シンプラル法律事務所
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新注釈民法(親族)

17 親族(1) 725条〜791条
 
 
     
     
     
★★第2節 婚姻の効力  
     
     
☆752(同居、協力及び扶助の義務)  
    第七五二条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
     
  ★★第3節 夫婦財産制
     
★第1款 総則  
     
     
★第2款 法定財産制
     
☆760(婚姻費用の分担)  
    第七六〇条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
  ◆T 本条の趣旨 
     
  ◆U 個別的扶養義務、特に夫婦間扶養義務(752条)との関係
  ◇1 明治民法 
  ◇2 現行法 
  ■(1) 学説 
  ■(2) 裁判例 
     
  ◆V 婚姻費用の内容と分担方法
  ◇1 婚姻費用の内容 
  ◇2 子の養育費 
  ◇3 分担方法 
     
  ◆W 婚姻費用分担額の決定の履行の強制 
  ◇1 婚姻費用分担請求 
  ◇2 婚姻費用分担の程度
  婚姻費用の分担は生活保持義務の履行⇒配偶者および子に自己と同一水準の生活を保障しなければならない。
  通説:
本条と752条の同一性を説き、
婚姻費用分担義務は婚姻が継続する限り存続。
but
請求者側の有責性や破綻別居状況を考慮すべき。
(ただし、子の養育費に関しては、常に生活保持義務を負うべき。) 
婚姻費用分担義務は、752条同居協力義務に基づく
⇒主たる別居責任が請求者側にある場合には、請求が認められないとする見解(中川(善))。

裁判例:
不貞行為があった妻からの婚姻費用請求を信義則違反あるいは権利濫用として認めないもの。
vs.
婚姻費用分担請求においては、別居についての責任の有無・程度を考慮することになれば、紛争の激化、審理の長期化を招くことになる。

有責性を考慮するより、婚姻費用が752条の協力義務に基づくものであれば、夫婦間の協力が期待できない破綻状態にある場合には、それに応じた分担の程度を軽減し、最低限生活扶助義務になるとの見解が有力(我妻、新版注民(21))。
「婚姻が破たん状態になり、当事者双方に円満な夫婦の協同関係の回復の期待と努力が欠如している場合には、その分担額もある程度軽減される」(東京家裁)
     
  ◇3 婚姻費用分担額の決定・・・算定基準 
     
  ◇4 事情変更による増額・減額請求 
     
  ◇5 履行の強制 
     
☆762(夫婦間における財産の帰属)T 本条の趣旨  
    婚姻中の夫婦財産の帰属・管理および解消時の清算を規律する夫婦財産制の規定
     
  ☆762(夫婦間における財産の帰属)U 本条の解釈論  
  ◆1 別産制説 
     
  ◆2 共有財産の範囲拡大説 
  ◇(1) 実質的共有説(種類別帰属説) 
     
    夫婦財産
第1種:名義実質ともに各自の固有財産(婚姻前からの所有財産、婚姻中無償取得した財産が含まれる)
第2種:名義実質ともに夫婦共有財産(共同生活に必要な家財・家計などを含む)
第3種:名義は夫婦一方にあるが、実質的には共有に属する財産(婚姻中に夫婦が協力して取得した不動産や預金・株券などが含まれる)
     
   
     
  ◆ 
     
  ☆762(夫婦間における財産の帰属)U 裁判例(p262)
  ◆1 判例 
    本条が別産制を採用した規定であると解している。
     
     
  ◆2 下級審裁判例 
     
     
     
☆766(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)T 民法766条の趣旨・沿革・改正の意義(p320)  
  ◆1 本条の趣旨 
     
     
  ◆2 本条の沿革
     
     
  ◆3 平成23年の民法改正の背景と経緯 
  ◇(1) 平成23年民法yの一部改正の経緯 
     
  ◇(2) 766条の一部改正の目的・趣旨 
     
  ◆4 平成23年の766条の改正の意義とその評価 
  ◇(1) 766条の改正に対する批判や改正後の運用への懸念 
     
  ◇(2) 766条改正後の自治体やNPOなどの活発な動き 
     
☆766U 監護者の指定・変更および子の引渡し(p330)  
  ◆1 婚姻中の共同親権と離婚後の単独親権の原則 
     
  ◆2 親権と監護権の分離・分属(p331) 
    A:消極説

@親権の本質は子の監護養育にあるから監護適任者を親権者に指定すべきで、親権と監護権を分離させるべき必要性はない。
A子の利益にならない。
(内田Wp133)
B:積極説

