シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室 【地図】
TEL(06)6363-1860 mail:
kawamura@simpral.com 


信託法(道垣内)

★第1章 総論
 ☆第1節 信託法の存在理由
  ◆1 信託法2条1項
  ◇(1) 信託法2条1項 
    委託者
受託者
受益者
     
  ◇(2) 「信託」であるとされるための要件 
    ①一定の財産が存在し、それが受託者に帰属
②達成すべき目的(受託者自らの利益をもっぱら図る目的を除く)が定められていること
③受託者、②で定められた目的に従って、当該財産につき、管理・処分など、その目的に必要な行為をする義務を負うこと。
   
  ◆2 旧信託法の立法過程における説明 
  ◇(1) 司法省の説明 
     
     
     
     
  ◆5 共時的な分析(p17) 
  ◇(1) 利益帰属権利者に物権的救済を認めるための法制度
    利益帰属権利者に所有者と同様の物権的救済を認めるために、受託者の有する他の財産から分離した財産(信託財産)を作り上げるということにある。
     
  ◇(2) 利益帰属権利者の財産からの分離 
    信託の本質を、所有権等に基づく救済が利益帰属権利者に認められない場合でも、なお類似の物権的救済を認めるという点に求める⇒「利益帰属権利者の財産からの分離」は、利益帰属権利者に所有権等に基づく救済を認め得ない、という消極的要件にすぎないことになる。
     
  ◇(3) 財産権帰属者の義務 
    信託の成立を認めるべき場合とは、l
信託財産に属する財産についての財産権が、受託者にあたかも帰属していないような状態にある場合
受託者が純粋な財産権帰属者として行動できず、そこからの利益を得られないところに信託の本質があり、だからこそ、当該財産が、受託者に帰属する財産のうちで分離され、特別扱いされることになる。
    but
受託者は、あくまで、信託財産に属する財産についての財産権帰属者⇒たとえば信託財産が処分されるとき、その主体は受託差hとなる。
⇒このような場面における受託者の義務が、信託の本質に反しないように定められなければならない。
     
☆第2節 信託の基本構造と解釈指針  
  ◆1 信託の基本構造 
    信託の特徴:財産の分離と関係者の権利義務の柔軟化。
     
     
  ◆2 信託法の解釈指針 
     
     
  ◇ 
     
  ◆3 信託の分類と解釈指針 
   
     
  ◇(3) 
    ①「信託=財産処分モデル」:
財産処分のプロセスや最終的配分方法などの点で、財産処分社の細かな希望に従った処分を行うために用いる。
委託者の意思が財産処分についての設計図(エステイト・プランニング)として重視されるが、受益者の利害との調整を図る必要がある。
他方、受託者の利益との調整を図る必要性は大きくない。
    ②「信託=契約モデル」:
委託者と受託者が交渉し、信託目的や信託財産の管理処分方法を合意する信託であり、基本的には契約と同じに考えてよい。
    ③「信託=制度モデル」:
法人の設立に類似するかたちで信託を設定するものであり、いったん設定されると、委託者・受託者の意思は、信託目的や信託条項の中に客観化・制度化され、もはや信託設立の関係者の単なる合意ではこれを変更できなくなる点に特徴がある。
     
★第2章 信託の設定  
 ☆第1節 序説 
  ◆1 信託法3条の定め 
    信託法 第二条(定義)
 この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
   第三条(信託の方法)
信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法
    信託法2条1項:
この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
次条各号に掲げる方法:
①委託者となる者Sが、受託者となる者Tとの間で、SからTにある財産を処分する旨、および、Tが、一定の目的に従い、財産の管理や処分など、その目的達成に必要な行為をする義務を負う旨を定める契約を締結。
②Tに対しある財産を処分する旨、および、Tが一定の目的に従い、財産の管理や処分など、その目的達成に必要な行為をする義務を負う旨を内容とする遺言をSがするという方法。
③Sが、自己の有する一定の財産について、自らの受託者T(=S)とし、一定の目的に従い、財産の管理や処分など、その目的達成に必要な行為を自らで行う旨の意思表示をするという方法。
   
