せていない比較対象企業の経営陣よりも、現金報酬の総額が若干少なかった点だけ。
基本的な点で問題のない制度ができれば、経営陣の報酬は企業を良好から偉大に飛躍させる点で違いをもたらす要因ではなくなる。
問題は経営陣への報酬をどのように決めるかではなく、報酬支払いの対象になる経営陣をどのように選ぶか。
適切な経営陣をバスに乗せれば、経営陣は偉大な会社を築くために全力をつくす。それも、その結果得られる報酬のために努力するのではなく、偉大だといえない状況にはま満足できないから努力する。
一流のものを築かなければ満足できないのであって、報酬制度をどう変えようとも、この価値観は変わらない。
偉大な企業は単純な真実を知っている。
適切な人は奨励給制度がどうであろうと、適切な行動をとって最善の実績を生み出す。
報酬と奨励給は重要だが、偉大な企業では、これが重要な理由が大きく違う。
報酬制度の目的は、不適切な人びとから正しい行動を引き出すことにはなく、適切な人をバスに乗せ、その後もバスに乗りつづけてもらうことにある。 
ニューコアは「人材こそがもっとも重要な資源だ」という格言を否定。
偉大な企業への飛躍に際して、人材は最重要の資産ではない。
適切な人材こそがもっとも重要な資産。 
「適切な人材」の判断にあたって、飛躍を遂げた企業は学歴や技能、専門知識、経験などより、性格を重視。
業界での業務経験がない人や職歴がない人を採用して大成功を収めたことが少なくない。
■    ■厳格であって冷酷ではない 
冷酷:事業環境が悪くなると人員を大幅に削減したり、気まぐれに解雇したり。
厳格:厳しい基準をつねに、組織内のすべての階層に適用し、とくに上層部に厳しく適用。 
厳格であって冷酷でない
⇒優秀な従業員は自分の地位を心配することなく、仕事に全神経を集中できる。
ウェルズ・ファーゴの幹部:
「成績の良い人たちに報いる方法は、成績の良くない人たちに足を引っ張られないようにすることしかない」
飛躍を遂げた企業では、厳格な基準はまず最上部に適用され、責任がとくに重い立場にある者はとくに厳しく適用されている。
飛躍を達成した企業11社のうち6社は、転換点の十年前から1998年までの間に、1度もレイオフを行っていない。残りのうち4社も1回か2回しか実施していない。
■   ■厳格さをどのように確立するか 
●@疑問があれば採用せず、人材を探し続ける 
パッカードの法則:
どの企業も、成長を担う適切な人材を集められるよりも早いペースで売上高を増やし続けながら、偉大な企業になることはできない。
どの要因よりも重要な点がある。それは適切な人々を採用し維持する能力。
サーキット・シティ:
「第1は人、第2は人、第3は人、第4は人、第5も人。転換のかなりの部分は、適切な人を選ぶ点でしっかりした方法をとったことで可能になった」
「妥協はしない。別の方法を見つけて、最適の人材を探そう」
●A人を入れ換える必要があることが分かれば、行動する。 
最高の人材は管理を必要としない。
(だれかをしっかりと管理する必要があると感じるようになったのであえば、採用で間違いをおかした。)
指針を与え、教え、導く必要はある。
butしっかり管理する必要はない。
飛躍した企業では、経営陣の離職時期が両極端に分かれていた。
バスに長期にわたって乗りつづけているか、そうでなければごく早い時期にバスから降りている。
回転率が高いわけではないが、回転のパターンがすぐれている。
×たくさんの人を試して、うまくいった人を残す。
○時間を十分にかけて、はじめからAクラス上位の人を厳格に選ぼう。人選がただしければ、その人物が長くつとめてくれるように、できるかぎりのことをしよう。人選が間違っていれば、間違いを認めて、われわれは自分たちの仕事を続けられるようにし、相手も自分の人生を追求できるようにしよう。
坐っている席が悪いだけなのか、それともバスから降ろすべきなのかを確認できるようになるまでには時間がかかる場合がある。とはいえ、飛躍をもたらした指導者は人を入れ替えなければならないと分かったとき、行動している。
人を入れ換えなければならないと分かるための問い。
@採用すべきかが問題だと想定した場合、その人物をもう一度雇うだろうか。
Aその人物がきて、会社を辞めると話したとするなら、失望するか、胸をなでおろすか。
●B最高の人材は最高の機会の追求にあて、最大の問題の解決にはあてない。 
飛躍した企業は、最高の人材を最高の機会の追求にあてており、最大の問題の解決にはあてていない。
比較対象企業にはその逆の行動をとる傾向がある。
問題を解決しても無難になるだけで、偉大になるには機会を追求するしかない事実を認識できていない。
問題の部門を売却する決定をくだしたとき、優秀な人たちを一緒に売り渡してはいけない。
優秀な人たちはいつもバスに座席が確保されているようにすれば、優秀な人たちが行く先の変更を支持する可能性が高くなる。
第5水準の経営陣の一員:
個人としてみても強い指導力をもっており、意欲と能力が十分にあるので、自分が担当する部門を世界最高級の事業に育て上げる。
経営陣の一員として、会社を偉大な企業にするために必要なことをすべて行う方向に、それぞれの強みを活かしていく能力がある。
どれだけ議論しても、最善の答えをいつも探している。最後には全員が決定を支持する。議論はすべて会社全体の利益のためのものであって、各人が自分の利益を守るためのものではない。
■    ■偉大な企業とすばらしい人生 
  適切な人を集める能力が高く、適切な人材を適切な場所にあてていたので、昼も夜も長時間はたらかなければならない状況にはなかった。
  「最初に人を選ぶ」原則に忠実なことが、偉大な企業と素晴らしい人生の密接な関係を作り出している。
何を達成できたとしても、時間の大部分を愛情と尊敬で結ばれた人たちとすごしているのでなければ、素晴らしい人生にはならない。
★最後にはかならず勝つ      ★最後にはかならず勝つ 
    A&Pは問題を一気に解決できる策を探すようになった。
×問題を一気に解決できる策
○地道な努力
クローガー:
事実をみれば、何をすべきか疑問の余地などなかった。だから、それを実行しただけだ。スーパーマーケットこそが将来への道。
「1位か2位になれないのなら撤退するしかない。」
すべての店舗を閉鎖するか、改装するか、移転し、新しい現実に合わない地域から撤退する決定。
事業のすべてひっくりかえすことになった。
■「事実は夢にまさる」    ■「事実は夢にまさる」 
  偉大な企業の飛躍は、いくつもの正しい決定をひとつずつ粘り強く実行して積み重ねていった結果。
ほんとうに大きな決定で、おどろくほど的確だった。
2つの特徴
@意思決定の全過程にわたって厳しい現実を直視する姿勢を貫いている。
Aすべての決定にあたって、単純だがきわめて賢明な判断の枠組みを用いている。 
偉大な企業になるビジョンを追うこと自体には何の問題もない。
飛躍を遂げた企業はいずれも、偉大な企業を築こうと努力しているのだから。
しかし、比較対象企業とは違って、飛躍した企業は、厳しい現実を認識して、偉大な企業への道をたえず見直している。
ピットニー・ボウズ:
「当社の企業文化では、自己満足は極端に嫌われる。」
15分で前年の業績を回顧し、その後2時間かけて今後の業績の悪化をもたらしかねない「奇妙で恐ろしいもの」について議論する。
従業員や幹部が何よりも注意すべき現実として、社外の現実ではなく、自分の顔色を心配するような状況を経営者が許していると、会社は凡庸になり、もっと悪い方向にすら進みかねない。
⇒カリスマ指導者よりも、カリスマ的でない指導者の方が、長期的な実績が良くなることが多い。
チャーチルは、大胆なビジョンを武器にしながらも、きわめて厳しい現実から決して目をそらさなかった。
「元気づけてくれる夢の必要はなかった。事実は夢にまさるのである。」
■真実に耳を傾ける社風を作る     ■真実に耳を傾ける社風を作る 
  本当の問題:「従業員の意欲を挫かないようにするにはどうすればいいのか」 
リーダーシップの要点はビジョン。
それと変わらぬほど重要な点に、真実に耳を傾ける社風、厳しい事実を直視する社風を作ることがある。
上司が意見を聞く機会、そして究極的には真実に耳を傾ける機会が十分にある企業文化を作り上げる。
●答えでなく、質問によって指導する 
会社をどこに導くのか?
「わたしには分からない」
飛躍を導いた指導者は、みなソクラテスのような方法を使っている。
質問するのは、たったひとつの理由から・・・・理解するため。
偉大さへと導くには、まず答えを考え、理想を実現するビジョンに向けて人びとの意欲を引き出すことを意味しているわけではない。答えを出せるほどには現実を理解できていない事実を謙虚に認めて、最善の知識が得られるような質問をしていく。
●対話と論争を行い、強制はしない 
ニューコアがそうであるように、偉大さへの飛躍を遂げた企業はすべて、激し議論を好む傾向をもっている。「大声での論争」「白熱した議論」「健全な対立」といった言葉が、すべての会社の記事やインタビュー記録に繰り返し出てくる。・・科学者の白熱した論争に似ており、全員が最善の答えを探している。
●解剖を行い、避難はしない 
フィリップ・モリスのカルマンの失敗の分析。
「カルマンが鏡の前に田って、失敗の責任はこの人物にあると、自分を指している」
解剖を行い、避難はしないようにすれば、真実に耳を傾ける社風を作る点で大きく前進できる。適切な人たちがバスに乗るようにしていれば、だれかに責任を押し付ける必要はまずなくなり、理解し学ぶことに専念できる。
●「赤旗」の仕組みをつくる 
企業の興隆と衰退の様子をみていくと、情報が不足していたために衰退した企業はほとんどない。
ウェルズ・ファーゴのカール・ライヒャルは、「究極の現実主義者」
規制緩和の厳しい現実に真正面から取り組んだ。
銀行家の仲間には気の毒なことだが、銀行家という階層は維持できなくなった。これからは銀行経営も一般企業の経営と同じであり、マクドナルドと変わらないほどコストと効率性を重視しなければならない。
偉大な実績に飛躍した企業が比較対象企業より、情報の量が多かったか、質が高かったことを示す事実は見つからなかった。そういう事実はまったくなかった。どちらの種類の企業も、良質の情報を同じように入手できた。・・・入手した情報を無視できない情報に変えられるかどうかがカギ。
入手した情報を無視できない情報に変え、真実に耳を傾ける社風をつくるため、(授業での)赤旗の仕組みが実用的で役立つ方法になる。
  厳しい現実の中で勝利への確信を失わない
キンバリー・クラークのダーウィン・スミス:
「全員立ち上がって、黙祷としてほしい」「いまのはプロクター&ギャンブルへの黙祷だ」
厳しい現実に直面したとき、偉大な企業は強くなり士気が高くなっているのであって、弱くなったり士気が落ちたりしていない。厳しい現実を真っ向から見据えて「われわれは決して諦めない。決して降伏しない。時間がかかるとしても、かならず勝つ方法を見つけ出す」と宣言すれば、気分は高揚する。
危機に面した人たち:
@危機の打撃から立ち直れない人たち
A普通の生活に戻る人たち
B危機の経験を糧にして強くなる人
ファニーメイ:
目標は単なる生き残りではなく、偉大な企業として圧倒的な力をもつようになることだだった。
金利リスク管理で世界一の資本市場参加者になる以外に道はない。
■ストックデールの逆説     ■ストックデールの逆説 
どの企業も偉大さへの飛躍の過程で、何らかの形で逆境にぶつかっている。 
どの場合も、経営陣は二面性をもった強力な姿勢で困難に対応。
@一方では決して目をそらすことなく、厳しい現実を現実として受け入れる
A他方で、最後にはかならず勝利するとの確信を持ちつづけ、厳しい現実はあっても、偉大な会社になって圧倒的な力をもつようになる目標を追求している。
この2面性:「ストックデールの逆説」
耐えられなかったのは「楽観主義者」
違いをもたらすのは、困難にぶつかるかぶつからないかではない。人生のなかでかならずぶつかる困難にどう対応するかだ。
ストックデールの逆説:
@どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失ってはならない。
そして同時に、
Aそれがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなければならない。
偉大さをもたらす主要な要因は拍子抜けするほど単純明快。
飛躍を導いた指導者は、大量の雑音を取り除いて、最大の影響を与える少数の点に焦点をあてる。
そうできるのはかなりの部分、ストックデールの逆説の両面を常に大切にしていて、片方だけに目を奪われることがないから。

