シンプラル法律事務所
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論点整理(要件事実・主張立証責任)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)


★★要件事実マニュアル1
第1編 総論  
第1章 基本事項  
第1節 起案総論  
★1 訴状、答弁書、準備書面記載例
  ◆1 訴状 
     
     
★2 訴訟物(p2)
  ◆Ⅰ 基礎知識 
  ◇1 訴訟物の意義 
    訴訟物:当該訴訟において審判の対象となる権利関係。
ex.売買代金請求訴訟では、訴訟物は、現在(=口頭弁論終結時)における売買代金請求権の存在。
  ◇2 訴訟物の選択 
    原告は、信販の対象(=訴訟物)及びその範囲を自ら設定することができ、裁判所はそれに拘束される(民訴246条)。
~処分権主義。
審判の対象の範囲を設定することもできる⇒例えば請求権の全部ではなく一部を訴訟物とすることもできる(一部請求)。
  ◇3 訴訟物の個数
    実務は、いわゆる旧訴訟物理論⇒実体法上の請求権の個数が訴訟物の個数。
    物権的請求権の個数:
侵害されている権利の個数によって定まるのが通常。
ex.3個の動産を持ち去られたため、所有権に基づいて、これらの返還を訴求
⇒3個の所有権が侵害されている⇒訴訟物の個数は3個
    契約の成立によって発生する債権的請求権の個数:
契約の個数によって定まる。
ex.3個の動産を目的とする1個の売買契約を締結した買主が、当該売買契約に基づいて、3個の目的動産の引渡し⇒訴訟物の個数は1個。
     
  ◆Ⅱ 訴訟物の特定 
  ◇1 概要 
    請求(訴訟物)の特定は、訴状の「請求の趣旨」及び「狭義の請求原因」(=請求を特定するに足りる事実(民訴規則53Ⅰ括弧書))によってする。
     
    実務では、訴状の請求原因の末尾に「よって書き」を設けて、その中で訴訟物を明示
記載例:
よって、原告は、被告に対し、本件請負契約に基づく報酬請求として〇万円を支払うことを求める。
  ◇2 狭義の請求原因 
  ■ア 概要 
    狭義の請求原因(=請求を特定するに足りる事実(民訴規53Ⅰかっこ書)の内容は、請求権の種類によって異なる。)
  ■イ 物権的請求権の場合 
    物権的請求権:
①権利・義務の主体、
②権利の内容
によってと特定される。

②は、
物権の目的(ex.「A土地」)及び
物権的請求権の種類(ex.「所有権に基づく返還請求権」)
を明らかにする必要がある。
     
  ■ウ 債権的請求権の場合 
    債権的請求権:
①権利・義務の主体
②権利の内容
③権利の発生原因(売買契約等)
によって特定される。
     
  ◇3 司法研修所民事裁判教官室による訴訟物の記載方法 
    契約書を特定する要素:他の契約と区別する必要がある場合を除き、記載しない。
権利義務の主体が原告と被告⇒その記載を省略
契約の締結主体が原告と被告⇒その記載を省略
ex.
訴訟物が「原告の、被告に対する、原告・被告間で平成〇年〇月〇日に締結されたA土地の売買契約に基づく代金支払請求権」

単に「売買契約に基づく代金支払請求権」と表記。
   
  ◆Ⅲ 訴訟物の複数 
  ◇1 単純併合
  ■ア 意義
    複数の請求の全てが認容されることを求めるもの。
ex.
100万円の売買代金請求と100万円の請負報酬請求
  ■イ 請求の趣旨・よって書き 
    請求の趣旨:いずれも金員給付請求⇒その合算額を示せばよい
単純併合であることは、よって書きの中で明らかにする。
     
  ■ウ 主請求と附帯請求
     
  ◇  ◇2 選択的併合 
  ■ア 意義 
    複数の請求のうちのいずれかが認容されることを求めるもの。
     
  ■  ■イ 請求の趣旨・よって書きの記載方法 
    各請求の内容が同じである場合(例えば不法行為に基づく100万円の請求と不当利得に基づく100万円の請求を選択的にする場合):請求の趣旨では単純請求と同様の記載をし、
選択的併合であることは、よって書きの中で明らかにすうる。
     
     
  ◇3 予備的併合
  ■  ■ア 意義 
    複数の請求に順位を付けて、一時的には主位的請求の認容を求め、それが認められないのであれば二次的に予備的請求の認容を求める。 
  ■イ 許容性
    予備的請求:主位的請求と論理的に両立することができない請求について認められる。
but
実務では、主位的請求と論理的に両立する請求であっても、緩やかに予備的請求を認められる。
    主位的請求はと論理的に両立する請求であっても、法的、経済的に同種の目的に向けられている請求の予備的併合を認める見解もあり、これを認めた裁判例(貸金請求とその担保のために振り出された手形に係る手形金請求)もある。
選択的併合にするか予備的併合にするかについても、実務では、緩やかに解されており、どちらにするかは原告に任されている。
  ■ウ 請求の趣旨・よって書きの記載方法 
    主位的請求と予備的請求の内容が同じである場合⇒請求の趣旨では単純請求と同様の記載。
予備的請求であることは、よって書きの中で明らかにする。
     
★3 請求原因(p10)
  ◆Ⅰ 基礎知識
     
  ◆Ⅱ 契約に基づく債権的請求の請求原因 
     
  ◆Ⅲ 物権的請求の請求原因 
     
  ◆Ⅳ 選択的請求原因(p14) 
◇  ◇1 概要
    1つの訴訟物について、複数の請求原因を選択的に主張する場合。
ex.
賃貸人が賃借人に対し賃貸借終了に基づく賃借物の明渡しを請求する場合に、その請求原因において、複数の賃貸借終了原因(賃貸期間満了、契約解除・・・)を選択的に主張すること。
    裁判所は、どの請求原因から先に判断してもよいのが原則。
but
主位的・予備的の関係にある請求原因については、先に主位的請求原因を判断しなければならない。
要件事実論では、主位的・予備的請求原因の関係が生ずるのは、a+bの場合のみ。
     
  □2 選択的請求原因の記載方法 
    請求原因ごとに見出しを付す。
     
  ■  ■ア 選択的請求原因を明確に分離する記載方法
     
  ■  ■イ いわゆる中ふくれ方式 
     
     
★4 認否(p16)
  ◆Ⅰ 認否の方法 
  ◇1 自白する場合
    「請求原因(1)は認める。」
  ◇2 否認する場合
    「請求原因(1)は否認する。」
  ◇3 知らない場合 
    「請求原因(1)は知らない。」
「請求原因(1)は不知。」
    不知は、その事実を争ったものと推定される。(民訴159Ⅱ)
ここでの「推定」は、意思の推定を意味するのではなく、特段の事情がない限り否認として扱うという意味。
  ◆Ⅱ 認否が不要であるもの
  ◇1 顕著な事実
  顕著な事実は、証明を要せず(民訴179)、これに対する認否も不要。
顕著な事実として主張された事実について、反対当事者は、それが真実に反する旨を主張することができる。

「顕著」か否かは、法律問題ではなく事実問題。(最高裁)
顕著な事実(179条):
①公知の事実
②当該裁判所にとって職務上顕著な事実
②は必ずしも一般に了知されていることを要しない。
「公知の事実」:
ex.労働者の平均賃金の額、商品先物取引が一般にリスクが高いこと
公知の事実に反する自白は認められない。
「職務上顕著な事実」:
①当該事件に関する事実
②別事件等における手続上の客観的事実
③その余の事実
①:ex.
当該事件の口頭弁論期日における当事者の意思表示、訴状送達の日

②:ex.
当該裁判官が過去にした判決(当該判決をしたこと自体や、判決理由中で一定の事実を認定したこと自体)、
官報掲載の破産手続開始決定

合議体の場合は、その過半数に顕著であればよい。
  ◇2 法律上の主張 
  当事者は事実について認否
⇒法律上の主張に対する認否は不要
but
実務では、法律上の主張に対する認否がなされることも多く、
「請求原因3のうち、~は否認し、法的主張は争う。」などの認否記載がされる。
法律上の主張の「自白」は裁判所を拘束しない。
  「よって書き」は法律上の主張の要約
⇒認否は不要。 
  ◆Ⅲ 特殊な自白
  ◇1 先行自白の援用 
    当事者が進んで不利な陳述(=相手方が主張責任を負う)
⇒相手方がこれを援用すると自白になる。
援用する前は撤回可能。
  ◇2 擬制自白 
  ■ア 認否をしない場合 
  民訴法 第159条(自白の擬制)
当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
相手方の主張を争うか否かを明らかにしない⇒その事実を自白したものとみなされる。
but
「弁論の全趣旨」(=弁論を一体として見て)その事実を争ったと認めるべきときは、この限りでない。
  擬制自白の成否の判断の基準時は、口頭弁論終結時。 
第1審で成立した擬制自白の効力は、そのまま控訴審に及ぶわけではない。
控訴審の訴訟行為をさらに考慮に加え、控訴審の口頭弁論終結時において新たに判断される。
  ■イ 欠席の場合 
    当事者が口頭弁論期日に出頭せず
⇒出頭した相手方の準備書面によって予告されている事実について擬制自白が成立。
(ただし、公示送達の場合を除く)
    慰謝料、相当賃料などといった法的評価を要するものについては、その評価の基礎となった事実についてのみ擬制自白が認められ、評価自体の擬制自白は認められない。
  ◇3 自白の撤回 
  ■ア 概要 
  ■イ 黙示の撤回
  ■ウ 撤回時期の制限 
  ◆Ⅳ 在来様式判決書における認否の記載 
     