  ◆2 3つの方法 
    ①信託契約による方法、②遺言による方法、③信託宣言による方法。
    信託法2条1項

信託設定のためには、
α:当初信託財産の受託者への帰属
β:信託目的の設定
γ:受託者の信託財産管理等の義務の設定
の3要素が、いずれの方法による信託設定についても必要。
     
 ☆第2節 共通の要件(p30)
  ◆1 当初信託財産の受託者への帰属 
  ◇(1) 信託財産の必要性 
    実体法としての信託法:
信託財産が存在し、その「財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき」義務を受託者が負う場合のみを「信託」と呼称、。
  ◆2 信託目的の設定 
     
  ◆3 信託設定意思:受託者の信託財産管理等の義務の設定 
  ◇(1) 信託設定意思の必要性 
信託法2条1項:
受託者が「財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすること」
~この要素が存在しなければ、信託法上の信託ではない。
  ◇(2) 信託設定意思の内容(p54)
信託法:信託財産について財産権そのものは帰属していないが、利益が帰属している者。
すなわち受益者に対して物権的な救済を認めるための法律。

受託者にとって信託財産があたかも自分に帰属していない状態にある。
受託者は純粋な財産権帰属者としては行動できず、そこからの利益は得られない。

このような状況を作出する意思が、信託の中核的効果を有する法律関係を創設する意思、すなわち信託設定意思であり、そのような意思が信託の設定にあたり、委託者に存することが必要。
  ◇(3) 受託者の義務設定 
受託者が純粋な財産権帰属者としては行動できず、そこからの利益は得られない状況は、受託者の義務の設定によってもたらされる。
  ■(ア) 善良な管理者の注意 
信託法29条2項本文:
受託者に、善良な管理者の注意をもって信託事務処理を行うべきことを定めている。
そのただし書は、注意基準について信託行為の別段の定めを置くことを認めている。
←注意水準を下げたからといって、それだけでは、受託者が信託財産から利得することにはならない。
but
軽減された注意水準に沿った行動が行われなかった場合の損失てん補義務が完全に排除されていれば、委託者に信託設定意思はなく、そもそも信託ではない。
←受託者は信託財産から利益を得ても責任を問われず、結局、受託者が信託財産に属する財産を自由に扱える。
  ■(イ) 利益相反行為の制限 
     
    何らの限定なく利益相反行為が可能な仕組み⇒受託者が自らの完全な所有物として、そこからの利益を受け得る仕組みになっているというべきであり、委託者に信託設定意思はなく、その法律関係は信託ではない。 
     
  ■(ウ) 分別管理義務 
     
  ◆4 受託者の資格 
     
  ☆第3節 信託設定の3つの方法 
     
     
     
     
     
     
★第3章 信託財産と受託者による取引のメカニズム(p79)
 ☆第1節 受託者による信託事務処理 
  ◆1 受託者の行為 
  ◇(1) 受託者の行為の区別 
  信託契約や遺言(受託者が引受けをしたとき)によって信託が設定されたときには、定められた受託者は
「一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為」をすることを合意し、または引き受けたのであり、また、
自己信託の場合には、・・・

当該合意・引受け・宣言を根拠に、「受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない」(29条1項) 
    「信託の本旨に従い」⇒受託者の義務の問題として後述。
    「信託事務を処理する」:
受託者の地位の二面性が関係:
会社の代表者:会社のために取引を行うが、会社には法人格があり、代表者は会社の代理人として行動し、代表者Aが「X社代表取締役A」として銀行から借入れをすると、債務者はX社になる。
信託財産には法人格がない⇒甲信託の受託者Tが銀行から借入れをすると、甲信託の受託者として甲信託のために行動していても、債務者はTとなる。
銀行は、債務者がT⇒Tに対する債務名義を取得し、Tの固有財産に属する財産を差し押さえることができる。
but
その借入れが信託事務処理としてされているときには、借入れた金銭は信託財産に属する財産になるし、貸し手である銀行は、Tの固有財産に属する財産とともに、信託財産に属する時亜さんも差し押さえ得ることになる。
Tは、その借入金の返済を信託財産に属する財産をもって行うことができるし、固有財産に属する財産によって返済を行ったときは、信託財産からその償還を受けることができる。
~そのプラス・マイナスが信託財産に帰属する。
but
Tは、自らの必要のために自らのために借入れをすることもある。
~借入れた金銭はTの固有財産に属し、その引き当てになるのはTの固有財産のみ。
     
