シンプラル法律事務所
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新注釈民法16

★★新注釈民法(16)
     
     
     
     
     
     
☆☆719条(p281)  
    第七一九条(共同不法行為者の責任)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。 
   
     
     
  ☆U 事件類型別の判例の変遷と原因競合類型(p284) 
  ◆(1) 事件類型から見た判例の変遷 
    @船舶の衝突事故
A騒擾
B公害
C交通事故
D都市型大気汚染
E交通事故と医療事故
F製薬会社と国の責任の競合
G「わたり」労働者が提起するじん肺訴訟
H建設アスベスト訴訟
     
  ◆(2) 原因競合の類型(p284) 
    「必要条件競合」:加害行為のいずれもが損害発生の必要条件となる、すなわち、1つでも欠ければ損害が全く発生しない場合 
@CEFの多く
    「累積的競合」:単独でも一部の損害が発生しうる複数の加害行為が累積することで損害が全部発生した場合
B
    「択一的競合」:全部惹起力のある複数の加害行為のいずれか1つが原因となって損害が発生した場合
    「重畳的競合」:全部惹起力のある複数の加害行為が競合して1つの損害を発生させた場合 
     「重合的競合」:累積的競合のうち、結果の主要部分を惹起した加害者がおらず、多数に上る場合
     
  ☆V 本条1項前段の責任(狭義の共同不法行為責任) 
     
     
     
  ◆(3) 共同不法行為の類型化 (p292)
     
  ◇(ア) 新主観的共同説 
     
    1項後段(類推)適用の場合、被告が自己の行為の寄与度の証明をすれば減責が認められる(因果関係が推定される)。
  ◇(イ) 主観・客観併用説 
    第1:
1項前段と後段の効果は、因果関係の擬制因果関係の推定(寄与度減責)
弱い関連共同性について、1項後段の適用(類推適用)を根拠とする点は、近時の下級審裁判例に支持されている。
    第2
    第3
寄与度減責は、1項前段の適用される場合一般について認められ得るとする。
1項後段については、寄与度不明の場合に因果関係を推定するが、客観的共同の要件を加重する。
客観的共同の場合に関して、分割責任とする立場は、不法行為法研究会「日本不法行為法理ステイトメント」でも採用。
    第4 
     
  ◇(ウ) 小括 
  ■(a) (p295)
    1項前段の場合については減免責は認めない立場が主流。
←特に被害者保護を図り、共同行為者を戒める趣旨。 
    「主観・客観併用説」においても第1説が妥当。

(1)累積的競合類型における因果関係証明の困難を解決するため、@個別的因果関係の擬制(減免責不可の全額賠償責任)の場面を設けることが考えられるが、@については自己責任の原則から逸脱するという問題⇒この場合を緊密な一体性のある場合に限定することが適切
(2)@の場面と、各自の因果関係が必要とされる場面の間に、A因果関係の推定される場面を認め、@とAを並列させることにより(因果関係証明の困難と加害者の自己責任の原則という)被害者・加害者双方の重要な要請を踏まえ、加害者間の関係に応じた絶妙な効果を付与している
(3)(個別的因果関係の擬制の推定という)効果の異なる@とAを別の規定(それぞれ1項前段および1項後段(ないしその類推))の問題として整理している点で明快
第3説・第4説のように、1項前段の共同不法行為のすべてについて、または、一部の類型において、賠償責任の寄与度減責を認めるべきであるとする有力説
vs.
近時の多くの学説が想定している1項前段と後段の重要な相違点(全額連帯か、減免責の余地ありか)を失うことになる。
(なお、寄与度が僅少である者に関して分割責任とする抗弁については・・・「強い関連共同性」が認められるケースでは否定している。)
  ■(b)(p296) 
    「強い客観的関連共同性」のある場合:
加害行為が社会観念上全体として一個の行為と評価するのが適切な一体性をもち、各人に緊密な関係がある場合であるが、その際、場所的・時間的近接性も必要とされる。
×薬品の製造、輸入の許可と販売行為の関係
×交通事故と医療事故の競合事案
 