@離婚に際しての父母の親権争いで、妥協的調整的措置として利用できる
A離婚による混乱の中で落ち着くまで便宜的暫定的に父母間で親権と監護権を分ける実益がある
B2説:離婚後も父母が子の養育に共同で関与し、離婚後の単独親権の原則の弊害を是正する意味で、子の監護者制度を位置付けようとする積極説。

親権と監護権の分属により、父母双方に子の養育についての共同責任を負担していることを自覚させ、子の福祉の観点から、父母の共同養育責任と協力の必要性を強調することにより、離婚後の共同監護の可能性を模索しようとする。
    東京高裁H5.9.6:
・・・未成年者の健全な人格形成のために父母の協力が十分可能な場合には、親権と監護権を父母で分属させることも適切な場合がある。
本件では・・・否定。
   
    離婚後親権者となった母親が調停で定められた面会交流を子ども自身が拒絶していると言って応じず、試行的面会交流の際も、母親のいないところでの父子の交流な順調であったにもかかわらず、母親が「ママ見てたよ」と子どもに行った途端、長男が調査官に暴力をふるうなどした場合に、母親のマイナスの評価と子の引き込みを認定し、親権者を父親、監護者を母とする親権と監護権の分属を認めた事例(福岡家裁審判H26.12.4:判時2260)。
vs.
監護権は母親にある⇒面会交流への協力・介入・促進とはならない
事態を改善させるどころか、面会交流の円滑な実施が困難で、かえって紛争を激化させないか疑問
海外の共同養育を原則とする国々:
面会交流や共同養育への協力や相手方の親としての立場の尊重等を子の利益の一要素として考慮しており、
日本においても、実力での子の連れ去り、面会交流の許容性、相手方の親としての立場の尊重など親権者・監護者としての適格性・相当性を判断する一要素として、
必要があれば親権者を変更して、監護者としては一方を指定し、
それでも交流や教育を妨害するような場合、最後の手段として、親権を停止したり、変更したりすることは認められてもよいとする立場もある。
   
     
  ◆3 監護者指定と子の引渡しの関係 
     
     
  ◆4 第三者への監護者の指定の可否 
     
     
  ◆5 親権者・監護者指定・変更の判断基準 
    第七六六条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
     
    誰が親権者・監護者となるべきかについては、子の利益が基準となるが、
具体的には、
父母の事情:
監護能力(親族の援助や監護補助者も含む)
監護の実績(継続性)
主たる監護者
子に対する愛情
経済力(職業・収入・就労状況等)
心身の健康状態
子と接する時間
保育環境、住宅環境、教育環境、性格や生活態度、親としての適格性、
暴力・虐待・ネグレクトの有無
監護開始方法の違法性
面会交流の許容性や相手方の親としての立場の尊重
子との情緒的結びつきんど子どもの監護養育に影響を及ぼす事情
子の側の事情:
子の年齢、壊死別、心身の状況、養育環境への適応状況、監護養育環境の安定性や継続性、子の意向・心情など
が総合的に判断されることになる。
     
     
  ◆6 子の引渡し(p344) 
  ◇(1) 民事訴訟手続 
  ◇(2) 家事審判手続(家事事件手続) 
  ◇(3) 人身保護手続 
  ◇(4) 子の引渡請求の判断基準 
     
☆766V 面会交流(p356)  
     
     
     
     
     
     
     
     
     