  ◇(2) 信託のためにする意思
     
  ◇(3) 受託者の権限範囲 
     
    第二六条(受託者の権限の範囲)
受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない
     
     
  ◆2 権限外行為の扱い(p85)
  ◇(1) 相手方保護の扱い 
     
  ◇(2) 受託者の固有財産に効果を帰属させうるタイプの行為がされた場合の規律 
     
  ◇(3) 信託財産に属する財産を直接に目的とする取引がされた場合の規律 
     
  ◇(4) 取消権の行使とその効果 
     
  ◆3 信託のためにする意思のない行為の扱い
  ◇(1) 競合行為の禁止 
     
  ◇(2) 介入権 
     
  ◆4 受託者が複数の場合 
     
     
 ☆第2節 管理・処分による信託財産の変動(p105) 
  ◆1 信託財産の変動要因 
     
    受託者が、信託のためにする意思を有して、その権限内で行為をし、ある財産を取得⇒それが信託財産に属するのは当然。 
①受託者が、信託のためにする意思を有して、その権限に反した行為をし、取得した財産。
②受託者が、信託のためにする意思を有さないで、その権限内に属する行為をし、取得した財産。
③受託者が、信託のためにする意思を有さないで、その権限内に属する行為をし、取得した財産。




⑧信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産。
   
     
     
     
     
     
★第4章 受託者の義務と責任  
 ☆第1節 受託者の信託事務処理義務と第三者への委託 (p176)
  ◆1 信託事務処理義務 
  ◇(1) 受託者の義務の源泉 
     第二九条(受託者の注意義務)
 受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない
2受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。
    具体的な内容は、信託行為の解釈によって決まる。
     
  ◇(2) 信託の本旨
    「信託の本旨」=
「当該信託によって達成しようとした目的」

個々の信託ごとに当該信託の信託行為の解釈によって具体的な内容は決定される。
信託行為の文言の形式的な解釈によるのではなく、当該信託が設定された目的を達成するように信託事務を処理する義務を負う、ということを強調。
     
     
  ◇(3) 善良な管理者の注意 
  ■(ア) 29条2項 
    信託法29条1項によって、信託の本旨に従って行為義務が定まり
当該行為義務の履行にあたっての注意水準が同条2項によって定まる
vs.
行為義務の具体的内容は、そこで求められる注意水準によって定まる。

「善良な管理者の注意」という概念が、信託事務執行にあたって行われるべき具体的な行為内容を決定する基準として作用する。
     
  ■(イ)  
    善良な管理者の注意という注意水準:
個々の債務者の具体的な能力と切り離して、客観的義務内容を定めるものであり、民法上、債務不履行・不法行為を通じた原則的な注意水準。
    ポイントは客観的な基準であって、主観的基準ではないということ。
     
    理論的には、善良な管理者の注意をもっていする信託事務執行義務に含まれるものであっても、
公平義務(33条)
分別管理義務(34条)
信託事務の委託における第三者についての選任・監督義務(35条)
報告義務(36条)
帳簿等の作成・報告等の義務(37条)
のように、特別の規定が置かれているものもある。
     
     
     
  ◆2 第三者への委託(p189) 
     
     
   
     
  ◆3 第三者委託の場合の受託者・第三者の責任(p197) 
     
     
     
     
☆第2節 公平義務 (p201)
  ◆1 同一信託の受益者間の公平 
     
  ◆2 複数の信託間の公平 
     
     
 ☆第3節 分別管理義務(p203)
  ◆1 総説 
  ◇(1) 信託法の規律 
    受託者は、信託財産に属する財産につき、自らが利益帰属権者として行動することはできず、受益者の利益のために、それについて管理・処分等をすることになる。
⇒分別管理義務(34条)。
     