★5 抗弁  
  ◆Ⅰ 基礎知識 
     
  ◆Ⅱ 抗弁の3分類 
  ◇1 概要 
     
  ◇2 障害の抗弁 
     
  ◇3 消滅の抗弁
     
  ◇4 阻止の抗弁
     
  ◆Ⅲ 特殊な抗弁 
     
     
     
     
第2節 主張立証責任と要件事実  
★1 主張責任  
  ◆Ⅰ 概要 
  ◇1 主張責任の意義
    主要事実(=法律要件に該当する具体的事実)は、当事者が主張しなければ、裁判所がこれを裁判の基礎とすることはできない。
弁論主義の第1テーゼ
    主要事実の主張の不存在において受ける不利益=主張責任
   
  ◇2 主張責任だけが問題となる場合 
    顕著な事実⇒(公知の事実又は裁判官の職権上顕著な事実)

当事者は、主張責任を負うが、立証は不要。
     
  ◇3 立証責任だけが問題となる場合
     
  ◆Ⅱ 主要事実の主張 
  ◇1 主張の具体化の程度 
     
   
     
  ◆Ⅲ 主張と認定の食い違い 
  ◇1 多少の食い違いの許容
     
  ◇2 解釈による主張の擬制(判決釈明) 
     
  ◆Ⅳ 権利主張 
  ◇1 意義 
  権利(又は法律関係)の存在(又は不存在)の主張=権利主張
ex.「原告は、本件土地の所有権を有する。」との主張。 
     
  ◇2 権利主張の可否
    当時者が主張できるのは事実に限られ、法律効果が発生したとの主張(法律上の主張)は許されない(法の適用は裁判所の専権)。

法律効果である権利(又は法律関係)の存在(又は不存在)の主張は認められないのが原則。
     
  ◇3 権利主張が認められる場合
  ■(1) 所有権の存在(又は不存在)の主張
  ■(2) その余の権利主張 
  ■(3)  
     
  ◆Ⅴ 不利益陳述 
  ◇1 意義 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★2 立証責任  
     
     
     
★3 要件事実  
     
     
     
     
     
     
★6 攻撃防御方法の内包関係(いわゆるa+b)  
  ◆1 概要 
     
  ◆2 a+bの意義 
    被告が:a事実を要件事実とする抗弁Aと、a事実とb事実を要件事実とする抗弁Bのいずれも提出

請求を排斥するには、a事実が必要十分。
⇒b事実を認定する必要はなく、b事実は当事者の主張欄にも記載されない。
    抗弁Aに対する再抗弁Cが提出⇒抗弁Aがこれによって覆滅されることがあり得るから、b事実の認定が必要となることもある。

抗弁Bは、抗弁A及び再抗弁Cを前提とする抗弁としてであれば、予備的に適示することが許される。
抗弁Bは「予備的抗弁」
     
  ◆3 a+b理論の適用範囲
    訴訟物にまで応用することはできない。

各請求の請求原因間でa+bの関係になるこtがあるが、裁判所は、処分権主義(民訴246条)により、原告の定立した請求に拘束される
⇒一方の請求を判断不要として訴訟物からはずすことはできない。
     
第2章 民事訴訟一般  
第1節 起案の形式  
★1 表記一般、用字用語  
     
     
★2 訴訟当事者、代表者、代理人の記載  
     
     
★3 主文・請求の趣旨(p79)  
   
     
     
  ◆Ⅲ 認容判決(金員給付訴訟) 
  ◇1 基本形 
     
  ◇2 連帯債務の場合 
  被告らは、原告に対し、連帯して〇〇円を支払え。 
    「各自〇〇円を支払え。」とする記載例もあるが、少ない。
    通常共同訴訟は、被告各自に対する請求を併合したにすぎない⇒主文も被告ごとに独立したものであり、本来、「連帯して」との文言は必要ないものではある。
「被告らは、原告に対し、〇〇円を支払え」⇒平等額の分割払いを命じたことになる。
   
  ◇3 債務の一部が連帯関係にある場合 
    1 被告Y1は、原告に対し、〇〇円(ただし××円の限度で被告Y2と連帯して)を支払え。
2 被告Y2は、原告に対し、Y1と連帯して××円を支払え。 
1 被告Y1は、原告に対し、〇〇円を、うち××円は被告Y2と連帯して支払え。
2 被告Y2は、原告に対し、Y1と連帯して××円を支払え。
     
  ◇4 不真正連帯債務の場合 
    被告らは、原告に対し、連帯して〇〇円を支払え。
     
  ◇5 不可分債務の場合 
     
  ◇6 連帯債権、不可分債権の場合 
    被告は、原告ら各自に対し、〇万円を支払え。
    「被告は、原告らに対し、〇〇万円を支払え。」⇒平等額の分割払いを命じたことになる。
  ◇7 被告らが独立に同一金額の債務を負う場合
     
     
     
     
     
     
第2節 請求及び訴訟の類型  
     
     
★2 一部請求  
  ◆Ⅰ 一部請求 
  ◇1 一部請求の種類 
    数量的一部請求と
特定一部請求
     
  ◇2 一部請求の明示 
     
     
  ■(2) 数量的一部請求の場合、一部請求であることを積極的に明示する必要がある。 
     
  ◇3 弁済の抗弁等の充当部分 
     
  ◇4 訴えの提起による時効中断の範囲 
     
  ◇5 残部についての別訴定期等の可否
     
  ◇6 残部についての控訴提起の可否 
ア 明示がなかった場合:
その確定後に債権の残部について後訴を提起することは許されない
    イ 明示があった場合:
債権の一部請求である旨を明示して訴訟提起⇒その確定判決の既判力は残部に及ばない⇒残部に控訴を提起することができる。
     
     
     
     
第3節 民事訴訟上の主張・訴訟  
     
     
     
第4節 その他  
     
     
     
     
     
第2編 民法Ⅰ  
 第1章 民法総則
第2節 意思表示
1 意思表示  
 
2 心裡留保の抗弁  
 
3 通謀虚偽表示無効の抗弁  
     
4 民法94条2項の類推適用  
     
5 錯誤無効の抗弁  
  ◆Ⅰ 錯誤無効の抗弁
  ◇1 概要 
  ◇2 無効を主張できる者 
    表意者(又はその承継人)しか主張できない。 
  ◇3 表示の錯誤の場合 
  ■ア 
錯誤が認められるには、
①意思表示に存在した客観的事実と
②認識した事実
との間に食い違いがなければならない。
将来発生する事象に関する予測ないし期待などは錯誤の対象にならない。
  ■イ 
要素の錯誤といえるためには、
その錯誤がなかったら当該意思表示をしなかったであろう(因果関係)といえるばかりでなく
通常人であっても同様であろう(重要性)といえなければならない。
     
  ◇4 動機の錯誤の場合 
  ■ア 概要 
    動機が相手方に表示される⇒それが意思表示の内容となり、要素の錯誤となり得る
  ●a 表示重視説 
動機が表示⇒それに対する錯誤を認めても、相手方の信頼を害する度合いが小さい⇒動機の錯誤を認めてもよい。
当該動機を相手方が認識し得るか否かがポイント⇒認識し得るのであれば黙示の表示でもよい(最高裁)。
その動機が法律行為の要素となるようなものでなければ錯誤無効は認められない。
要件事実:
①動機が相手方に表示されたこと
②①の動機を相手方が認識し得た
③①の動機が法律行為の要素に当たる
④①の動機に錯誤がある 
  ●b 意思表示の内容化重視説
当該動機が意思表示の内容になったことを重視するもので、いわゆる合意主義を根拠。