正しい決定をつぎつぎにくだしていき、いずれはほんとうに大きな決定を行うために、単純だがきわめて賢明な概念を発見できる可能性を劇的に高められる。
★単純明快な戦略(針鼠の概念)      ★単純明快な戦略
    狐:たくさんのことを知っている
針鼠:たったひとつ、肝心要の点を知っている
狐型:
いくつもの目標を同時に追求し、複雑な世界を複雑なものとして理化しうる。
「力を分散させ、いくつもの動きを起こしており」、全体的な概念や統一のとれたビジョンに考えをまとめていこうとはしない。
針鼠型:
あらゆる課題や難題を単純な、単純すぎるほど単純な針鼠の概念によってとらえる。
針鼠の概念に関係しない点は注目するに値しない。
偉人は皆針鼠。
「素晴らしい見方だが、単純化しすぎだ」という批判を受けている。
針鼠型:
理解を深めていけば、本質は単純であることを知っている。
相対性理論のe=mc二乗
無意識をイド、自我、超自我で説明
アダム・スミスのピン製造所と「見えざる手」
本質を深く見抜く力をもっている⇒複雑さの奥にある基本的なパターンを把握できる。
本質を見抜き、本質以外の点を無視する。
偉大な事業への飛躍を導いた経営者は、全員が針鼠型。
ウォルグリーン:
「そんなに複雑な話ではない。概念がつかめたら、後はひたすら真っ直ぐに進んできただけだ」
その「概念」とは、もっとも便利な最高のドラッグ・ストアで、来客1人当たりの利益を最大限に増やす。
利便性の概念:
来客1人当たりの利益という単純な財務上の概念と結び付いている。
店舗の密集(1マイル以内に9店舗)によってそれぞれの地区で数量効果を確保し、それによって生み出した資金を投資してさらに店舗を密集させる。
⇒来客数をさらに増やす。
1時間の写真現像・焼き付けサービスなど、粗利益率の高いサービスを加えて、来客1人当たりの利益を増やす。
利便性が高くなる⇒来客数が増え、来客1人当たりの利益が増える⇒キャッシュフローが増えて、さらに便利な店舗を建設できる。
×経営の流行をあおる人たち
×ビジョンの賢明さを売り込む人たち
×大風呂敷を広げる未来学者
×恐怖心をあおる人たち
×動機づけの妙薬を説く経営の教祖
たったひとつの単純な概念を打ち立て、想像力を発揮してそれを見事に実行に移し、目覚ましい実績を上げる企業。
■3つの円   ■3つの円
●  とくに目立つのは、信じがたいほどの単純さだ。
どれも単純で単純で、思い切り単純なアイデアだ。
●  偉大な実績に飛躍した企業と比較対象企業との間に、戦略に2つの基本的な点で決定的な違い。
@飛躍した企業は、戦略の策定の基礎として、3つの主要な側面(「3つの円」)を深く理解している。
Aこの深い理解を単純で明快な概念にまとめ、この概念をすべての活動の指針にしている(「針鼠の概念」)。
@自分が世界一になれる部分はどこか