    「弱い関連共同性」の概念
     
  ■(c)(p298)  
    西淀川第1訴訟判決
    四日市訴訟判決:
関連共同性を「強い関連共同性」と「弱い関連共同性」に分け、
強い関連共同性⇒個別的因果関係を不要
弱い関連共同性⇒個別的因果関係を推定
@これらをともに1項前段の問題とし、
A基本的には、各人の行為が独立に不法行為の要件を満たすことを要求
    西淀川第1次訴訟判決:
@「強い関連共同性」を719条1項前段、「弱い関連共同性」を同条1項後段の問題(正確には類推適用と言うべき)
A各人が独立に不法行為の要件を満たすことを要求していない
B弱い関連共同性の効果について、四日市判決は免責の可能性を認めるのみであるが、本判決は「寄与度不明」の場合にも同条1項後段を適用(類推適用)し、減責の可能性も認めている。
     
  ■(d)(p299) 
    その後の公害訴訟の下級審判決:
    重合的競合または累積的競合の場合における「集団的寄与度責任」

被告の数が極めて多いなどの理由で、損害発生の全部または主要部分を惹起する者を被告とすることができない場合において、被告らについて、(全損害のうち)被告らの寄与度を総計した集団的寄与度の範囲での(寄与度減責の抗弁付きの)連帯債務を課する考え方。
     
     
     
     
  ☆W 本条1項後段の責任(p301) 
  ◆(1) 総説
  ◇(ア) 
    数人の者が偶々ある他人に投石し、そのうち誰かの石が命中した場合のように、
複数者の行為のいずれも、
@それだけで損害を発生させる原因力(全部惹起力)をもち、
Aそのうち誰か1人の行為によって損害を発生させたことは明らかであるが、どの者の行為によるものか不明の場合(「択一的競合」の場合)に、
全員に連帯責任を認めることになる。
     
  ◆(2) 1項後段の適用・・・「択一的競合」行為 
  ◇(ア) 共同行為者であること 
     
  ◇(イ) 原告が特定した「共同行為者」のほかに、原告の損害をそれのみで惹起しうる行為をした者が存在しないことについて、高度の蓋然性があること
     
  ◇(ウ) 共同行為者のうちいずれの者の行為によるかを知ることができないか、または知ることができたか否か真偽不明であること 
     
  ◇(エ) 各共同行為者が因果関係以外の一般不法行為の要件を満たしていること 
     
  ◆(3) 「寄与度不明」の場合の1項後段の類推(p308) 
    A:最近の下級審判決・有力説は肯定 建設アスベスト訴訟において最高裁も採用

複数の加害行為による損害が相互に隣接、接着し、または連続しているのであり、択一的競合の事案と同様に規律されるべき。
B:立法趣旨を尊重し、この規定の適用を択一的競合の場合に限定
 
    Aが適切

@「寄与度不明」の場合に関しても、因果関係についての被害者の立証の困難な「択一的競合」(加害者不明)の場合と異ならない
A加害者であることを立証できない被害者が後段によって因果関係推定という特別の保護を受けるのに、複数の加害者を立証できたが各加害者の寄与度を立証できない被害者が因果関係の一部を推定するという保護を受けられないのは衡平に反する
     
     
     
  ☆Z 競合的不法行為(p325)
  ◆(1) いわゆる競合的不法行為概念 
    賠償の対象たる同一の損害を生じさせた行為者が複数人存在し、それらの者が行った独立の基本型不法行為(709条または717条)が偶然に競合するに過ぎない場合またはその場合における各不法行為 
     
  ◆(2) 広義の競合的不法行為概念の必要性 
  ◇(ア) 
    平井:
競合的不法行為:
基本型不法行為の要件をすべて具備している場合
訴訟法上、損害(の一部)につき事実的因果関係の及ぶことが立証されればそれだけで十分であって、原告は立証負担を果たしたことになり賠償義務が成立する
 vs.
「基本型不法行為要件」をすべて具備するのであれば、賠償を求める全損害について事実的因果関係があることを原告が立証すべきであり、損害の一部についての事実的因果関係の証明で足りるとする考え方は一種の「規範創造」である(潮見)。
vs.
平井博士のいう「基本型不法行為要件」とは、事実的因果関係を証明するにすぎず、賠償範囲についてまで証明するわけではなく、相当性の相違によって各行為者の賠償範囲が異なってくいれば、各行為者の行為の効果は当然に全額連帯とはならないのではないかとう問題(大塚)
    必要条件競合の場合(719条の関連共同性が認められない場合):
709条の効果として全額連帯責任を負わせるか否かについて争いがあるものの
損害が1個であり、
狭義の競合的不法行為となるとして全額連帯とする見解が多い
(その上で、被告は減免責の主張立証をしうるという見解と、
被告の現免責の主張立証を認めないとする見解)
    累積的競合の場合:
損害が可分であり各人の行為が損害の一部としか事実的因果関係が認められない
⇒709条を根拠とするだけでは、当然全額連帯責任ということにはならない
(重畳的競合の場合には全額連帯責任)
   