☆768(財産分与)U  財産分与の法的性質・内容(p397)
     第七六八条(財産分与)
 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
  ◆1 清算的要素=清算的財産分与 
    婚姻中に「夫婦の協力により得た財産」(3項)を離婚の際に清算すべとするもの。
  ◆2 扶養(補償)的要素=扶養(補償)的財産分与
  ◆3 慰謝料的要素=慰謝料的財産分与 
    相手方の有責行為により、「離婚をやむなくされた精神的苦痛」に対する損害賠償を、離婚慰謝料と呼び、判例・通説がことを認める。
    判例:
婚姻中の夫婦一方により、虐待・侮辱などの身体・自由・名誉など個別の違法行為による慰謝料とは別に
有責行為により「離婚をやむなくされた」ことによる離婚慰謝料が認められるとする。
(最高裁昭和31.2.21)
but
離婚慰謝料において、有責行為自体による精神的苦痛は考慮しないとする趣旨かは明らかではない。
  学説:
離婚原因となった夫婦一方による個別の有責行為(暴力・虐待・不貞行為・悪意の遺棄など)による慰謝料(離婚原因慰謝料)と、
離婚をやむなくされたこと自体による慰謝料(離婚自体慰謝料)
とを区別し、
A:多数説(峻別説):離婚慰謝料は後者の離婚自体慰謝料を指し、離婚原因慰謝料は離婚とは別個独立した不法行為に基づく損害賠償と捉えている。
B:一体説:離婚原因となった個別有責行為の発生から、離婚に至るまでの一連の経過を、全体として1個の不法行為と捉え、離婚慰謝料には、離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料が含まれる。
裁判実務:
離婚慰謝料の請求に関して、離婚原因となる有責行為により婚姻が破綻し、離婚を余儀なくされたことを認定したうえで、離婚慰謝料として一体説に近い一括処理がなされている。
but
広島高裁H19.4.17は、
前訴で不貞行為に基づく慰謝料請求が認められた事案について、後訴における離婚慰謝料とは訴訟物が異なり、既判力は及ばない。
  離婚自体慰謝料とは何か、これを認めるべきか 
離婚原因となった個別的有責行為による慰謝料については、不法行為に基づく損害賠償と考えられており(ただし、不貞行為や悪意の遺棄といった夫婦間での義務違反、特に不貞行為をめぐっては、不法行為として慰謝料を認めるべきかについてはは議論がある。)
判例・学説は離婚自体慰謝料についても不法行為に基づくとしている。
多数説:
被侵害利益として、
同居協力扶助等の権利義務によって守らている婚姻の永続性に対する期待や、
「配偶者としての地位」
をあげ、
相手方の有責行為による離婚によってこれらが侵害され、精神的苦痛が生じる。
そもそも、離婚による精神的苦痛の内容が離婚後の生活の不安や安定的地位を失ったことにある

清算的・扶養(補償)的財産分与でカバーすべきであり、離婚慰謝料を認める必要はなく、次の財産分与との関係という議論も生じない。
尚、離婚を余儀なくされたことによる精神的苦痛というのも、当初の個別有責行為により離婚に至ったという場合の、損害の範囲の問題にすぎず、個別的有責行為についての慰謝料を認めれば足りるとする見解もある(窪田)。
     
  ◆4 離婚慰謝料と財産分与との関係 
    財産分与の法的性質:
A:慰謝料的要素が含まれるとする包括説
B:清算・扶養(補償)摘要素のみであり、有責性を前提とする慰謝料は含まれないとする限定説
判例:
離婚慰謝料請求と財産分与請求とは一応別個としつつ、
財産分与において慰謝料請求を含めて決定することも、
別個独立した離婚慰謝料を請求することも認められる。
but
離婚慰謝料についての二重請求を認めるわけにはいかない。

離婚請求に財産分与の附帯処分申立て(人訴32条1項)と離婚慰謝料の併合請求(人訴17条)の2本立て請求が行われた場合について、最高裁は、2本立て請求を認めた上で、「その場合には裁判所は財産分与額を定めるにつき損害賠償の点をその要素として考慮することができなくなる」とした。
    現在の実務上、
離婚訴訟では、離婚慰謝料は、財産分与とは別個の訴訟物として申立てられることが通常であり、
判決においても、それぞれ別個の請求に対する判断が行われる。
また、
離婚後の財産分与の審判・調停申立てに関しても、財産分与と離婚慰謝料は、別個の申立てとして扱われている。
     
  ☆768(財産分与V  財産分与の請求と決定方法(p404)
     
     
     
☆768(財産分与)W  財産分与の具体的決定基準(p408)
  ◆1 清算的財産分与の決定 
     
  ◇(1) 清算的財産分与の対象財産の範囲および基準時(p408) 
    扶養的財産分与や離婚慰謝料〜離婚時の財産状況が判断の基準
清算的財産分与〜夫婦の協力によって形成した財産を分与対象⇒夫婦の協力が終了する別居時を基準。
尚、財産評価のための基準時(協議あるいは審判時)とは異なる。
     
  ■(ア) 婚姻中に夫婦の協力により取得した財産(夫婦の共同形成財産)(p409) 
     