世界一になれる部分は、その時点で従事していない事業かもしれない。
A経済原動力になるのは何か

キャッシュフローと利益を継続的に大量に生み出すもっとも効率的な方法を見抜いている。
財務実績に最大の影響を与える分母をたったひとつ選んで「X当たり利益」という形で目標を設定している。
B情熱をもって取り組めるのは何か

情熱をかきたてられる事業に焦点を絞っている。
どのような事業なら情熱をもっているかを見つけ出す。 
自分の仕事について
@もって生まれた能力にぴったりの仕事であり、その能力を活かして、おそらくは世界でも有数の力を発揮できるようになる(自分はこの仕事をするために生まれてきたのだと思える)
Aその仕事で十分な報酬が得られる
B自分の仕事に情熱をもっており、仕事が好きでたまらず、仕事をやっていること自体が楽しい
針鼠の概念を完成させるには3つの円のすべてが必要。 
■世界一になれる部分となれない部分 ■世界一になれる部分となれない部分
「自分たちが理解している部分に全力を集中し、自負心によってではなく、自分たちの能力によって何をするかを決めている」(ウェルズ・ファーゴ)
世界一になれる部分はどこか
世界一になれない部分はどこか
最高になれないのであれば、その事業にかかわる意味がはたしてあるのか。

ウェルズ・ファーゴ:
国際事業の大部分から撤退。
世界的な銀行事業ではシティコープに勝てない事実を受け入れた。
アメリカ西部に事業地域を絞り込んで経営。

シティコープに追随する凡庸な銀行から、世界有するの好業績をあげる銀行に飛躍できた。
カール・ライヒャルト:
「宇宙科学のようなむずかしい話ではない。われわれの動きはきわめて単純であり、単純にしてきた。あまりに単純で自明なことなので、それについて話すのが滑稽に思えるほどだ。」
「そんなに複雑なことはしていない。事業の現実を直視して、どこにも負けない事業にできると分かっていいる少数の部分に全力を集中した。自負心を満足させることはできても、最高にはなれない分野には、注意を分散させないようにした」
針鼠の概念は、最高を目指すことではないし、最高になるための戦略でもないし、最高になる意思でもないし、最高になるための計画でもない。
最高になれる部分はどこかについての理解なのだ。
この違いは、まさに決定的である。
アボット:
厳しい現実を直視することを出発点としている。
医薬品業界で最高になる道は閉ざされていた。
ストックディールの逆説のうち確信の部分を用いて(偉大な企業になって勝利を収める道はあるに違いない、その道を探してみせる)、アボットの経営陣は、世界一になれる部分を理解する努力を続けた。

1967年頃、最高の医薬品会社なる機会は逃したが、医療のコスト効率を高める製品の開発では、一頭地を抜く企業になる機会があることがわかった。

医療のコスト効率を高める製品の開発で世界一の企業になる道を歩むようになった。
 コア・コンピュタンス(中核的能力)とは異なる。
(中核的能力があっても、その部分で世界一になれるとは限らないし、世界一になれる部分は、その時点で従事していない事業かもしれない)
■経済的原動力は何か ■経済的原動力は何か
飛躍した企業は、産業がどのような状況にあっても、経済的原動力を信じられないほど強めている。これが可能になったのは、事業の経済的な現実を深く理解しているからである。
この深い理解を、(業界で通常使われている財務指標を捨てて)たったひとつの「財務指標の分母」という形にまとめている。
これを長期にわたって一貫して上昇させていくことを目標にすると想定した場合、「X当たり利益」のXに何を選べば、自社の経済的原動力にもっとも大きく、もっとも持続的な影響を与えられるか
ウォルグリーンズ:「来客1人当たり利益」に焦点
×一店舗当たりの利益(vs.利便性という概念 1店舗当たりの利益を増やすには、店舗数を減らし、低コストで出店できる店に絞り込むのが、もっとも簡単な方法。これでは利便性という概念を破壊する。)
ウェルズ・ファーゴ:
○従業員1人当たりの利益⇒営業網をいち早く、簡素な支店と現金自動支払機を中心とするものに変更
×貸出1件当たり利益
×預金1件当たり利益
ファニーメイ:モーゲージ(住宅ローン)のリスク水準当たり利益

ファニーメイの経済を支えるのは、住宅ローンの債務不履行リスクを判断する能力がどの機関よりも高いこと。
この理解に基づき、民間金融機関が貸し付けた住宅ローンを買取、元利返済を保証した証券にまとめ、リスクに見合ったスプレッドを上乗せして金融市場で売却する。
ニューコア:鉄鋼製品1トン当たりの利益。
■情熱を理解する ■情熱を理解する
情熱は作りだせるものではない。
「動機付け」によって情熱を感じるような従業員を導くこともできない。
自分が情熱をもてるもの、周囲の人たちが情熱をもてるものを発見することしかできない。
自分たちが情熱を燃やせることだけに取り組む方針。
ジレットの経営陣が、技術的に高度で比較的高価な髭剃り用製品の開発を選択し、薄利多売の使い捨て製品での戦いから抜け出したのは、かなりの部分、安価な使い捨て剃刀の事業には情熱を燃やすことができなかったから。
どのような事業になら情熱をもっているかを見つけ出すことがカギ
■虚勢ではなく現実の認識     ■虚勢ではなく現実の認識
針鼠の概念を確立⇒
霧は晴れ、見通しもよくなり、何キロも先まではっきりと見えるようになる。
迷うことが少なくなり、恐る恐るの前進が並み足になり、並み足が駆け足になる。
偉大な企業にとってきわめて単純で明快な世界が、比較対象企業にとっては複雑だし、霧に包まれている。