  競合的不法行為の要件・効果(p329)
    狭義の競合的不法行為:
@賠償の対象たる同一の損害を生じさせた行為者が複数人存在し
Aそれらの者が行った独立の基本型不法行為
要件を満たす場合であり、
Aについては、全損害との関係で事実的因果関係があり全損害が賠償範囲に入ることを必要とする。
効果:
各不法行為者の(不真正)連帯債務となる。
    複数不法行為者が生じさせた損害が1個とはいい難い場合、換言すれば、全損害との関係で(各行為との)事実的因果関係等が証明できない場合も含めた
広義の競合不法行為:
@賠償の対象たる損害の全部または一部を生じさせた行為者が複数人存在し
Aそれらの者が(損害の全部または一部との関係で)独立の基本型不法行為
要件を満たす場合であり、
Aについては、損害の全部または一部との関係で事実的因果関係があり、それが賠償範囲に入ることを必要とする。(潮見U201頁参照)
効果:
各行為の相当因果関係が及ぶ範囲の責任となり、これは、全部連帯、一部連帯、限度責任のいずれかとなる。
加害者の寄与度不明⇒損害が重なる範囲で719条1項後段を類推することが適当。
競合的不法行為の場合における719条1項後段の類推適用は、
弱い関連共同性がある場合の1項後段の類推適用とどのような関係に立つか?

弱い関連共同性がある場合の1項後段の類推⇒各被告の共同行為を基点として因果関係や賠償範囲が損害の全体に対して判断される。
競合的不法行為⇒個々の加害行為を基点として個別的に判断される因果関係や賠償範囲が全部又は一部共通⇒その共通する損害についてのみ1項後段の類推適用がされる(狭義の共同不法行為では、共通する損害が全損害となる)。

@競合的不法行為では、共同行為を起点とした因果関係の推定は行われず、共通する損害に対する被告らの(寄与度減責の抗弁付きの)連帯債務が課される点にのみ、1項後段類推の意味がある。
結局、寄与度不明の1項後段類推の場合には、
@(被告らに関連共同性の関係がない)競合的不法行為の場合と、
A被告らに弱い関連共同性の関係がある場合
が含まれる。
@の場合には、累積的競合事例であれば、1項後段が類推⇒各被告の部分的寄与の証明が必要となる。
     
     
     
  ◆(3) 必要条件的競合と競合的不法行為、共同不法行為 
     
    最高裁H13.3.13は、交通事故と医療事故の必要条件的競合の事案に関して「不可分1個の損害」に着目して被告らに719条の責任を認めた。
    必要条件的競合の多くの場合には一体的な侵害がある⇒それが同時・同質の侵害であれば強い関連共同性が認められることが多い。
but
異質の場合(上記最高裁の事例)には強い関連共同性は認めにくい。
異質の侵害の場合、719条1項後段類推の効果として被告の寄与度減責の抗弁を肯定する場合、必要条件的競合の場合は寄与度は証明しにくく、減責はされないことが多い。
     
  ◆(4) 平成29年民法改正と競合的不法行為の効果(p331)
   
    競合的不法行為が独立の行為者の不法行為が単に併存
⇒不法行為法の一般的な原則に従い、それぞれについて賠償すべき範囲(判例によれば、相当因果関係の範囲)で賠償され、その結果全額連帯から限度責任まで種々の場面が生じうる。 
    連帯債務か不真正連帯債務か
     
     
     
     
     
     
     
     
     
☆☆特殊不法行為の要件事実 
     
     
  ☆Y 共同不法行為の要件事実(719条) 
  ◆1 719条1項前段の請求原因 
     
     
  ◆2 719条1項後段の請求原因(p638)
     
     
     
  ◆3 抗弁(p641) 
  ◇(1) 個別的因果関係の不存在または寄与度に基づく減責・免責 
     
     
  ◇(2) 絶対的効力事由(免除) 
     
  ◇(3) 過失相殺 
     
  ◆4 再抗弁