  ◇(2) 趣旨 
     
     
 ☆第4節 報告義務・帳簿等作成義務と検査薬の選任 
  ◆1 総説 
     
◆2 報告義務 
     
  ◆3 帳簿等作成・報告義務 
     
  ◆4 他の受益者の氏名等の開示請求(p215) 
     
  ◆5 検査薬の選任 
     
     
 ☆第5節 忠実義務(p219)
  ◆1 忠実義務に関する規定の構造 
    第八条(受託者の利益享受の禁止)
受託者は、受益者として信託の利益を享受する場合を除き、何人の名義をもってするかを問わず、信託の利益を享受することができない。

第三〇条(忠実義務)
受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない
    受託者はもっぱら受益者の利益を図らねばならず、信託事務の執行において、自己の利益を図ってはならない。

ある法律関係が「信託」と呼称され、一定の法的効果を付与される根拠となっており、ここに示される忠実義務は、受託者の義務として信託の基本におかれるべきものである。
    具体的な例として、
利益相反行為の制限(31条)
競合行為の制限(32条)
    信託法8条が直接に働く場合:
同法30条は、受託者の行動をコントロールするもの。
but
設定される信託のスキームが、受託者を受益者の1人とすること以外の方法によって、受託者の利益を図るかたちになっているときで、しかし、「専ら」受託者の利益を図る目的のもの(同2条1項)(そのような目的の存在が認められれば、当該信託は不成立または終了となる。)とまでは言えないときは、同法8条に反する信託として無効となると解すべき。
     
  ◆2 利益相反行為の制限 
  ◇(1) 利益相反行為の原則的禁止:総説 
  ■(ア) 
    利益相反行為:一方のプラスが他方のマイナスとなるとうい関係にあること。
   
  ◇(2) 各類型への該当性
     
     
  ◇(3) 利益相反行為が許容される場合(p226) 
     
  ◆3 競合行為の禁止 
  ◇(1) 原則的な禁止 
     
  ◇(2) 競合行為が許容される場合 
     
  ◇(3) 受託者の通知義務 
     
  ◇(4) 競合行為の範囲(p240) 
     
  ◇(5) 禁止される競合行為の効果 
     
  ◆4 一般的忠実義務 
  ◇(1) 総説 
     
  ◇(2) 一般的忠実義務違反の具体例 
     
     
     
     
     
 ☆第6節 義務違反に対する受託者の責任p252
  1 総説 
    受託者の義務違反に対する受益者の救済方法
①受託者の権限違反行為の取消し
②禁止された利益相反行為の無効・取消し
③競合行為についての介入権
④受託者の損失てん補の責任等
⑤受託者の行為の差止請求権
     
  ◆2 受託者の損失てん補の責任等(p252)
  ◇(1) 信託法40条の適用範囲 
     第四〇条(受託者の損失てん補責任等)
 受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第二号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。
一 信託財産に損失が生じた場合 当該損失のてん補
二 信託財産に変更が生じた場合 原状の回復
   
信託財産について損失をてん補し、または、原状を回復すれば償いうる違反についての責任を定めるものであり、それ以外の場合には適用されない。
具体的には、受託者の善管注意執行義務違反(29条)だけでなく、第三者委託に関する義務違反(35条)、忠実義務違反、分別管理義務違反の場合にもて適用される。
     
  ◇(2) 責任の性質 
     
    信託法40条の責任の債務消滅時効期間については、同法43条によって債務不履行による損害賠償請求権に準じる扱い⇒受託者の受益者に対する義務違反に基づく債務不履行。
but
債務不履行席㊞とされていたとしても、損失てん補責任の範囲が民法416条で画されることは当然ではない。
請求権の期間制限について、不法行為である性格も加味されている。 
     
  ◇(3) 請求権者 
     
  ◇(4) 要件 
  ■(ア) 
    ①:受託者による任務懈怠
②:信託財産に損失または変更が生じた
③:②が①によって生じた
     
  ■(イ)「受託者がその任務を怠ったこと」(p256) 
  □(a) 
   