@比較対象企業は適切な問い、三つの円で示された問いを立てていない。
A目標と戦略を設定するにあたって、現実の理解に頼るのではなく、虚勢に頼っている。
×「成長を目指せ」(グレート・ウェスタン)
ファニーメイ:「成長」に固執することなく、単純明快な概念に焦点を合わせた。
飛躍した企業は、針鼠の概念を確立するまでに平均4年かかっている。 
確立できた後にみれば、一点の曇りもないほど明快で、ほれぼれするほど単純。
but
この概念を確立するまでの道のりは恐ろしく困難で、時間がかかることもある。
針鼠の概念の確立は、その性格上、反復の過程であって、1回で終わるようなものではない。
●  @厳しい現実を直視し、A三つの円に基づく問いに導かれて、適切な人たちが活発に議論をかわし、論争を行う。
@世界一になれる点をほんとうに理解し、成功を収められるとういだけの点との間に、ほんとうに区別をつけているだろか。
A自社の経済的原動力と、たったひとつの分母を本当に理解しているのだろうか。
B自分たちがもっとも情熱を燃やせる点をほんとうに理解しているのだろうか。
@3つの円に基づく問い
A3つの円に基づく議論と論争
B3つの円に基づく経営方針の決定
C3つの円に基づく解剖と分析
あるとき目が覚め、厳しい現実を誠実に見つめるようになって、「世界一といえる部分はどこにもないし、これまでにもなかった」との結論に達したとすればどうすればいいか。
ストックデールの逆説を信じ
「世界一になれる点がどこかにあるはずだ。それを探し出してみせる。世界一になれない点がある厳しい現実も、直視しなければならない。この点で幻想を抱いてはならない」。
そして、そのときの状況がどれほど惨めであっても、針鼠の概念を見つけ出すことができている。
「この点で世界一になれる」というのは事実の認識。
ほとんど何も語る必要はない。
★      ★人ではなく、システムを管理する
規律の文化 
■     ベンチャー企業が偉大な企業になる例は極めて少ないが、これはかなりの部分、成長と成功への対応を間違えるから。
●  官僚制度は規律の欠如と無能力という問題を補うためのもの。
⇒はじめに適切な人を選ぶようにすれば、この問題はほぼ解決する。
ほとんどの企業は、ごく少数、バスに紛れ込んだ不適切な人たちを管理するために、官僚的な規則を作る⇒適切な人たちがバスを降りるようになり、不適切な人たちの比率が高まる⇒規律の欠如と無能力という問題を補うために、官僚制度を強化。
これらを避ける方法:
官僚制度と階層制度を避け、規律の文化を作り上げる方法。
@規律の文化とA起業家の精神の2つを組み合わせ。
アボットで学んだのは、1年の目標を決めたとき、それをコンクリートに刻んでおく考え。 
「責任会計」:
経費、売上、投資のすべての項目にそれぞれ、責任者をひとり決めていく。
アボットの監理職全員が、仕事の種類がどうであれ、それぞれの投資利益率に責任を負うようにする。
@財務の規律によって、Aほんとうに創造的な仕事のための資源を確保する。
●  @三つの円が重なる部分で、A熱狂的といえるほど針鼠の概念を維持して、B規律ある行動をみながとる文化を築き上げる。
@枠組みの中で自由と規律という考えを中心にした文化を築く
Aこの文化にふさわしい人材として、みずから規律を守る人たち、自分の責任を果たすためには最大限の努力を惜しまない人たちを集める。
「コッテージ・チーズを洗う」人たち。
B規律の文化を規律をもたらす暴君と混同してはならない。
C針鼠の概念を徹底して守り、三つの円が重なる部分を熱狂的ともいえるほど重視する。
これと変わらぬほど重要な点として、「止めるべき点のリスト」を作り、三つの円が重なる部分から外れるものを組織的に取り除いていく。
■     ■枠組みのなかの自由と規律
枠組みは厳格でも、ひとつの中心的な事実ははっきりしている。パイロットは航空機と乗客乗員の生命に対して、最終的な責任を負っている。
偉大な実績に飛躍した企業は、はっきりした制約のある一貫したシステムを構築しているが、同時に、このシステムの枠組みの中で、従業員に自由と責任を与えている。
みずから規律を守るので管理の必要のない人たちを雇い、人間ではなく、システムを管理している。
サーキット・シティ:
「はるか遠くにある店舗を、遠くから管理して経営できる秘訣はここにある。優秀な店長が店舗経営に最終的な責任を負い、優秀なシステムの枠内で経営する。経営幹部と従業員には、システムを信頼し、システムをうまく動かすために必要な行動はすべてとる人材を集めなければならない。しかし、このシステムの枠内では、店長はその責任にみあって、裁量の余地を十分にもつようにする」 
規律の文化をいかに作り上げるか?
@規律ある人材:
不適切な人たちに規律を課して適切な行動をとらせることにはなく、みずから規律を守る人たちをバスに乗せること。
A規律ある考え:
厳しい現実を直視する規律が必要であり、同時に、偉大さへの道を作りだすことは可能だし、そうしてみせるという確信が確固としていなければならない。
もっとも重要な点として、現実を理解するためにあくまでも努力し、針鼠の概念を確立する必要。
B規律ある行動:
重要なのは規律自体ではない。
みずから規律を守る人たちを集め、この人たちが徹底的に考え、その後に、針鼠の概念に基づいて設計された一貫したシステムの枠組みのなかで、規律ある行動をとることが重要。
■     ■コッテージ・チーズを洗う
●  規律・厳しい・根気強い・断固として・熱心・几帳面・綿密・組織的・整然と・職人のように・厳格・一貫性のある・絞り込んだ・責任ある・責任をとる
飛躍を遂げた企業の人たちは、それぞれの責任を果たそうとする意欲が極端に強く、熱狂的ともいえるほどの場合すらある。 
チーズを洗うのは小さなことではあるが、この小さな方法によって自分の力がさらに少し強まると本人が確信している点こそに核心がある。
この小さな方法を他の多数の方法に付け加えることによって、強烈なほど規律のある一貫した計画を作り上げている。 
偉大になれたのはなぜか。
その答えはかなりの部分、慎重に選び抜いた分野で世界一になるために必要なことはすべて行い、そして、一層の改善をつねに目指す姿勢、この規律にある。
秘訣はこれほど単純なのだ。そして、これほどむずかしいことなのだ。
どの組織も世界一になれれば素晴らしいと考えている。
しかし、ほとんどの組織は、
@自尊心に目を曇らされることなく世界一になれる部分を見つけ出す規律と、
A可能性を現実に変えるために必要な点をすべて行う意思
が欠けている。
コッテージ・チーズを洗う規律が欠けている。
  ■必要なのは文化であり、暴君ではない 
偉大な企業では、第五水準の指導者が持続性のある規律の文化を築き上げている。
これに対して飛躍を持続できなかった比較対象企業では、第四水準の経営者が強烈な力を発揮し、ひとりで組織に規律をもたらしていた。 
暴君が持ち込んだ規律によって目覚ましく上昇するが、その後やはり目ざましいばかりに転落する。
転落するのは、@規律をもたらした経営者が去って、持続する規律の文化を残さなかったときか、A規律をもたらして経営者自身が規律を失い、三つの円が重なる部分からさまよいでたとき。
偉大な業績を業績をあげるために規律が必要なのは事実。
しかし、規律ある行動をとっていても、三つの円に関する規律ある理解がない場合には、偉大な実績を持続させることはできない。
■針鼠の概念を徹底して守る      ■針鼠の概念を徹底して守る 
ピットニー・ボウズのフレッド・アレン:
自社を「郵便料金メーター」の企業だと考えるのではなく、もっと幅広い「メッセージ交換」の概念の範囲内で、企業の事務部門に製品・サービスを提供する企業として世界一になれるとみるようになった。