当該動機が表示されたのみならず、相手方がこれを了承した(=合意成立)か否かがポイント。
当該動機が法律行為の要素か否か(=事項の重要性)は、意思表示の内容化の問題とされ、独立の用件とはならない。
〇要件事実:
①動機が相手方に表示されたこと
②①の動機が法律行為の内容となったこと
③①の動機に錯誤があること
     
  ■イ 裁判実務の傾向
    誤認のリスクは、本来、表意者が負うべき
but
相手方へのリスク転嫁が正当化される事情あり⇒当該意思表示を無効としてよい。
    ex.相手方が事実と異なる説明をして表意者の錯誤を惹起した場合
    相手方へのリスク転嫁が正当化される事情の有無について錯誤無効となるか否かを判断し、判示自体は、あたかも、a,b説の要件に当てはめて結論を出したかのように記載。
     
  ■ウ 近時の判例の動向 
    動機の錯誤を柔軟に判断するようになり、動機の表示を問題とせず、又は、動機の表示が明確といえないケースでも、動機(=両当事者が契約締結の際に前提としていた重要事実や、相手方の関与によって存在を誤認した事情)を、柔軟に「法律行為の要素」に含めて錯誤無効を判断。
    平成に入ってからは、動機の錯誤を柔軟に判断するようになり、
動機の表示を問題とせず
動機の表示が明確といえないケースでも、動機を柔軟に「法律行為の要素」に含めて
錯誤無効の判断をしている。
  ◆Ⅱ 再抗弁 
  ◇1 重過失 
  ■ア 概要 
  ■イ 要件事実 
  ■ウ 再々抗弁その1:共通錯誤であること 
  ■エ 再々抗弁その2:電子消費者契約であること
  ■オ 再々抗弁その3: 
  ◇2 解釈上の再抗弁 
6 詐欺・強迫を理由とする取消しの抗弁  
  ◆Ⅰ 詐欺・強迫を理由とする取消しの抗弁 
  ◇1 概要 
  ◇2 要件事実 
①相手方に詐欺の故意があったこと
②相手方が表意者を欺罔したこと
③②によって表意者が錯誤に陥ったこと
④当該意思表示が③によること
⑤相手方に対する取消しの意思表示
  ■ア
  ■イ 
  ◆Ⅱ 第三者による詐欺を理由とする取消しの抗弁
   
     
     
     
     
7 取消しと第三者  
     
第3説 代理  
     
     
     
     
     
第4節 無効・取消し・条件・期限  
1 無効(意思能力の欠缺、公序良俗違反)  
     
     
2 契約の取消し・無効による給付物返還請求に対する抗弁  
  ◆Ⅰ 基礎知識 
  ◇1 概要 
  ◇2 訴訟物:不当利得に基づく利得物返還請求権 
    本訴訟の訴訟物:
不当利得に基づく利得物返還請求権
     
  ◇3 請求原因 
     
  ◆Ⅱ 抗弁 
  ◇1 追認 
     
  ◇2 法定追認(取消しの場合) 
     
  ◇3 取消権の期間制限(取消しの場合) 
  規定  民法 第126条(取消権の期間の制限)
取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
    追認をすることができる時から5年間行使せず⇒時効によって消滅
行為の時から20年を経過したときも、同様。
  ■ A(短期時効の起算点)について 
    「追認をすることができる時」:
原則として、民法124条1項の「取消しの原因となっていた状況が消滅した」時 
     
     
     
     
第5節 時効  
1 所有権の時効取得(総論)  
     
 2
     
 3
     
4 消滅時効の抗弁(p299)
  ◆Ⅰ 要件事実 
     
  ◆Ⅱ 再抗弁(p304) 
  ◇1  
  ◇2 
  ◇3 時効援用権喪失(p305)
    時効の完成後、その援用に先立ち、債務者が時効の援用権を喪失したとの主張。
    要件事実:
債務者が時効完成後に債務の承認をしたこと
     
  ◇4 時効中断(総論) 
     
  ◇5 保証人の時効の中断について 
     
     
     
     
     
第2章 物権
第1節 所有権に基づく請求  
★1 所有  
  ◆Ⅰ 基礎知識 
  ◇1 所有の主張方法 
  ■ア 概要 
    所有権は権利自白が認められている⇒権利の発生原因ではなく、権利の存在自体を主張することもできる。
  ■イ 相手方当事者が、当該人の現在の所有を争わない場合
    「原告は、別紙物権目録記載の土地を所有している。」
  ■ウ 相手方当事者が、当該人の現在の所有を争う場合 
    相手方は、いずれの時点ででの誰の所有を認めるかを明らかにしなければならない。
⇒以下のⅡ、Ⅲのいずれかの主張方法。
  ◇2 譲渡契約の目的の所有権の移転の主張 
  ■(1) 目的物が特定物⇒譲渡契約(売買契約等)の成立時にその所有権が移転
⇒譲渡契約の成立を主張
  ■(2) 目的物が不特定物⇒目的物の特定時に所有権が移転

①譲渡契約の成立
②目的物の特定のための要件事実~当該契約に基づき目的物の引渡しがされたことを主張すれば足りる。 
  ◇3 従物の所有権の移転 
     
  ◆Ⅱ 相手方当事者が、当該人の過去の所有を認める場合 
  ◇1 当該人の過去の所有の主張 
  ■(1) 過去における所有権の存在について自白⇒当該過去の時点以降に当該人が当該物の所有権を喪失した旨の抗弁が成立しない限り、その所有権が現在まで存続していると扱われる。

相手方当事者が当該人の過去の所有を認めるのであれば、当該人の過去の所有を主張すれば足りる。
  ■(2)相手方が認める最新の時点の所有を主張すべき 
←所有権喪失の抗弁が成立し得る余地を狭めるため。
  当該過去の時点がいつであるか特定する必要がない場合は「もと所有していた。」でOK.
    「原告は、平成〇年〇月〇日当時、別紙物件目録記載の土地を所有していた。」
「原告は、別紙物権目録記載の土地をもと所有していた。」
  ◇2 
   
  ◆Ⅲ 相手方当事者が、当該人の前主の所有を認める場合 
  ◇1 前主の所有及び当該人への所有権移転原因の主張 
    相手方当事者が、当該人の前主の所有を認める⇒それを主張し(権利自白成立)、その上で、前主からの当該人への所有権移転原因を主張。
    「1 Aは、平成〇年〇月〇当時、別紙物権目録記載の土地を所有していた。
2 Aは、原告に対し、平成〇年〇月〇日、上記土地を代金〇万円で売った。」
     
     
★2 占有  
  ◆Ⅰ 基礎知識 
  ◇1 占有の事実性
  ◇2 占有の主張方法 
    占有について当事者間に争いがなければ、単に「占有している」と主張すれば足り、これにつき自白が成立する。
     
  ◆Ⅱ 占有の要件事実 
  ◇1 自己占有 
    「被告は、本件土地を資材置場として占有している。」
     
     
     
     
第5節 登記請求  
★1 登記請求総論 (p465)
     
     
     
     
     
     
     
★6 抵当権設定登記の抹消請求 (p498)
    訴額:目的物の2分の1(ただし(登記された)被担保債権総額(元本のみ)を限度とする)
被担保債権総額は、確定前の根抵当権にあっては、極度額による
  ◆Ⅰ 債権的登記請求 
  ◇1 概要 
  ◇2 訴訟物 
    被担保債務の弁済の場合:
訴訟物:抵当権設定契約に基づく抵当権設定登記抹消請求権
   
  ◇3 請求原因 
    1:被担保債権の発生原因
2:1の債権を被担保債権とする抵当権設定契約の成立
3:2の際、2の目的物が抵当権設定者の所有に属したこと
4:2に基づき抵当権設定登記がされたこと
5:1の債務が弁済されたこと
     
     
     
第3章 債権総論  
第1節 債権の目的・効力  
  ◆Ⅰ  
     
  ◆Ⅱ 債務不履行に基づく填補賠償請求(p574)
  ◇1 概要 
    填補賠償とは、債務が履行されたのに等しい地位を回復させるに足りるだけの損害賠償。
    填補賠償が認められるのは、
①債務不履行に基づき当該債務の発生原因である契約を解除した場合
②債務者の責めに帰すべき事由により履行が不能(追加不能な不完全履行を含む)になった場合
  ◇2  訴訟物
  ■ア 主請求について 
  履行に代わる 損害賠償額から、債権者が反対債務を免れ又は給付したものの返還を請求し得ることによって得られる利益を控除した額が、請求額となる。
    例えば、買主は、売買契約を解除した場合、填補賠償額から未払代金額を控除した額の請求をする。
  ■イ 附帯請求について
    主債務は期限の定めのない債務⇒附帯請求の始期は、履行の請求の日の翌日
解除をした場合、解除の意思表示が履行の請求にも当たると解することができる。
    商事債務の履行不能⇒填補賠償債務も商事債務になる⇒商事利率(年6分)となる。
     
