シンプラル法律事務所
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信託に関する犯罪(西田典之)

信託に関する犯罪・・・受託者の信託違反行為と刑事責任
  ◆(1) はじめに
  ◆(2) 受託者にかかわる犯罪
  ◇a 受託者の信託違反と背任・横領の成否
  ■@信託の構造論・性質論との関係 
  債権説:信託行為により信託財産の所有権は受託者に移転⇒受託者は信託目的に従って信託財産を管理・処分する債務を受益者に対して負っているのみ。

管理信託の場合のように信託財産の処分権限を有しない受託者が信託財産を信託目的に反して処分しても、自己の所有する他人の物の処分には当たらず、横領罪は成立しない。
信託目的に従った事務処理は、刑法上の「他人の事務処理」に含まれる⇒背任罪が成立する場合がある。 
  実質的法主体説:
⇒横領罪成立
     
  ■A判例の立場 
  □(ア) 背任罪を認めたもの 
     
  □(イ) 横領罪を認めたもの 
     
  ■B小結論 
    刑法上は所有権の帰属をもって判断。
    信託財産を実体的法主主体として、わが国の刑法上直ちに自己(受託者)の占有する他人(受益者)の物というべきかは疑問。

信託法は、信託財産に一定の独立性を与え、また受託者の信託違反の処分行為があった場合に、受益者は悪意・重過失の第三取得者に対して追及していくことができる。
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受益者に所有権が帰属しているわけではない⇒刑法上信託財産の背後にある受益者との関係で横領罪が成立すると解することには疑問が残る。
     
    刑法上は受託者に所有権があるものとして、かかる信託違反行為は原則として背任罪を構成すると解すべき。 
     
  ◇b 善管義務・忠実義務違反と背任罪 
  ■@ 善管義務違反 
     
  ■A 忠実義務違反 
    忠実義務:受託者はもっぱら受益者の利益(実質的法主体説からは、一時的には信託財産の利益)のためにのみ行動すべきことを内容とするもの。
@信託財産の利益と受託者個人の利益が衝突するような地位に身を置いてはならない
A信託事務の処理に際して自ら利益を得てはならない
B信託事務の処理に際して第三者の利益を図ってはならない