高級ファクス機や専用コピー機などの高度な事務機器を販売すれば、顧客一社当たり利益という経済的原動力にぴったりだし、広範囲な販売・サービス網を活用できる。
規律多角化と技術革新の一歩一歩がすべて、三つの円の重なる部分のもの。
偉大な実績に飛躍した企業は成長の過程で、きわめて単純な原則を守っている。
針鼠の概念に合わないものはやらない
関連のない事業には進出しない。
関連のない買収は行わない。
関連のない合弁事業には乗り出さない。
自社に合わないことは行わない。
例外は認めない。
フィリップ・モリスは、針鼠の概念を捨てるのではなく、それを見直し、健康的とはいえない消費財(タバコ、ビール、ソフト・ドリンク、コーヒー、チョコレート、チーズなど)で世界的ブランドの構築を目指す。
@針鼠の概念を見つけ出す規律をもった企業は少なく、
Aその内部に止まり続ける規律をもった企業はさらに少ない。
この規律をもたない企業は、単純な逆説を理解できていない。
三つの円の重なる部分に止まる規律をもつほど、成長と貢献の魅力的な機会が増えるという逆説。
偉大な企業は、機会が少なすぎて飢える可能性よりも、機会が多すぎて消化不良に苦しむ可能性の方が高い。
⇒機会を作りだすことではなく、機会を取捨選択することが課題になる。 
大きな機会にぶつかって「ありがたいが見送りたい」と言うには、規律が必要。
「一生に一度の機会」であっても、三つの円が重なる部分に入っていないのであれば、飛びつく理由は全くない。
針鼠の概念を熱狂的といえるほど維持するとの考えは、戦略的事業の選択だけを対象にするものではない。
組織を管理し、築き上げる方法すべてに関連しうる。 
ニューコアの概念の中心には、階層制がほとんどない平等主義と実力主義によって、従業員の利害を経営陣や株主の利害と一致させるとの考えがある。
ニューコアの成功の100%近くが、単純な概念を、その概念に一致する規律ある行動の形で実行に移していった結果だと述べている。
経営階層はわずか4つ。
本部には25人しか勤務せず、小さな歯科医院ほどの大きさしかない賃借のオフィスで働く
ロビーには安物の家具しかなく、クローゼットの大きさしかない。
豪華な食堂はなく、経営幹部への来訪者があると、向かいの商店街にあるサンドイッチ店、フィルズ・ダイナーでもてなす。
社内での地位と権威は指導力によるものであって、地位によるものではないと説明。
従業員の利害と経営陣の利害を一致させるという単純明快な針鼠の概念を確立し、それ以上に重要な点として、この概念に一致した組織を作り上げるために、極端だと思える手まで使う意思を持っている。
■止めるべきことのリストを作る   ■止めるべきことのリストを作る
@やるべきことのリスト
Aやめるべきことのリスト
飛躍を導いた指導者は、「やるべきこと」のリストと変わらないほど、「止めるべきこと」のリストを活用。
無意味なことをあらゆる種類にわたって止める。
超優良に飛躍した企業では、予算編成は、どの分野に十分な資金を投入し、どの分野に資金をまったく割り当てないかを決める規律の仕組み。
どの活動は針鼠の概念に最適で、したがって集中的に強化すべきか、どの活動は完全に廃止すべきかを決めるもの。 
飛躍を遂げた企業の動きを後から振り返ってみると、おどろくほど思い切った行動をとて、資源をひとつか少数の分野に振り向けている。
三つの円が重なる部分を理解できると、大胆な賭に保険をかけることはまずない。
もっとも効果的な投資戦略は、「正しく選択した分野への非分散型投資」。
「正しく選択する」とは、針鼠の概念を獲得すること。
「非分散型」とは、三つの円の重なる部分に入る分野に十分投資し、それ以外の活動をすべて取り止めること。
@第五水準の指導者がいて、A適切な人をバスに乗せ、B厳しい現実を直視する規律をもち、C真実に耳を傾ける社風を作りだし、D評議会を作って三つの円が重なる部分で活動し、Eすべての決定を単純明快な針鼠の概念にしたがってくだし、F虚勢ではなく現実の理解に基づいて行動すればいい。
⇒大きな決定を正しく行えるようになる。
最大の問題は、正しい選択が何なのかが分かったとき、正しいことを行う規律をもち、それを同様に大切な点として、不適切なことを止める規律をもつこと。
    ★新技術にふりまわされない
    ウォルグリーン:
ストックディールの逆説を心奉していた。
「当社がインターネットの世界で傑出した企業になりうるとの確信は揺るがない。そして同時に、インターネットの厳しい現実を直視しなければならない。」
「やるべきことを静かにやっていけばいい。連中がとんでもない犬の尻尾を引っ張っていたことが、いずれはっきりしてくる」
派手な技術や、大げさな宣伝や、株式市場の根拠なき熱狂によって偉大になるのではない。偉大な企業になるとするなら、それは、三つの円の理解に基づく一貫した概念を実現するために、技術をどのように適用するかを見つけ出したとき。
  ■技術と針鼠の概念 
技術の進歩による事業環境の変化は決して新しいことではない。だから、ほんとうに問題になるのは「技術はどのような役割を果たすか」ではない。
「偉大さへの飛躍を遂げた企業が技術について、通常とは違った考え方をしているのはどの部分か」である。
ウォルグリーン:
技術は、突破段階に入った後、その勢いを加速するための手段として使われている。
利便性の高いドラッグストアによって来客1人当たりの利益を増やしていくという針鼠の概念に、直接結びつけて使われている。
針鼠の概念が情報技術の利用方法を決めるのであって、その逆ではない。
  ■技術は業績の勢いの源ではなく、促進剤 
情報技術の利用がファニーメイにとってきわめて重要になったのは事実だが、そうなったのは針鼠の概念を発見した後、突破段階に入ってかから。
技術は適切に利用すれば業績の勢いの促進剤になるが勢いを作り出すわkではない。
偉大な業績に飛躍した企業が、先駆的な技術の利用によって転換を始めたケースはない。
技術をうまく活用するにはまず、どの技術が自社にとって重要なのかを判断できなければならないから
どの技術が重要なのか?
針鼠の概念の三つの円が重なる部分い直接に関係する技術、重要なのはそういう技術だけ。
技術の利用で先駆者になることも、飛躍を遂げた企業が針鼠の概念の枠内に止まる規律をもつ点のあらわれのひとつ。
規律ある人びとが、規律ある考えをし、規律ある行動をとっている。
  ■技術の罠 
現在に生きる人間が共通にもつこだわりのひとつは、技術とそれが与える影響。
but
偉大な企業への飛躍を導いた経営幹部を対象に行ったインタビューでは、全体の80パーセントは、飛躍をもたらした上位5つの要因のなかに技術をあげていない。
技術をあげた場合にも、順位の中央地は4位。
ニューコア:
「主要な要因は、会社の一貫性、組織全体にわれわれの考え方を浸透させる能力、それを可能にした要因として、経営階層がなく官僚主義がない組織」
業績低迷をもたらした主因が、新技術という魚雷に吹き飛ばされたことであった事例は1つもなかった。
たしかに技術は重要だ。技術面では遅れていては、偉大な企業にはなれない。しかし、技術そのものが偉大な企業への飛躍や偉大な企業の没落の主因になることはない
二番手(あるいは三番手、四番手)の追随企業が新たな市場を切り開いた企業を打ち負かすパターンは、技術と経済の変化の歴史に繰り返しあらわれている。
ベトナム戦争でアメリカに欠けていたのは技術力ではない。
戦争についての単純で一貫した概念、技術力の活かし方を決める概念。
いくつもの効果のない戦略の間を揺れ動き、主導権を握ることができなかった。