    信託法40条1項に類似した会社法423条1項につき「任務を怠った」というのは客観的な義務違反を意味し、故意または過失とは別次元の概念だと解する見解。 
    会社法 第四二三条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
     
  □(b)
    善管注意執行義務違反の場合:
善良な管理者の注意に基づいた信託事務執行をしなかったことが、任務懈怠であり、過失ともなる
⇒区別の必要なし。
     
  □(c) 
     
  □(d) 
    忠実義務違反について、
一般的忠実義務違反(信託30条)は、受託者が、受益者の利益の犠牲のもとに、自己または第三者の利益を図る意思をもって行為していることを義務違反の要件と考えるべき⇒帰責事由が必要か否かの問題は生じない。
  □(e) 
     利益相反行為制限について:
    信託法 第三一条(利益相反行為の制限)
受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。
二 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を他の信託の信託財産に帰属させること。
三 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの
四 信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの

2前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第二号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。
一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。
二 受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。
三 相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。
四 受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。
     
    受益者:客観的な義務違反状態のみを立証すれば足り、帰責事由の不存在(善良な管理者の注意に基づいて判断したこと)は受託者の側で立証。
     
  □(f) 
    受託者が権限違反行為をしないようにする義務:善管注意執行義務
権限違反行為の取消し(27条)についてゃ、受託者に帰責事由は不要。
     
  ■(ウ) 信託財産に損失または変更が生じたこと 
    「損失」:義務違反がなければあったはずの状態と比較して、信託財産の価値が低くなっていること。
     
     
  ◇(5) 因果関係(p259) 
     
     
     
  ◆3 忠実義務違反における損失額の推定(p265) 
  ◇(1) 総説 
     
  ◇(2) 適用範囲 
     
  ◆4 法人である受託者の理事等の連帯責任 
     
  ◆5 損失てん補責任等の免除・消滅時効 
     
  ◆6 受益者による受託者の行為の差止め 
    第四四条(受益者による受託者の行為の差止め)
 受託者が法令若しくは信託行為の定めに違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

2受託者が第三十三条の規定に違反する行為をし、又はこれをするおそれがある場合において、当該行為によって一部の受益者に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
     
     
     
     
  ◆7 費用または報酬の支弁等 
     
     
     
☆第7節 受託者の費用償還請求等(p278)
  ◆1 信託財産からの費用償還 
  ◇(1) 総説 
    信託事務の処理において、第三者に対して債務を負う⇒受託者はその債務の債務者になる。
     
  ◇(2) 費用支出後の償還請求 
  ■(ア) 要件 
  ■(イ) 効果 
   
  ◇(3) 費用の前払請求 
     
  ◇(4) 償還および前払の方法 
     
     
  ◆2 受益者からの費用償還 
     
  ◆3 信託報酬 
     
     
  ◆4 信託財産からの損害の賠償 
     
     
     
     
 ☆第8節 受託者の変更(p290)
  ◆1 受託者の任務終了 
     
     
     
  ◇(4) 受託者の解任 
  ■(ア)
    信託行為に受託者の解任についての定めあり⇒解任できる(58条3項)
     
  ■(イ) 委託者が現存しなくても、また、現存する場合に委託者と受益者との間の合意が調達できなくても、受託者が任務違背によって信託財産に著しい損害を与えたことなど、「重要な事由」がある
⇒委託者または受益者は、裁判所に受託者の解任を求める申立てができる(58条4項、5~7項)。 (p259)
     
     
     
     
★第5章 受益者と受益権(p309)
☆第1節 総説  
  ◆1 定義
    受益者:受益権を有する者をいい(法2条6項)
受益権とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対して負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(「受益債権」)
及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利(同条7項)
 
     
  ◆2 受益者の位置付け(p310)
  ◇(1) 利益享受主体としての受益者 
    受益者:信託財産からの利益を受ける主体
    受託者:信託財産の権利帰属者でありながら、信託財産からの利益を受けることができない。
    目的信託を除き、受益者の存在は、その者が利益の帰属者となり、受託者に利益を帰属させないという機能を有している。 
     