  ◇3 請求原因 
    要件事実:
①債務の発生原因
②①の債務不履行の要件事実
③解除の意思表示(履行不能・定期行為の場合は不要)
④損害の発生及び額
⑤②と④の因果関係
⑥特別事情を債務者が予見し又は予見することができたこと(特別損害(民法416Ⅱ)の場合)
   
  ■ウ ④(損害)について 
    具体的には、
①目的物の交換価値、
②代替取引に要した費用(填補購入)、
③転売利益、
④第三者(転売先等)に支払った違約金等、
⑤目的物の修理に要した費用等
④は、逸失利益(=履行がされなかったため債権者が得ることができなかった利益)の典型であり、
例えば、代金1000万円の売買目的物の引渡しが履行不能となったが、履行期の時価が1300万円であった場合、買主の逸失利益額は300万円となる。(最高裁昭和36.12.8)
当該目的物を用いて営業ができたはずであるという逸失利益も損害に当たる。(最高裁昭和32.1.22)
     
第3節 債権の消滅  
     
     
     
     
9 相殺の抗弁(p687)
  ◆Ⅰ 基礎知識 
  ◇1 相殺の意義 
    民法 第505条(相殺の要件等) 
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
    相殺の主張:
①「訴訟外の相殺」を訴訟で主張する場合と
②「訴訟上の相殺」(=当事者が訴訟において初めて相殺を主張する場合)
  ◇2 訴訟上の相殺の法的性質 
    私法行為として、当該訴訟において裁判所に判断されることを停止条件として、実体上の効果が生じるとする見解が有力。
判例:当該訴えが取下げられると、訴訟上の相殺の効果は消滅。
訴訟上の相殺は私法行為⇒その意思表示は相手方に対してなされる。
  ◇3 相殺の抗弁の性質 
    自働債権と受働債権の弁済期がいずれも到来した時(=相殺適状時)に遡って効力を生じる(民法506Ⅱ)。

本訴求債権の元本債権を消滅さると共に、相殺適状後の利息及び遅延損害金債権の発生を障害させる。
  ◇4 相殺により消滅する債権の額 
  ◇5 相殺の抗弁が複数のある場合の先後関係 
    被告は、どの自働債権を先に相殺するかの指定をすることができる。
(被告が指定せず⇒原告が指定)
  ◇6 他の抗弁との判断順序 
     
  ◆Ⅱ 相殺の抗弁 
    要件1⃣ 原告の本訴求債権に相殺障害がないこと
要件2⃣ 自働債権の発生原因
(要件3⃣ 自働債権に対する抗弁権の消滅原因(自働債権に対する原告の抗弁権の存在が表れている場合)
要件4⃣ 相殺の意思表示 
  ◆Ⅲ 再抗弁 
  ◆Ⅳ 補足:相殺契約 
     
     
     
     
     
     
     
     
     






★★要件事実マニュアル2
 第3編 民法Ⅱ
第4章 契約総論
1 契約の成立
 
     
     
     
     
     
     
6 履行遅滞解除  
  ◆Ⅰ 履行遅滞に基づく契約解除(原則形) 
    当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる(民法541条)。 
    要件事実:
①当該債務の発生原因である契約の成立
②当該債務に履行期限があること(履行期限がある場合)
③②の履行期限の経過(履行期限がある場合)
④当該債務が履行されなかったこと
⑤反対債務の履行又はその提供
⑥(催告期間を定めた)催告

A:催告期間の経過
又は
B:客観的相当期間の経過
⑧解除の意思表示
     
  ◇6 ⑦(催告期間又は相当期間の経過)について 
    ⑦B(客観的相当期間の経過)は、
解除の日の前日の経過(これで相当期間に足りなければ主張自体失当)又は
相当期間の末日の経過を主張。
又は、よりわかりやすく、「上記催告の到達後7日間が経過した」などと主張。
    催告期間(又は相当期間)内に、債務者が履行拒絶の意思を明確に表示⇒その間に解除権が発生。
     
  ◇7 ⑧(解除の意思表示)について 
     
  ◆Ⅱ 履行遅滞に基づく契約解除(特殊形) 
     
     
     
8 解除に基づく原状回復請求(p40)  
  ◆Ⅰ 訴訟物 
    主請求の訴訟物:契約解除に基づく原状回復請求権
附帯請求の訴訟物:民法545条2項に基づく利息請求権(主請求が金員支払請求である場合)
    第545条(解除の効果)
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
   
  ◇1 主請求について 
     
  ◇2 附帯請求について 
    原状回復を求めるものが金員である場合、その交付日からの利息の支払を求めることができる(民法545Ⅱ)。

この利息は、遅延損害金ではなく、法定利息。
解除された契約が商行為⇒原状回復債務も商事債務⇒上記利息の利率は年6分(商法514条)となる。
   
     
     
     
     
第5章 契約各論Ⅰ  
第1節 売買  
     
     
第2説 請負  
     
     
第3節 売買・請負以外の契約、事務管理、不当利得  
     
     
     
★3 貸金返還請求  
  ◆Ⅰ 訴訟物 
  主請求の訴訟物:
消費貸借契約に基づく貸金返還請求権 
    附帯請求(利息請求)の訴訟物:
利息契約に基づく利息請求権
    額請求(遅延損害金請求)の訴訟物:
履行遅滞に基づく損害賠償請求権
    よって書き:
よって、原告は、被告に対し、本件消費貸借契約に基づき、
元金〇万円並びに
これに対する平成〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日まで約定の年〇分の割合による利息及び
平成〇年〇月〇日から支払済みまで約定の年〇分の割合による遅延損害金の
各支払を求める。
  ◆Ⅱ 請求原因 
  ◇1 返還時期の合意がある場合 
  主請求の要件事実
①金銭の返還の合意
②金銭の交付
③返還時期の合意
④返還時期の到来
  利息請求の要件事実

A
利息の合意
(利息の合意又は商事利率の要件事実)
又は
B双方が商人であること
⑥一定期間の末日の到来 
  遅延損害金の経過
⑦返還時期の経過
⑧利率の合意又は商事利率の要件事実(利率が年5分を上回る場合)
⑨一定期間(遅延利息発生期間)の末日の到来 
     
     
  ◇2 返還時期の合意がない場合 
  主要事実の要件事実:
①金銭の返還の合意
②金銭の交付
③(催告期間を定めた)催告

A:催告期間の末日の到来(③で催告期間の定めの主張をした場合)
又は
B:客観的相当期間の末日の到来 (③で催告期間の定めを主張しない場合)
  遅延損害金の要件事実:
⑤④の期間の末日の経過
⑥利率の合意又は商事利率の要件事実(利率が年5分を上回る場合)
⑦一定期間(遅延利息発生期間)の経過
   
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
第6章 契約各論Ⅱ・・・賃貸借  
第1節 賃貸借の終了に関する訴訟  
     
     
第2節 賃貸借に関するその余の訴訟  
     
     
     
     
     
第7章 不法行為  
第1節 不法行為総論  
★1 不法行為に基づく損害賠償請求(総論)  
  ◆Ⅰ 訴訟物 
    訴訟物:不法行為に基づく損害賠償請求権
  ◇1 訴訟物の同一性 
     
  ◇2 附帯請求(遅延損害金)の始期 
    損害の発生と同時に、何らの催告を要することなく、遅滞に陥る。
損害の発生日(=通常は不法行為時)が附帯請求の始期 
     
     
     
     
     
     
     
     
    □□


対抗要件の抗弁の要件事実について(マニュアル1p337)
  ■A:再々抗弁説(第三者抗弁説):
被告が第三者は(民法177条)であることだけを本抗弁の要件事実する説

民法177条が物権公示の原則⇒相手方が第三者であることが判明した以上、対抗要件を具備していない物権変動を相手方に対抗できない。 
  ■B:権利抗弁説:
本抗弁を権利抗弁とし、
①被告が第三者(民法177条)であることを要件事実とするほか、
②「原告が対抗要件を具備するまでは前主から原告への所有権移転を認めない」との意思の表明を必要とする説。

民法177条が対抗要件であることを重視し、対抗要件の有無を問題とする意思があることを要件として取り出すことによって、当事者の意思を尊重しようとするmのの。
  ■C:事実抗弁説(抗弁説):
①被告が第三者(民法177条)であることに加え、
②原告が対抗要件を具備していないことを
本抗弁の要件事実とする説。 
vs.
①被告が、自ら関わっていない消極的事実(原告の対抗要件の不具備)を立証することになり、公平の見地から不当。
②相手方が物権変動の主張者よりも重し主張立証責任を負うことになり、本来優劣がないはずの二重譲渡の譲受人間の公平を害する。
  ■D:否認説:
被告は、原告が対抗要件を具備していないことを理由として、前主から原告への権利移転の主張を、自己との関係で否認することができるとする説