北ベトナム軍は、単純で一貫した概念を信奉していた。
ゲリラによる消耗戦によって、戦争に対するアメリカの世論の支持を低下させていく。
技術への闇雲な依存は、強みではなく、弱みになりかねない。
  ■取り残されることへの恐怖心 
「飛躍した企業はなぜ、技術の問題について均衡のとれた見方を維持できているのだろう。インターネットへの反応が典型だが、ほとんどの企業が受け身の姿勢になったり、揺れ動いたり、あわてふためいたり、天が落ちてきたかのように行動しているのに。」
飛躍を導いた幹部のインタビュー記録では、「競争戦略」がまったく話題になっていない。
戦略については語っているし、業績についても語っているし、世界一になることについても語っているし、勝利を収めることについてすら語っている。
しかし、だれも、他社の動きにどう対応するかという観点から戦略を考えてはいない。
何かを作り上げようと試みたとき、改善しようと試みたときはいつも、何らかの絶対的な基準に近づこうとしている。
偉大さへの飛躍を導いた経営者は、何かを作り上げたいという深い欲求と、高い理想を純粋に追い求める自分自身の衝動とに動かされている。
これに対して、凡庸さに陥り、凡庸さから抜け出せない体質を作った経営者は、取り残されることへの恐怖に動かされている。
★劇的な転換はゆっくり進む      ★劇的な転換はゆっくり進む
■準備と突破   ■準備と突破
マスコミが取り上げるのは、弾み車が1分間に1千回転するようになってからであることが少なくない。
⇒一夜にして変化を遂げ、一気に突破の段階に入ったかのように思える。
外部から見れば、転換は劇的で、革命的ともいえるほどの飛躍だと思える。しかし、内部から見れば、印象がまったく違っていて、生物の成長に似ている。
超優良に飛躍した企業は、転換の動きに名前をつけていなかった。
開始の式典はなく、標語もなく、何か特別なことをやっているという感覚すらなかった。
大きな転換の過程にあることに気づいたのは、転換がかなり進んでからだったと語った経営幹部も少なくない。
転換の動きは内部のものにとって、後からみたときの方が、その当時よりも分かりやすいことが多い。
伝説の名コーチ、ジョン・ウッデン
ウッデンがUCLAブルーインズのコーチになって、全米大学選手権で初優勝するまでに15年かかっている。
あるとき突破段階に達し、10年以上にわたって全米の強豪をつぎつぎに打ち破るようになった。
  ■贅沢な環境に恵まれたわけではない 
飛躍を達成するカギは、弾み車を利用して短期的な圧力を管理することにある。
 ■弾み車効果  単純明快な真実:
つねに改善を続け、業績を伸ばし続けている事実に、きわめて大きな力がある。
質問:変化への抵抗をどのように克服して、力を結集したのか。
偉大さへの飛躍を遂げた企業はあきらかに、信じがたいほど意欲を引き出し、力を結集させ、変化を見事に管理してきた。
条件がうまく整えば、意欲や力の結集や動機付けや改革への支持は問題ではなくなる。これらの点は自然に解決する。
飛躍した企業は、当初は大きな目標を公表していない場合が多い。
まずは弾み車を回しはずめる。理解から行動に、一段ずつ段階を踏んで、一回転ずつ回していく。弾み車に勢いがついてから、周囲の人たちにこう話す。
「この動きを続けていれば、○○が達成できないと考える理由はない」
弾み車に語らせる方法をとれば、目標を熱心に伝える必要はない。弾み車の勢いをみて、各人が判断してくれる。「これを続けていけば、すごいことがでるぞ」。この可能性を実現しようとみなが考えるようになり、目標はおのずから決まってくる。
経営陣が一枚岩になって単純明快な計画を推進し、第五水準の指導者に私心がなく、計画の達成に打ち込んでいる。
■悪循環  ×新しい方針を頻繁に打ち立てる。
×従業員の動機づけのために派手に発表し宣伝
悪循環のパターン
@買収の使い方の間違い
Aそれまでの積み重ねを無にする経営者の判断
■間違った買収 ドラッカー:
系家者が合併や買収に乗り出すのは、健全な根拠があるからというより、ほんとうに役立つ仕事と比較してはるかに強烈な興奮を味わえるから。
成功のカギ:
針鼠の概念を確立した後、弾み車の勢いが強くなった後に、買収を実施。
買収は、弾み車の勢いの促進剤として使う。
⇒成功率が高い。
買収や合併によって突破の段階に一気に進もうと試みる。
〜うまくいった例はない。
企業買収に資金を注ぎ込めば成長を達成することはできても、偉大さへの道を確保することは絶対にできない。
凡庸な2社が合併しても、偉大な1社になることはあり得ない。
■弾み車の動きをとめる経営者 
■すべてをつつみこむ弾み車の概念 ■すべてをつつみこむ弾み車の概念 
「一貫性」
「干渉性」
全体の各部分が互いに強め合って統合されたシステムになり、部分の合計よりもはるかに強力になる。
長期にわたって一貫性を保ち、何世代にもわたって一貫性を保ってはじめて、業績を最大限に伸ばすことができる。
すべては、準備から突破にいたる弾み車のパターンの各部分を調査し説明したもの。
@第五水準の指導者は、考え抜かれた静かな過程によって弾み車を押しつづけ、誰の目にも明らかな「実績」を生み出すことに関心がある。
A適切な人たちをバスに乗せ、不適切な人たちをバスから降ろす。
Bストックデールの法則:クリスマスまでに突破段階に達することはない。しかし、正しい方向に押しつづけていれば、いずれ、突破段階に入る。
C針鼠の画院円の三つの円を深く理解するようになり、その理解に基づく方向に弾み車を押しつづけていれば、やがて勢いがついて突破段階に入り、促進剤によって勢いを加速できる。
D特に重要な促進剤は、三つの円が重なる部分に直接に関係する技術の先駆的な応用。
★ビジョナリー・カンパニーへの道   ★ビジョナリー・カンパニーへの道
既存企業またはベンチャー企業+偉大な企業への飛躍の概念