  ◇(2) 受託者の行為基準としての受益者の利益 
    受益者の利益を図ることが受託者の義務となり、受益者は、受託者の信託事務執行の基準となるという機能を有している。
     
  ◇(3) 受託者の監督者としての受益者 
    受益者は、受託者などの事務執行が適切か否かを監視する権利を有する。

自らの利益を守るための権利であるとともに、その結果として、受益者は信託目的の達成のために重要な役割を果たすことになる。
     
☆第2節 受益者の決定  
  ◆1 受益権の取得 
     
     
  ◆5 受益者の権利・義務(p328) 
  ◇(1) 総説
    受益者:信託財産に係る給付を信託行為に従って受けることができる。
この受益者の権利=受益債権(2条7項)
     
  ◇(2) 受益者の権利の権能 
  ■(ア) 4つの権利 
    ①権利行使の前提として自らの地位に関係する情報を取得する権利
②信託の目的の達成のために信託事務処理を進めるための権利
③受託者などの事務執行が適切か否かを監視し、自らの利益を守るための権利
④自己固有の利益を守るための権利
  ■(イ) 第1:権利行使の前提として自らの地位に関係する情報を取得する権利 
     
     
  ■(ウ) 第2:信託目的の達成のために信託事務処理を進めるための権利 
  □(a)  
     
  □(b) 受益者が単独で信託財産を守る権利が認められるときがある。 
    信託財産に属する財産に対する強制執行等・国税滞納処分に対する異議申し立権(23条5項・6項)
     
  □(c) 
    受託者等の解任(58条1項(134条2項、141条2項、251条によって準用))
     
  □(d) 
     
     
     
  ■(エ) 第3:受託者などの事務執行が適切か否かを監視し、自らの利益を守るための権利 
  □'(a) 受託者等から一定の事項につき報告・通知を受ける権利 
     
  □(b) 以上のような通知・報告を受け、利益相反行為等を承認・追認することができる。(p332) 
     
  □(c) 受託者が適切な信託事務執行を勧めないとき 
    ⇒受託者の解任の手続
     
     
  ■(オ) 第4:受益者が、自己固有の利益を守るために認められている権利 
     
  ◇(3) 受益者の義務 
     
     
 ☆第3節 受益権等 
     
     
 ☆第6節 信託管理人等 
     
     
  ◆4 受益者代理人(p375) 
     
     
     
★第6章 委託者  
  ◆1 信託設定後の委託者 
     
    理論的に考えても、信託が成立してしまえば、委託者はもはや不可欠の存在ではない。
受託者が信託事務を執行し、受益者が利益を取得すればよい。
     
  ◆2 委託者が原則的に有する権利 
     
     
  ◆3 信託行為の定めにより認められる権利 
     
     
  ◆4 委託者の地位の移転 
     
  ◆5 委託者の地位の相続 
     
     
     
★第7章 信託の変更・併合・分割  
 ☆第1節 信託の変更 
  ◆(1) 総説
     
  ◆(2) 関係当事者の意思による変更 
  ◇(ア) 三者の合意 
     
  ◇(イ) 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 
     
     
     
     
     
★第8章 終了・清算・倒産  
☆第1節 信託の終了(p427)
  ◆1 総説 
     
  ◆2 公益確保のための信託終了命令以外の事由による終了
     
  ◇(3) 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとこ(163条3号) 
     
     
  ◇(10) 特別の事由による信託終了を命じる裁判があったとき(165条1項、163条6号) 
    信託を終了することが信託の目的および信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合するに至ったことが明らかであるとき⇒委託者、受託者、受益者の申立てにより、裁判所は信託の終了を命じうる。
     
  ◆3 公益確保のために信託終了を命じる裁判による終了 
     
☆第2節 信託の清算  
  ◆1 信託の存続 
     
     
  ◆2 清算受託者の職務と権限 
  ◇(1) 職務
     
     
  ◆3 清算の終了 
  ◇(1) 最終計算義務 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★第9章 罰則