民法177条が対抗要件であることを重視し、当事者が対抗要件の具備を争うか否かを、認否という形で、その意思を明確にさせるもの。
  ■E:請求原因説
■F:新権利抗弁説
     
相殺の抗弁(マニュアル1 697頁~)  
  ◆Ⅰ 基礎知識 
  ■1 相殺の意義 
    民法 第505条(相殺の要件等) 
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
民法 第506条(相殺の方法及び効力)
相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
    相殺の主張:
①「訴訟外の相殺」を訴訟で主張する場合
②「訴訟上の相殺」・・・当事者が訴訟において初めて相殺を主張する場合
  ■2 訴訟上の相殺の法的性質 
    A:私法行為とし、当該訴訟において裁判所に判断されることを停止条件として、実態上の効果が生ずるとする見解(=条件説)が有力。
判例:当該訴えが取り下げられる⇒訴訟上の相殺の効果は消滅する。
相殺の抗弁の提出が却下⇒相殺の効力が消滅(東京地裁H18.12.4)。
訴訟上の相殺は私法行為⇒その意思表示は相手方に対してされる。
but
判例は、訴訟行為説に立ち、訴訟上の相殺の意思表示は、裁判所に対して行うものとした(大判昭和9.5.22)。
  ■3 相殺の抗弁の性質
    相殺は、自働債権と受働債権の弁済期がいずれも到来した時(=相殺適状時)に遡って生ずる(民法506②)

相殺の抗弁は、本訴求債権の元本債権を消滅させるとともに、相殺適状後の利息及び遅延損害金の発生を障害させる。
but
すでにされた解除や弁済の効力を無効ならしめることはない。
  ■4 相殺により消滅する債権の額 
    相殺適状時を基準として、双方の債権額を定め、その対当額において差引計算をする。
既発生の遅延損害金又は利息がある場合、元本よりも先に相殺充当される(民法512、491①)。
    民法 第512条(相殺の充当)
第四百八十八条から第四百九十一条までの規定は、相殺について準用する。
民法 第491条(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
2 第四百八十九条の規定は、前項の場合について準用する。
  ■5 相殺の抗弁が複数ある場合の先後関係 
    被告は、どの自働債権を先に相殺するかの指定をすることができる(被告が指定しない場合、原告が指定することができる)。
民法 第488条(弁済の充当の指定)
債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
2 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
3 前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
    原被告ともに上記指定をしない⇒元本債権相互間で相殺に供し得る状態になるに至った時期が早い順に相殺する(時期が同一であれば民法489条、491条を準用)。
  ■6 他の抗弁との判断順序 
     
  ◆Ⅱ 相殺の抗弁 
  ■要件事実 
    ①原告の本訴求債権に相殺障害がないこと
②自働債権の発生原因
③自働債権に対する抗弁権の消滅原因(自働債権に対する原告の抗弁権の存在が現れている場合)
④相殺の意思表示。
   




無効(p220)
主張立証責任 法律行為の成立要件:法律行為の成立を主張する者が主張立証責任を負う
法律行為の効力要件:法律行為の効力を争う者が、無効であることの主張立証責任を負う
要件事実  ●意思能力の欠如 
当該法律行為時に意思能力がなかったこと
●公序良俗違反無効 
当該法律行為が公序良俗に違反すること
契約の取消しによる給付物返還請求に対する抗弁(p223)  
概要 詐欺等を理由に契約を取り消したとして既給付の目的物の返還を請求された場合の抗弁 
訴訟物 不当利得に基づく返還請求権 
請求原因 ①契約の成立
②①に基づく目的物の給付
③①の取消し原因事実
④①を取り消すとの意思表示 
抗弁  1追認 
当該取消しの意思表示の前に、当該法律行為を追認するとの意思表示がされたこと
2法定追認 
①当該取消しの意思表示の前に民法125条所定の行為がされたこと
②①が取消原因たる状況が消滅した後にされたこと
3  3 取消権の期間制限 

A 追認をすることができる時から5年経過
又は
B 当該契約成立時から20年経過
② 時効の援用 
4 同時履の抗弁 
①取り消された双務契約に基づく被告の債務の履行として給付したものがあること
②同時履行の抗弁を行使する意思の表明
5 利得の減少・消滅制限(行為能力の制限を理由とする取消しの場合) 
当該取消し前に利得が減少・消滅したこと
 
代理 (マニュアル1p184~)
代理  ①代理人(受動代理の場合相手方)による意思表示
②代理人が、①のとき、本人のためにすることを示したこと
③①に先立つ代理権の発生原因事実
民法100条但書 ①代理人(受動代理の場合相手方)による意思表示
②代理人が、①のとき、本人に効果を帰属させる意思を有していたこと
③相手方が②につき悪意又は有過失
④①に先立つ代理権の発生原因事実
商行為代理(商法504条) ①代理人(受動代理の場合相手方)による意思表示
②①が本人にとって商行為であること
③①に先立つ代理権の発生原因事実
④代理人が①のとき、本人に効果を帰属させる意思を有していたこと
代理主張に対する抗弁  ●代理権の濫用(1p189)
①代理人が自己または第三者の利益を図る意図で当該意思表示をしたこと
②相手方が①につき悪意又は有過失
再抗弁:
善意の第三者(本人、相手方、代理人以外の者であり、代理行為の目的につき法律上の利害関係を有するに至った者)
再々抗弁:
第三者の過失
●当該意思表示の瑕疵 
●錯誤による顕名 
●共同代理の定め違反 
     



要件事実
★履行遅滞
(上p306)
確定期限あり ①当該債務の履行につき確定期限があること
②①の期限の徒過
③①の債務が①の期限にまで履行されなかったこと
④自己の債務の履行又はその提供(双務契約の場合)
不確定期限 ①当該債務の履行につき不確定期限があること
②①の期限の到来

A:②の債務者が知ったこと及び知った日の経過
又は
B:期限到来後の債権者の催告及び催告日の経過
④①の債務が①の期限までに履行されなかったこと
⑤自己の債務の履行又はその提供
期限なし ①催告及び催告日の経過
訴状送達も催告の効力を持つ。
附帯請求として遅延損害金を請求する場合、実務では、よって書きの「訴状送達の日の翌日である平成○年○月○日から・・・」の部分に、こ訴状送達による催告及びその日の経過の主張の摘示があるものとする。
催告日の翌日から遅滞に陥る。
②当該債務が①の催告までに履行されなかったこと
③自己の債務の履行又はその提供(双務契約の場合)
★金銭債務の履行遅滞に基づく損害賠償請求 ■金銭債務の履行遅滞に基づく損害賠償請求
よって書き (主請求に続けて)及びこれに対する弁済期(期限の定めのない債務場合「履行の請求の日」又は「訴状送達の日」)の翌日である平成○年○月○日から支払済みまで民法所定の年5分(又は「商事法定利率年6分」、「約定の~分」)の割合による遅延損害金の支払を求める。
●利息発生日が複数の場合
(主請求に続けて)及び内○万円に対する平成○年○月○日から、内○万円に対する平成○年○月○日からいずれも支払済みまで年○分の割合による金員の支払を求める。
請求原因 ①金銭債務の発生原因事実
②①の債務の履行遅滞の要件事実

A:遅延損害金又は約定利息の利率の約定
B:①の債務の発生原因である契約の当事者のいずれかが商人であること(商法503条、商事利率(商法514条)による請求の場合)
C:①の債務が商行為により発生したこと(商法501条、502条、会社法5条、商事利率(商法514条)による請求の場合)
規定
原告は、1の当時、株式会社であった
原告は、1の当時、工芸品の販売店であった
★請負報酬請求
(2p110)
規定 民法 第633条(報酬の支払時期)
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
民法 第624条(報酬の支払時期)
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
よって書き よって、原告は、被告に対し、本件請負契約に基づき、請負代金○万円及びこれに対する上記引渡の日の翌日である平成○年○月○日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
主請求 ①請負契約の成立