偉大な実績の維持+「ビジョナリー・カンパニー」の概念

永続する卓越した企業
■ビジョナリー・カンパニーへ至る初期段階 ■ビジョナリー・カンパニーへ至る初期段階
サム・ウォルトン:
ウォルマートはなぜか、・・・偉大なアイデアによって一夜にして大成功を収めたとの印象をもたれてきたしかし、・・・・これは1945年から続けてきたことすべての結果なのである。・・・そして、一夜にして収めた成功のほとんどがじつはそうであるように、ウォルマートの成功も約20年かかって達成できたもの。
「どの企業も、成長を担う適切な人材を集められるよりも速いペースで売上高を増やしつづけながら、偉大な企業になることはできない。」
■ 永続する企業に不可欠なもうひとつの要因  ■永続する企業に不可欠なもうひとつの要因 
「一生の仕事を振り返ったとき、たぶんもっとも誇りに思っている点は、価値観、行動、成功によって世界の企業の経営方法に大きな影響を与えた会社を築く一助になれたこと」
同社の基本的価値観は、技術の進歩に貢献すること、個人を大切にすること、活動する地域社会への責任を果たすこと、利益は会社の基本的な目標にはならないとの確信。
会社を導く基本理念:
基本的価値観と基本的目的(たんなる金儲けを超えた企業の存在理由)から構成される。
永続する偉大な企業は、基本的な価値観と目的を維持しながら、事業戦略や事業慣行では世界の変化にたえず適用している。
これが「基本理念を維持し、進歩を促す」魔法の組み合わせ。
■良いBHAGと悪いBHAG ■良いBHAGと悪いBHAG
悪いBHAGは虚勢によって設定されたものであり、良いBHAGは理解によって設定されたもの。
三つの円が重なる部分に関する静かな理解に、BHAGの大胆さがくわわれば、魔法に近いとすらいえる強力な組み合わせになる。
ボーイングのBHAG:
@民間航空市場にはまったく足掛かりがないものの、ジェット旅客機の製造で世界一になりうる
A民間航空機事業に移行すれば、一機種当たりの利益を増やすことができ、経済的な原動力を大幅に強められる
B自社の従業員は民間航空機事業に情熱をもっている

多額の資金を投入してボーイング707の開発。
長期にわたって偉大な企業でありつづけるには、
@一方では、三つの円が重なる部分にしっかりと止まりつづけなければならない
A他方で、三つの円が重なる部分をどのように具体化するのかは、それぞれの時点で変更していく意思をもたなければならない。
■なぜ、偉大さを追及するのか ■なぜ、偉大さを追及するのか
仕事時間のうち半分以上をこれら原則の適用にあて、それ以外の点は大部分無視するか、中止すれば、人生が単純になり、実績がはるかに向上する。
チームの針鼠の概念:「最後に最高の走りを」という単純な標語
無駄を省いた:
「走るのは楽しい、レースは楽しい、力を伸ばすのは楽しい、勝つのは楽しい。これがチームの活動の基本になる考え。
チームの活動に熱意がもてないのだったら、他に熱中できるものを探すべきだ」」
コーチは、目標も示さず、優勝に向けての動機付けに努力することもしなかった。
選手が勢いをつけていき、レースごとに、週ごとに力を伸ばして、州内のどのチームにも負けないという自身をもてるようにした。
ある日選手のひとりが「州大会で優勝できると思う」と仲間に話し「おれもそう思う」ともうひとりが応じた。
全員が練習を続け、目標を静かに理解した。 

考え得るかぎり最強の規律の文化が生まれた。
州大会で優勝を勝ち取る責任が自分たちにあると、七人の正選手が感じるようになった。それは仲間にそう約束したから。

コーチが規律をもたらす役割を担う必要はない。
チームに勢いがつくと、部員が増え、優秀なコーチも増えていった。
(回転する弾み車)
心から好きなことをしており、その目的を深く信じているのであれば、偉大さを目指さないことは想像すらむずかしい。
ほんとうに問題なのは、「なぜ偉大さを追求するのか」ではない。
「どの仕事なら、偉大さを追求せずにはいられなくなるのか」。
「なぜ偉大さを追求しなければならないのか、そこそこの成功で十分ではないのか」と問わなければならないのであれば、おそらく、仕事の選択を間違えている。
それによって自分が何かを得られるからではなく、それが可能だから偉大さを目指したいと思えるものに関与すべき。
⇒第五水準の指導者への道を必ず進む。
すべての要因が組み合わされていけば、仕事の面で偉大さへの道を歩んでいけるだけでなく、人生も偉大なものになっていく。
最終的には、意味のある人生をおくることができなければ、偉大な人生にはならない。
意味のある仕事をしていなければ、意味のある人生にするのはきわめてむずかしい。
意味のある仕事をしていれば、ほんとうに素晴らしく、社会に寄与できることに関与しているとの認識から、めったにない心の安らぎを得られるかもしれない。
どんな満足にも勝る最大の満足すら、得られるかもしれない。
この地上ですごす短い時間を有意義なものにしているという満足、そして、重要なことをなし遂げられるという満足である。

ビジョナリーカンパニーA内
■針鼠の概念のうち「世界一になれる部分」(p161) 
●財務指標の分母(p168) 
▲各社が促進剤とした技術(p241)
アボット・ラボラトリーズ  ■医療コストを引き下げる製品の開発で世界一になる
売上構成比で99%を占めていた医薬品では世界一になれない現実