    婚姻中に取得した財産は、第三者からの相続・贈与(大阪高裁は、夫から妻に対する贈与財産を清算対象外とした。)などにより無償取得した財産を除き、夫婦の協力により取得した財産として、清算の対象となる。
婚姻中の有償取得財産であれば、所有名義が夫婦のいずれにあるかを問わず、また、取得・形成の経緯から特有性が明らかにならない限り、夫婦の協力により取得した財産として清算の対象となる。
(民法762条2項の共有推定⇒特有財産であることについての立証責任は特有財産であることを主張する者にある)
    婚姻中の特有府相談の売却代金による買い替え不動産にように特有財産の代償財産は特有財産のまま。
     
    婚姻中の有償取得に特有財産(婚姻前の預貯金、特有財産の売却代金など)の一部が用いられた場合⇒この部分には夫婦の協力は含まれない⇒財産取得に対する協力・寄与が問題となりうる。
A:清算対象財産の範囲の問題とするもの。
B:清算割合(寄与度)の問題とするもの。

清算対象財産の範囲(清算対象額)に関する寄与の問題と
確定した清算対象財産全体に対する清算割合を決める際のいわゆる寄与度の問題は異なり、
財産取得に対する特有財産による寄与部分(割合)を清算対象財産から除外する方法がより簡明。
     
  ■(イ) 相手方の特有財産の維持形成(p411) 
     
    一方の特有財産の維持形成に他方の維持・貢献が存在する場合、例えば、婚姻前に夫が取得していた不動産についての住宅ローンの返済を、夫婦の収入により行っていた⇒特有財産に対する協力に見合う部分(割合額)を清算対象とする場合がある。
     
     
  ■(ウ) 退職金・年金(p412) 
     
     
  ◇(2) 清算的財産分与の清算割合 
     
     
  ◆2 過去の婚姻費用の清算 
     
     
  ◆3 扶養(補償)的財産分与の決定
     
     
  ◆4 離婚慰謝料の決定 
  ◇(1) 離婚慰謝料(慰謝料的財産分与) (p421)
     
    離婚慰謝料(離婚をやむなくされた精神的苦痛による慰謝料)は離婚原因慰謝料(離婚原因となった個別有責行為による精神的苦痛による慰謝料)とは一応区別されるものの、裁判例においては一体的に判断される。
裁判例においては、一体的に判断されている。
判例・通説:
離婚による精神的苦痛の発生自体は認めているが、婚姻破綻による精神的苦痛は離婚原因慰謝料に含まれており(広島高裁H19.4.17)、それ以外の離婚によって無籍配偶者が感じる苦痛や精神的不安定の中味ははっきりしない。
学説:
社会的評価の低下、婚姻生活に対する期待感の侵害、将来の生活不安、子を手放すことによる心痛などが挙げられている。
vs.
将来の生活不安は財産分与によって解消すべき⇒それ以外の点を今日でも考慮すべきかは疑問。
    判例よる離婚慰謝料の中味は、婚姻破綻による精神的苦痛が中心となっており、離婚自体慰謝料の独自性は少ない。
(東京高裁昭和51.10.29は、自ら離婚を望んだ妻について、離婚の結果生じる精神的苦痛は、離婚が認容されることにより十分慰謝されるとして、離婚慰謝料を否定した。) 
     
  ◇(2) 離婚慰謝料決定の考慮事由 
    離婚慰謝料の具体的算定:
慰謝料額の決定自体が裁判官の裁量に委ねられている。
考慮事由:
有責行為の種類と態様、
有責性の程度、
婚姻期間や年齢、
当事者双方の資力や社会的地位等
未成熟子の存在
    東京家裁における離婚訴訟における離婚慰謝料の動向として、慰謝料請求がなされる事案は多いが、認容される事案は多くはない(認容率37%)。
認容された事案の多くは不貞および暴力に関する事案であったとされる。
     
  ☆768(財産分与)X  離婚時年金分割制度(p423)
     
     
     
     
     
     
☆770 T 本条の意義  
    第七七〇条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
☆770 V  
     
     
  ◇(2) 悪意の遺棄(本条1項2号)(p455)
  ■(ア) 意義 
    「配偶者から悪意で遺棄されたとき。」
    「悪意」:婚姻共同生活の廃絶を企図し、またはこれを認容する態度
〜社会的倫理的に非難に値すること
    「遺棄」:夫婦の同居・協力・扶養義務(752条)に違反してこれを履行しないこと。
     