A:仕事の完成
又は
B:i 報酬の前払特約の成立
  ⅱ iの支払期限の到来
③相当な報酬額(①で報酬額を定めなかった場合)
附帯請求
A:目的物を引渡したこと(引渡しを要する請負の場合)(民法633条)
又は
B:履行遅滞の要件事実(引渡しを要しない請負の場合)(民法633条但書・642①)
Bの場合、仕事完成で、報酬の請求が可能
法定の支払時期の定めがない⇒履行遅滞の要件事実が必要
⑤利率の合意又は商事利率の要件事実(年5分より高い利率の場合)
①遅延損害金の利率の根拠事実
②遅延損害金の式から終期までの期間の経過
but
②については、実務上、摘示を省略するのが通例
★貸金返還請求 
(2p169~)  
訴訟物 主請求の訴訟物:消費貸借契約(の終了)に基づく貸金返還請求権
附帯請求(利息請求)の訴訟物:利息契約に基づく利息請求権
附帯請求(遅延損害金請求)の訴訟物:履行遅滞に基づく損害賠償請求権 
よって書き よって、原告は、被告に対し、本件消費貸借契約(の終了)に基づき、元金〇万円並びにこれに対する平成〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日まで約定の年〇 分の割合による利息及び平成〇年〇月〇日から支払済みまで約定の年〇分の割合による遅延損害金の各支払を求める。
請求原因  ■返還時期の合意がある場合 
●主請求の要件事実 
①金銭返還の合意
②金銭の交付
③返還時期の合意
④返還時期の到来
●利息請求の要件事実 

A: i 利息の合意
  (ⅱ 利率の合意又は商事利率の要件事実(利率が年5分を上回る場合)
又は
B: 双方が商人であること
⑥一定期間(利息発生期間)の経過
●遅延損害金請求の要件事実 
⑦返還時期の経過
(⑧ 利率の合意又は商事利率の要件事実(利率が年5分を上回る場合))
⑨一定期間(遅延利息発生期間)の経過
■  ■返還時期の合意がない場合 
●主請求の要件事実 
①金銭の返還の合意
②金銭の交付
③(催告期間を定めた)催告

A: 催告期間の末日の到来(③で催告期間の定めの主張をした場合)
又は
B: 客観的相当期間の末日の到来(③で催告期間の定めを主張しない場合)
●  ●遅延損害金請求の要件事実 
⑤④の期間の末日の経過
(⑥利率の合意又は商事利率の要件事実(利率が年5分を上回る場合)
⑦一定期間(遅延利息発生期間)の経過
★委任の債務不履行
(2p204)  
訴訟物  債務不履行に基づく損害賠償請求
(受任者に債務不履行があった場合) 
請求原因の要件事実 ①委任契約の成立
②①に基づく善管注意義務の存在
③受任者が①の義務に違反したこと
④損害の発生及び額 
★不当利得
(2p231~)
よって書き その1
よって、原告は、被告に対し、不当利得に基づき、利得金○万円の支払を求める。
その2
よって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、不当利得金○万円及びこれに対する履行請求の日の翌日である平成○年○月○日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
■利得の返還請求の要件事実
●記載例 
◎④要件必要説
1.Bは、被告に対し、原告のためにすることを示して、平成〇年〇月〇日、原告の占有していた別紙物件目録記載の土地を売り、同日これを引き渡した。
2.Bは、上記売買契約の代理権を有していなかった。
◎④要件不用説 
原告は、平成〇年〇月〇日、別紙物件目録記載の土地を占有していたが、同日、この占有を失い、被告は、その後、この土地の占有を取得した。 
●要件事実 
  ①原告の損失
②被告の利得
③①と②との因果関係
④②が法律上の原因に基づかないこと
④を請求原因とするのが、実務、判例(最高裁昭和59.12.21)、通説 

④の反対事実を抗弁に回してしまうと、契約の解除・取消しなどを主張するよりも不当利得を主張する方が立証が容易となり、不当利得の補充性に反する。
近時は、類型的に考察し、給付利得の場合は④が請求原因となるが、侵害利得の場合は④の反対事実が抗弁に回るとする見解(潮見、債権各論Ⅰ303頁)。
本来、「あらゆる法律上の原因の不存在」を主張しなければならないはずであるが、上記記載例のような摘示があれば、あらゆる法律上の原因の不存在を摘示したものと扱う。
■遅延損害金請求の要件事実
⑤催告
⑥⑤の日から一定期間の経過
■民法704条に基づく利息の要件事実
⑤受益者の悪意又は重過失
⑥利得の日(受益後に悪意になった場合は悪意になった日)から一定期間の経過
★不法行為
(2p395)   
    ★不法行為
規定  民法 第709条(不法行為による損害賠償) 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
よって書き よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、○万円及びこれに対する不法行為の日である平成○年○月○日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
要件事実  ①原告の権利又は法律上保護される利益の存在
②①に対する被告の加害行為
③②についての故意又は過失
④損害の発生及び額
⑤②と④との因果関係
(⑥②が違法であること(法律上保護される利益の場合で、②だけでは違法性が明らかでない場合)
●①(権利又は法律上保護される利益)について
判例は、権利・法益侵害、違法性、故意・過失をそれぞれ独立の要件としている。
①:
被侵害利益は、必ずしも、法律上権利としての地位が確立しているものに限られず、それに至らない法律上保護される利益も含まれる。
一般には法律上保護される利益に当たるとはいえないが、一定の要件を具備した場合には法律上保護される利益に当たるものもある。
ex.
「放送番組に対する取材対象者の期待・信頼」という利益
「氏名を正確に呼称される利益」
一定の要件の具備は、①を基礎付ける物として、請求原因事実となる。
●②(権利等の侵害)について 
不作為による不法行為の場合、②は、作為義務の存在及びそれに違反したこととなる。
●③(故意)について 
故意:
結果の発生を認識しながら、あえてこれをする心理状態(大判昭和5.9.15)
「故意又は過失」に該当する事実を主張すればよく、そのどちらに当たるかを買う呈して主張する必要はない。
裁判所は、故意の主張に対して、過失を認定してよく、また、故意の主張を理由がないと認めたときは、次に過失がないことも認定しなければ、原告の請求を棄却できない
●③(過失)について 
過失は、結果回避義務及びその違反を中心に、その前提として、予見可能性を考慮。
その判断は、合理的平均人を基準とする(抽象的過失)。
過失と評価される具体的事実が主要事実になる。
「予見義務に裏づけられた予見可能性」を基礎付ける事実
「結果回避義務違反」を基礎付ける事実
に分けられる。
過失は、選択的認定が許される。
●④(損害の発生)について 
「損害」とは、不法行為により現実に生じた金銭的な被害(差額説)。
近時の有力説:権利侵害の結果(例えば「負傷したこと」)を損害と捉え、あとは損害の金銭的評価の問題。
●④(損害額)について 
◎ア 財産的損害
原告は、損害の発生のみならず、損害の「額」についても主張立証責任を負う。
もっとも、損害の性質上、その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所が、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定できる(民訴248条)。
裁判所は、損害額の立証が極めて困難である場合、民訴法248条により相当bな損害額を認定しなければならない、(最高裁)
民訴法248条は、損害額の認定について裁判所による裁量評価を許容したもの。
個々の損害費目及び損害の合計額は主要事実であるが、各費目ごとの損害額は主要事実ではない。
◎イ 財産以外の損害 
慰謝料の額については弁論主義の適用がない(判例)。
諸般の事情に則して裁判所が判断すべき事項。
慰謝料を基礎付ける事実については、原告が立証責任を負う。
慰謝料額の認定根拠が示される必要もない(判例)。
財産的損害に係る賠償請求ができない場合、そのことを慰謝料の額を認定する際に考慮することができる(判例)。
◎損害額算定の基準時 
物損の場合、損害額算定の基準時は、原則として不法行為時(物の滅失毀損時)、その後の物価上昇については民法416条2項を類推適用(判例、富喜丸事件)。
内田:特定物の場合賠償を得る時、不特定物の場合:代替物を購入し得た時を基準時とし、民法416条2項の類推適用はすべきではない。
●⑤(因果関係)について 
①行為と結果との間に事実的因果関係があるかという問題と、
②損失のどこまでを補填すべき対象とするかという相当因果関係の問題。
◎事実的因果関係 
特定の事実が特定の結果発生を招来した関係(最高裁)
訴訟上の因果関係の立証は、
完全な正確さを備えた自然科学的な因果関係の証明まで必要とされるわけではなく、上記関係を是認し得る高度の蓋然性の証明で足り(「高度の蓋然性」要件)、また、
その判定は、通常人が疑いを挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りる(「主観的確信」要件)(最高裁)。
不作為による不法行為の場合も、不作為と結果との間に事実的因果関係が必要とされる(最高裁)。
◎相当因果関係 
判例は、民法416条を類推適用。
通常損害のほか、「損害の発生を予見した又は合理的平均人であれば予見することが可能であった」特別損害についても、因果関係が認められる。
実際の裁判例では、かなりのものが、通常損害・特別損害基準を用いることなく、相当因果関係論を用いている。
●⑥(違法性)について 
◎ア 権利侵害の場合 
違法であることが明らか⇒⑥を主張立証する必要はなく、正当防衛などの違法性阻却事由が抗弁に回る。
①ないし⑤を主張すれば、⑥(違法性)も主張したといえる。
債権侵害(帰属侵害型を除く)の場合、一般に、m強度の違法性が必要とされ、故意又はこれに準ずる場合に限られる(通説・判例)。
⇒違法性を基礎付ける事実が請求原因において必要とされることもある。
◎イ 法律上保護される侵害の場合 
当該利益が侵害されたというだけで直ちに違法性があるとまではいえない。
弱い人格的利益(生命・身体以外の人格的利益)では、加害行為の態様と被侵害利益を相関関係的に衡量し、受忍限度を超えるか否かで違法性を判断するのが最近の判例の枠組み。
  ・・・・
●附帯請求の要件事実について 
   損害賠償請求権は、その発生と同時に遅滞に陥る
⇒附帯請求(遅延損害金請求)の要件事実として、主請求の要件事実にくうぇるものはない。
抗弁
p
401
  ■消滅の抗弁
●消滅時効
①被害者(又はその法定代理人)が損害及び加害者を知ったこと
②①より3年が経過したこと
③時効の援用
●除斥期間 
加害行為日(又は損害の発生日)から20年が経過
     