病院用栄養剤、診断用機器、病院用資材を中心に、医療コストの引き下げに寄与できる商品ラインの開発に焦点を変更
●従業員1人当たり
製品ライン当たりの利益から従業員1人当たり利益に変更。
医療コストの引き下げに寄与するとの考えによる。
▲コンピューター技術の先進的応用。
⇒従業員1人当たり利益という財務指標を向上させた。 
医薬品の研究開発では最先端ではなく、この点でメルク、ファイザーなど、針鼠の概念が違う企業と競争しない姿勢。
サーキット・シティ  ■大型家電製品の販売にサービス、選択、節約、満足の「4Sモデル」を適用する点で世界一になれる 
大型家電製品の小売りで、地域的に分散した事業を遠隔管理して、マクドナルドに匹敵する企業になれると理解。
●地域あたり 
一店舗当たり利益から地域当たり利益に変更。
地域ごとの規模の経済を反映。
店舗ごとの利益も引き続き重視したが、地域ごとに業績を考えるようになった点が決定打となり、サイロに差をつけることができた。
▲POSと在庫管理の高度な技術の先駆的応用。
大型家電製品の小売りで、マクドナルドに匹敵する企業になるとの概念に結びつき、地域的に分散した事業を一貫した方式で管理できるようにした。 
ファニーメイ   住宅ローンに関連するすべての点で、世界一の資本市場参加者になれる 
@ウォール街のどの企業にも負けない資本市場参加者になれること
Aモーゲージ証券のリスク評価について他社にはない能力を開発できること
●住宅ローンのリスク水準当たり
住宅ローン1件当たり利益から住宅ローンのリスク水準当たり利益に変更。
←金利リスクの管理によって、業績に対する金利動向の影響を軽減できるとの基本的な認識。
▲高度な数式とコンピューター分析の先駆的応用 
住宅ローンのリスクを正確に評価できるようになり、リスク水準当たり利益という財務指標を向上させた。
リスク分析のエキスパート・システムで低所得者層が住宅ローンを借りやすくし、国民すべてが住宅を所有できるようにすることへの情熱と結び付ける。
ジレット   高度な製造技術を必要とする日用品の世界的なブランドを確立する点で世界一になれる 
2つの大きく違った能力を組み合わせられることを理解
@耐久性が極めて高い製品を低コストで大量に製造する能力がある
A世界的な消費者ブランドを築き、剃刀や歯ブラシの「コカ・コーラ」になる能力がある
●顧客1人当たり
部門当たり利益から顧客1人当たり利益に変更。
反復購入(たとえばレーザー・カートリッジ)と製品1個当たり利益の多さ(たとえば使い捨て型ではない剃刀のマッハ3)の力を認識。
▲耐久性がきわめて高い製品を低コストで大量製造する高度な技術の先駆的応用。 
コカ・コーラが調合の日につを守るのと変わらぬほど厳重に製造技術の秘密を守る。
キンバリ・クラーク   ■消費者向け紙製品で世界一になれる
紙製品で「カテゴリー・キラー」のブランドを構築する潜在力があることに気付いた。
(クリネックスのように、ブランド名がカテゴリーの名前と同一視されるようなブランドを構築できることを認識)
消費者向けブランド1つ当たり 
固定資産(製紙工場)当たり利益から消費者向けブランド1つ当たり利益に変更。
景気循環型ではなく、景気が良いときにもわるいときにも収益性が高い。
▲不繊素材を中心とする製造技術の先駆的応用 
製品の品質を追求する情熱と結びつける。
高度な研究開発施設jをもち、「体温と湿度をはかるセンサーをつけた乳児が遊んでいる」
クローガー   ■革新的なスーパーマーケットで世界一になれる 
食品雑貨店の核心の能力を使って、革新的で粗利益率が高い「ミニ・ストア」を一か所に集めたスーパーマーケットの業態を作り上げた。
●地域人口千人当たり
一店舗当たり利益から地域の人口千人当たり利益に変更。
←地域市場でのシェアが食品雑貨店の採算を決めるとの認識。
地域市場シェアが1位か2位になれないのであれば、撤退する。
▲コンピューター・情報技術の高度な応用。 
スーパーマーケットをたえず改良。
バーコード・スキャナーの本格的導入で先頭を切り、キャッシュフロー・サイクルを向上させ、店舗網の大規模な更新のための資金を生み出した。
ニューコア ■企業文化と技術力を利用して、鉄鋼を低コストで製造する点で世界一になれる 
自社に2つの大きな強みがあることを認識。
@業績重視の企業文化を築き上げる点
A将来性を見据えて新製造技術を採用する点
⇒米国でもっとも低コストの鉄鋼会社になることができた。
●鉄鋼製品1トン当たり 
部門当たり利益から鉄鋼製品1トン当たり利益に変更。
生産性の高さをもたらす企業文化と電炉技術の組み合わせに注目し、数量だけを重視する姿勢をあらためた。
▲最先端の電炉製鋼技術の先駆的応用。 
世界中を探し回り最先端技術を導入。
薄板連続鋳造といったリスクが高いとみられていた技術に純資産の50%を投入するなど、思い切った投資を行う。
フィリップ・モリス   ■タバコで、後にはその他の消費財で、ブランド・ロイヤルティを築く点で世界一になれる。 
転換期の初期には、世界一のタバコ会社になれるとみていた。
後にタバコ以外の分野に事業を多角化したが(企業防衛のために、すべてのタバコ会社がおなじ戦略をとったが)、同社はビール、タバコ、チョコレート、コーヒーなどの「罪深い」製品と食品でブランドを構築する能力を活かすことに注力。
●世界的なブランド・カテゴリー当たり 
営業地域当たり利益から世界的ブランド・カテゴリー当たり利益に変更。
コカ・コーラのように世界的に力のあるブランドこそが偉大さを達せする際にカギになるとの認識。
▲包装・製造技術の先駆的応用 
ボックス型包装技術を導入し、タバコの包装に20年ぶりの技術革新をもたらす。
製造工程へのコンピューター利用で先駆的になった。
最先端の製造・品質管理技術の実験・試験・改良を担う製造センターに巨額を投資。
ピットニー・ボウズ   ■高度な事務機器を必要とする「メッセージ交換」の分野で世界一になれる。
郵便料金メーターからの事業拡大をいかにしてはかるかの問題に取り組んでいたとき、自社の強みについて2つの点を理解。
@自社を郵便関連事業の会社だととらえる必要はなく、もっと幅広くメッセージ交換関連事業の会社だととらえられる。
A高度な機器を事務部門に提供する点でとくに強みをもつ。
●顧客1人当たり 
郵便料金メーター1台当たり利益から顧客1社当たりに変更。
郵便料金メーカーを足掛かりに、幅広い高度な製品を顧客の事務部門に提供できるとの認識。
▲郵便業務への先端技術への先駆的応用。 
当初は機械式の郵便料金メーターを開発。
後に、電気・ソフトウェア・通信・インターネット技術の開発に巨額を投資し、高度な事務機器を開発。
1980年代には、郵便料金メーターの根本的な改良に巨額の研究開発費を投じた。
ウォルグリーンズ  ■利便性の高いドラッグストアで世界一になれる。 
ドラッグストア事業であるが、同時にコンビニエンス・ストア事業でもあると考えた。
利便性の高い立地を組織的に確保し、狭い地域に大量の店舗を密集させ、ドライブスルー薬局という新業態を開発。
情報技術に巨額を投資し、最近ではインターネット・サイトも開発し、世界中のウォルグリーンズ店を結び、巨大な「街角の薬局」を作り上げた。
●来客1人当たり 
1店舗当たり利益から来客1人当たり利益に変更。
利便性が高くコストが高い立地と持続可能な経済性の両立を認識。
▲衛星通信とコンピューター・ネットワークの技術の先駆的応用。 
利便性の高いドラッグストアの概念に結び付け、顧客層と立地によるニーズの違いに対応。
衛星通信網への思い切った投資によって全店舗を結び、巨大な「街角の薬局」を作り上げた。
「NASAの管制センターのようだ」と評される。
業界他社より少なくとも10年先行。
ウェルズ・ファーゴ  ■アメリカ西部に事業地域を絞り込んで、銀行をビジネスとして経営することで世界一になれる。
2つの決定的な点を理解。
@ウェルズ・ファーゴは自分たちがビジネスに従事していて、その対象がたまたま銀行業務であるにすぎないと考えた。
「ビジネスのように経営する」「自分が所有しているかのように経営する」が合言葉。
A世界的な銀行としては世界一になることはできないが、アメリカ西部では第一位になれることを認識。
●従業員1人当たり 
ローン1件当たり利益当たりから従業員1人当たり利益に変更。
規制緩和によって銀行業務が価格勝負になる厳しい現実を認識。
▲情報技術の先駆的応用 
従業員1人当たり利益を増加させる。
24時間の電話バンキング、ATMを早期に導入、ATMでの投資信託商品売買で先頭を切り、インターネット・バンキング、電子バンキングで先駆者に。
貸出のリスク評価を向上させる高度な数学モデルで先駆的。