  ■(イ) 他の離婚原因との関係 
    本条と5号が同時に主張されることは多く、5号との関係は流動的。
     
  ■(ウ) 「悪意の遺棄」該当性 
    妻が夫との協議を十分にしないまま、自己のわがままから勝手に実家に帰ったという場合に、
別居の事実をふまえつつ、「結婚生活を廃絶する意思」までは認められないとして、「悪意の遺棄」にはあたらないとした事例(京都地裁)。
     
     
     
     
     
☆770(裁判上の離婚)W 抽象的離婚原因(本条1項5号)(p467)
  ◇(1) 意義 
    「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」

「婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態」
     
  ◇(2) 他の離婚原因との関係 
     
  ◇(3) 「離婚を継続し難い重大な事由」該当性 
  ■(ア) 暴行・虐待(p470)
     
     
  ■(イ) 重大な侮辱(p471) 
     
  ■(ウ) 不労・浪費・借財(p471) 
     
  ■(エ) 犯罪行為(p472) 
     
  ■(オ) 宗教活動 
     
  ■(カ) 親族との不和 
     
  ■(キ) 性生活の異常 
     
  ■(ク) 性格の不一致・価値観の相違(p474)
     
    婚姻破綻の有無を判断するにあたっては、
別居期間の長さ、原告配偶者の離婚の決意や相手方配偶者の婚姻継続意思の程度などが相関的に考慮されるほか、
子の意向が斟酌されることもある。
夫婦の別居が5年を超える⇒原告配偶者に強い離婚意思が認められると離婚請求が認容される事例が多い。
別居期間がそれ(5年)より短い⇒
事情によっては子の意向も斟酌しつつ、
相手方配偶者に真摯な婚姻継続意思があるかが問われ、
相手方に関係修復に向けた十分な努力がみられない⇒離婚が認められる
相手方配偶者が強く離婚を拒んでいる⇒請求を棄却
する事例も見られる。
     
    いわゆる会社人間であった夫が妻に対して自分と家庭を支えるように求めてきた⇒妻は、そうした生活について、不満、負担を感じるようになり、ついには離婚を求めた。
結婚後の生活は40年。

第1審(横浜地裁相模原支部H11.7.30、時報1708号):
家庭内別居7年、妻が自宅を出てから2年近くになる。
夫は離婚に反対の意向を表明するものの、関係修復への行動をとろうとしてこなかった。
⇒妻の離婚請求を認容。

控訴審(東京高裁H13.1.18):
子らの意向も斟酌
夫には相応の社会的経験があり、良識に従った対応ができる
⇒和合のための努力が試みられるべきであるとして、妻の離婚請求を退けた。
    夫婦の別居が約1年にすぎない
but
妻に夫の心情を深く傷つける言動があるなど、妻が有責と考えられる事案で、夫からの離婚を肯定(大阪高裁H21.5.26)。
夫からの離婚を求めている事案で、
婚姻破綻は夫の独善的かつ独断的行為に起因することが窺える⇒請求を退けた事例(最高裁昭和38.6.7)。
     
     
☆770X 有責配偶者からの離婚請求(p477)
  ◇(1) 判例法理の生成 
     
  ◇(2) 判例の変更 
     
     
    有責配偶者からのされた離婚請求であっても、
@夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、
Aその間に未成熟子が存在しない場合には、
B相手方が配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、
当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないものと解するのが相当。
     
     
     
  ◇(3) その後の判例の展開(p481)
     
  ■(ア) 夫婦の相当長期間の別居 
     
    別居30年、22年、16年
〜両当事者の年齢や同居期間と「対比するまでもなく」絶対的に長期と評価されている。
but
別居期間がそれ以下
⇒長期か否かの判断は相対的となり、同居期間はもとより、相手方配偶者の有責性も考慮。
別居10年3か月(同居1年11か月)、9年8か月(同居17年2か月)では相当の長期の別居と評価される事例がある一方、
別居8年余(同居約22年)では相当の長期と評価せず、離婚請求を退けた。
別居期間は10年程度が許容の目安とされているとも評される。
     
     
  ■(イ) 未成熟子の不存在 
     
     
     
  ■(ウ) 特段の事情の不存在