  ■障害の抗弁
     
★代表者の行為についての損害賠償請求   
(1p140)
      ★代表者の行為についての損害賠償請求 
概要   法人の代表者が職務を行うにつき他人に損害を与えた場合、法人が損害賠償責任を負う。 
代表者自身の損害賠償債務とは不真正連帯債務となる。
規定  一般法人法 第78条(代表者の行為についての損害賠償責任)
一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
一般法人法 第197条
前章第三節第四款(第七十六条、第七十七条第一項から第三項まで、第八十一条及び第八十八条第二項を除く。)、第五款(第九十二条第一項を除く。)、第六款(第百四条第二項を除く。)及び第七款の規定は、一般財団法人の理事、理事会、監事及び会計監査人について準用する。
会社法 第350条(代表者の行為についての損害賠償責任)
株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
会社法 第600条(持分会社を代表する社員等の行為についての損害賠償責任)
持分会社は、持分会社を代表する社員その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
請求原因 ①原告の権利又は法律上保護される利益の存在
②①に対する代表者の加害行為
③②についての代表者の故意又は過失
④損害の発生及び額
⑤②と④の因果関係
⑥②が代表者の職務の執行につきされたこと
   
★企業責任 (内田Ⅱp504) 企業の不法行為責任   企業の不法行為責任⇒通常は被用者の不法行為を立証して使用者責任を追及。
but
企業の日常的な活動から生じた損害の場合、特定の被用者を見つけてきてその不法行為(とくに過失)を問題とするのは、困難なことが少なくない。
(ex.Y自動車会社の製造した新型乗用車にブレーキ系統の欠陥があり、同型車を購入して運転していたXが、事故により負傷。) 
現代の大企業の複雑な人的組織・意思決定機構を考えると、個々の被用者の不法行為を立証することを被害者に求めるのは適切とはいえない。
生活妨害のように、適法行為が損害の発生を伴うような場合には、特定の被用者の過失は問題としにくい。

企業を全体として加害者と捉えて、企業自身の注意義務違反、そして不法行為責任を問題とする考え方(企業責任)。

715条3項で特定の個人が後で求償を受けることもない。
適用事例   公害や製造物責任に『関する判決に多い。
報道機関・雑誌出版社による名誉毀損が問題となる場合、特定の記者の過失を問題とすることなく、会社自体を709条で訴えることが多い。
  基本的には、709条によって企業自身の不法行為責任を追及することを認めるべき

個々の被用者の過失を問題とすることに意味がない類型の不法行為である。
ex.ブレーキに欠陥のある自動車を製造・販売したこと自体が行為義務違反であって、それがどの部署の誰の義務違反に由来するかを詮索すること意味はない。
★使用者責任に基づく損害賠償請求
(2p412) 
規定   民法 第715条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
要件事実 ①原告の権利又は法律上保護される利益の存在
被用者が①を侵害したこと
③②がその事業の執行についてされたこと
④②についての被用者の故意又は過失
⑤損害の発生及び額
⑥②と⑤の因果関係

A:被告が事業のために被用者を使用していたこと
B:被告が、事業のために被用者を使用している者に代わって事業を監督していたこと 
要件③ ● ③②がその事業の執行についてされたこと
◎取引的不法行為の場合
〇ア 概要
該当性の判断:
第1段:当該行為が使用者の事業の葉にに属するか
第2段:(使用者が複数の被用者に職分を分掌させている場合に)当該行為が被用者の職務の範囲に属するか
の2段階
〇イ 使用者の事業の範囲内であること
不当な事業執行や、附随的業務の執行であっても、使用者の「事業」に当たる。
被用者が個人的な利益を図るためにした事業執行も「事業」に含まれる
事業の執行ではなく、被用者が個人的に取引をしたにすぎない行為は含まれない(最高裁H15.3.25)。
かかる「個人的な取引」に当たるか否かは、被用者と被害者との間でされた合意の内容等による。
〇ウ 被用者の職務の範囲内であること
取引的不法行為の場合、当該行為が被用者の職務の範囲に属しないものであったとしても、行為の外形から観察して、被用者の職務の範囲内とみられれば「事業の執行について」を充足する(外形理論)。(最高裁昭和32.7.16)
外形理論を適用するための要件:
①加害行為が被用者の分掌する職務と相当の関連性を有すること
②被用者が使用者の名で権限外に当該行為を行うことが客観的に容易である状態に置かれているとみられること

裁判例では、
①の有無を検討⇒密接な関連性あり⇒(②も当然に具備しているとして)そのまま外形理論を適用
これが認めにくい⇒②も検討し、②が認められれば、これを①と併せて考慮した上で外形理論を適用。
外形理論に基づいて使用者責任を追及する場合、当該加害行為が権限内行為の外形を有することのみを主張立証すれば足りる。
←かかる外形があれば、職務の範囲に属するか否かを問わず、使用者責任が発生すると考えるべき。
◎事実的不法行為の場合
 
   
     
★共同不法行為
(下p425) 
規定   民法 第719条(共同不法行為者の責任)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
説明   実務の大勢は、
①複数の不法行為者の行為が関連共同し、かつ、
②個別的相当因果関係(各不法行為者の行為と損害との間の因果関係)がある場合に、
共同不法行為(民法719①前段)が成立するという従来の通説を採用。 
①は、客観的な関連共同性があれば足り、共同不法行為間の意思の共通(共謀)や共同の認識までは不要(客観的共同設)。

共同不法行為に基づく損害賠償請求の請求原因の要件事実は、単独不法行為に基づく損害賠償請求の請求原因の要件事実が全て包含されている。
but
実務では、共同不法行為であることを請求原因で主張立証するのが通例。
請求原因   ①原告の権利又は法律上保護される利益の存在
②被告が①を侵害したこと
③②についての被告の故意又は過失
④原被告以外の者が①を侵害したこと
⑤②と④が関連共同していること

⑥損害の発生及び額
⑦②と⑥の因果関係
意思的関与あり⇒関連共同性あり。
意思的関与あり:
①実行者と共謀した場合
②共謀にまでは至らなくとも、他人と共同して行為していることを認識しつつ、これを認容した場合
③教唆・幇助をした場合
意思的関与がない場合:
~個別的因果関係の不存在等による減免責を認めるべきか否かなどの観点から、事案の類型ごとに個別具体的に考えていくしかない。
★取締役の責任
(3p109)  
規定   会社法 第429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
よって書き   よって、原告は、被告らに対し、会社法429条1項に基づき、連帯して〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(である平成〇年〇月〇日(判決の場合))から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
要件事実   ①被告が取締役等として当該会社の任務を懈怠したこと
②①についての被告の悪意又は重過失
③第三者である原告の損害の発生及び額
④①と③との因果関係 
●①  ●①任務懈怠:取締役等が会社に対し法令違反を含む善管注意義務違反の行為(委任関係の債務不履行)をしたこと。
類型 ◎間接侵害型:
代表取締役が、放漫経営、私的費消、会社の財産の不適切な管理、会社資産の不当な廉価処分等によって会社の資産を減少⇒会社差権者の債権が回収不能になった場合。
◎直接侵害型:
代表取締役が、決裁の可能性のない手形の振出しや取引行為を行い、取引相手や手形所持人に損害を与えた場合。
◎監視義務違反型
 



所有権の主張方法  原告の所有を認める場合  原告は、別紙物件目録記載の建物を所有している。
原告のもと所有を認める場合  請求原因  原告は、平成○年○月○日当時、別紙物件目録記載の土地を所有していた。 
原告は、別紙物件目録記載の土地をもと所有していた。
抗弁:
所有権喪失
A:原告もと所有の時点以降の原告から原告以外の者への当該物の所有権移転原因事実
B:原告もと所有の時点以降の原告以外の者による当該物の原始取得原因事実
再抗弁:
所有権留保特約 
抗弁Aの所有権移転原因事実である譲渡契約に所有権留保特約があったこと。 
原告の前主の所有を認める場合 請求原因  ①Aは、平成○年○月○日当時、別紙物件目録記載の土地を所有していた。
②Aは、同日、原告に対し、同土地を代金○円で売った。
抗弁1:
原告の背信的悪意 
①当該全主から被告への所有権移転原因事実 
(Aは、被告に対し、平成○年○月○日、本件土地を代金○万円で売った。)
②原告の悪意。
(原告は、請求原因②の売買の際、上記売買を知っていた。)
③原告が被告との関係で背信性を有する
(背信性の評価根拠事実)
抗弁2:
対抗要件 
①被告が「第三者」(民法177)であることを基礎づける事実
(Aは、被告に対し、平成○年○月○日、本件土地を代金○万円で売った。)
②対抗要件の抗弁を行使するとの権利主張
(原告が対抗要件を具備するまで、原告の所有権取得を認めない。)
再抗弁a:
原告が対抗要件を具備
原告が対抗要件を具備したこと
(Aは、原告に対し、平成○年○月○日、請求原因②の売買契約に基づき、本件土地につき所有権移転登記手続をした。)
再抗弁b:
被告の背信的悪意
①被告の悪意
(被告は、抗弁1の贈与の際、請求原因2の売買を知っていた。)
②被告が原告との関係で背信性を有すること
(背信性の評価根拠事実)
再抗弁c:被告が対抗要件
再抗弁d:被告が、詐欺又は強迫により、原告の登記申請を妨げたこと 
再抗弁e:被告が、原告のために登記する義務を有していたこと(不登5②)
抗弁3:
対抗要件具備により所有権喪失
①前主から被告への所有権移転原因事実
②被告が対抗要件を具備したこと
再抗弁a:
被告の背信的悪意
①被告の悪意 
②被告が原告との関係で背信性を有すること
所有権に基づく建物収去土地明渡請求 請求の趣旨 被告は、原告に対し、別紙物件目録2記載の建物を収去して同目録1記載の土地を明け渡せ。
要件事実  請求原因 ①原告が当該土地を所有していること。
②①の土地上に建物が存在していること。
③被告が②の建物を所有していること。
抗弁 建物の所有権喪失 
再抗弁又は予備的請求原因 ①被告の当該建物もと所有当時に被告名義の登記の存在。 
②①が被告の意思に基づくこと。
③当該建物に被告の登記が存在していること。
説明 建物の所有者が、その意思に基づいて建物所有権登記を経由した場合、建物を第三者に譲渡した後も、この登記名義を保有する限り、建物収去土地明渡義務を免れることはできない。(最高裁平成6.2.8) 
自賠法3条に基づく損害賠償請求  訴訟物  自動車損害賠償保障法3条に基づく損害賠償請求権 
よって書き  よって、原告は、自動車損害賠償保障法3条に基づく損害賠償として、○万円及びこれに対する不法行為の日である平成○年○月○日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を認める。 
要件事実  請求原因  ①被告の運行供用者たる地位の取得原因事実
(被告Aは被告者を所有し、被告Bは被告Aより被告車の貸与を受け、いずれもこれを自己のため運行の用に供していた)
②当該自動車の運行により原告の生命又は身体が害されたこと
③損害の発生及び額
④②と③との因果関係
抗弁1:運行共用者の地位の喪失 
抗弁2:他人性の欠缺
抗弁3:
自賠法3条ただし書による免責
①運行供用者及び運転者がいずれも自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと
③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
抗弁4:好意同乗 
抗弁5:消滅時効
国家賠償請求 被告  国の場合、
代表者は法務大臣
東京地千代田区霞ケ先一丁目1番1号
被告 国
代表者法務大臣 ○○○○
地方公共団体である場合、都道府県庁又は市町村役場の所在地が住所であり、代表者は都道府県知事又は市町村長。
訴訟物  国家賠償法1条1項(又は2条1項、3条1項)に基づく損害賠償請求権 
よって書き よって、原告は、被告に対し、国家賠償法2条1項に基づき、○万円及びこれに対する本件事故の日である平成○年○月○日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 
要件事実  請求原因(法1条1項に基づく請求) ①原告の権利又は法律上保護される利益の存在
②国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員による①に対する加害行為
③②が職務を行うについてなされたこと
④当該公務員の故意又は過失
⑤損害の発生及び額
⑥②と⑤の因果関係
⑦②が違法であること
請求原因(法2条1項に基づく請求) ①原告の権利又は法律上保護される利益の存在
②公の営造物の設置又は管理の瑕疵
③②により①の侵害
④損害の発生及び額
⑤③と④の因果関係
抗弁1:責任阻却自由(公務員の心神喪失の間になされた場合等) 
抗弁2:消滅時効(民法724条前段)
抗弁3:除斥期間(民法724条後段)
抗弁4:相手方の悪意・重過失(法1条1項の請求に対し)
取引行為類似の関係にある行為について、当該公務員の職権濫用についき悪意重過失の相手方は、国家賠償請求をすることができない。
抗弁5:権利行使の時期的制限
抗弁6:行政訴訟判決の既判力
抗弁7:過失相殺
消費者契約法上 
の抗弁
要件事実  抗弁1:
誤認による意思表示の取消し(法4①②) 
①当該契約が消費者契約であること。
②原告が当該契約の締結について勧誘をする際
A:重要事項についての不実告知
又は
B:当該契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、当該消費者が受け取るべき金額その他変動が不確実な時効についての断定的判断の提供
又は
C:
(1)重要事項又はそれに関連する事項について消費者の利益になる旨を告げなかったこと
(2)当該重要事項についての不利益事実を故意に告げなかったこと
③被告が②により次の誤認をしたこと
A:②Aの場合、その内容が事実であると誤認
B:②Bの場合、その断定的判断の内容が確実であると誤認
C:②Cの場合緒、その不利益事実が存在しないと誤認
④被告が③により当該契約の申込み又は承諾の意思表示をしたこと
⑤当該契約を取り消すとの意思表示をしたこと
再抗弁a:(②Cに対し)事業者の告知を消費者が拒んだこと 
再抗弁b:消滅時効(法7①前段) ①消費者が誤認に気づいたこと。
②①から6ヵ月が経過したこと
③時効の援用
再抗弁b:除斥期間(法7①後段) ①当該契約の締結の日 
②①から5年が経過したこと
再抗弁c:善意の第三者(法4⑤)
消費者契約法により取消しは、これを善意の第三者に対抗することができない。 
再抗弁d:取消前に消費者が追認又は法定追認に該当する行為をしたこと。
(民法122,124,125)
抗弁2:
困惑による意思表示の取消し(法4③)
①当該契約が消費者契約であること
②原告が消費者契約の締結について勧誘する際
A:不退去
又は
B:監禁
をしたこと
③消費者が②により困惑したこと
④消費者が③により当該消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたこと
⑤当該契約を取り消すとの意思表示をしたこと
特定商取引法上の抗弁  対象  指定商品についての
①訪問販売に係る取引、
②通信販売に係る取引、
③電話勧誘販売に係る取引、
④連鎖販売取引(ねずみ講等)、
⑤特定継続的役務提供に係る取引(エステ、英会話などで一定の期間、金額を超えるもの)、
⑥業務提携誘引販売取引(内職商法やモニター商法)、
⑦ネガティブオプション(注文がないのに一方的に商品を送りつけてくること)
 要件事実 抗弁1:
クーリングオフ 
クーリングオフの意思表示を発信したこと。
(契約内容を記載した書面を受領してから8日以内であれば、原則として無条件で解約の申込みの撤回又は契約の解除をすることができる。)
法9(指定商品等についての訪問販売)、24(電話勧誘販売),40(連鎖販売取引),48(特定継続的役務提供に係る取引),58(業務提供誘引販売取引)) 
書面の公布日については事業者に主張立証がある⇒「クーリングオフの発信が、法定の書面の受領から8日以内であること」を主張立証する必要はない。
再抗弁a:法定の書面(法4,5)を当該クーリングオフの発信より8日以上前に被告が受領したこと
再抗弁b:指定消耗品(特定商取令別表第4)を使用し、又は、全部若しくは一部を消費したこと(法9①(2)、24①(2)等)
抗弁2:禁止行為違反の勧誘による意思表示の取消し
抗弁3:損害賠償等の額の制限
抗弁4:中途解約及び損害賠償額の制限