シンプラル法律事務所
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債権各論T(潮見)

  ★第1章 契約の基本原則
◆    ◆1.1 私的自治の原則と契約自由の原則 
     
     
     
     
     
★第2章 契約の成立  
◆    ◆2.1 合意による契約の成立 
     
     
     
     
     
     
     
     
★第4章 契約の解除と危険負担  
     
     
     
  ◆4.2 解除制度の目的・・・債務不履行を理由とする解除の場合 
  ◇4.2.1 債権者を契約の拘束力から解放すること
    旧民法:解除が債務者に対する責任追及手段⇒債務者の帰責事由(債務者の責めに帰すべき事由)が必要。
    現民法:解除は、債務不履行をされた債権者を「契約の拘束力」から解放するための制度
     
  ◇4.2.2 解除制度の目的から帰結 
  ■(1) 債務者の規制事由は不要 
   
  ■(2) 重大な契約違反 
     
     
  ◆4.3 解除権の発生障害・・・債権者の責めに帰すべき事由による債務不履行 
    債務不履行を理由として契約の解除をすることがでない(民法543条)。

この場合は、債務不履行のリスクは、これについて帰責事由のある債権者が負担すべき⇒債務不履行を理由に「契約の拘束力」から離脱する権利を債権者に与える必要はない。 
     
     
     
  ◆4.5 無催告解除 
  ◇4.5.1 基本的考え方・・・契約目的達成不能を理由とする解除 
     
  ◇4.5.2 無催告解除が認められる場面 
    民法452条1項
    @債務の履行の全部が不能であるとき(1号)
A債務者がその全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき(2号)
B契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合(定期行為)
C債務者がその債務の履行をせず、債権者がその履行の催告をしても契約をした目的と達するのに足りる履行がされる見込がないことが明らかであるとき(5号)
     
  ◆4.9 危険負担(p64) 
  ◇4.9.1 ここまでの説明を受けて・・・双務契約における解除制度の意義
    解除は、双務契約の場面では、債権者を反対債務から解放する制度。
     
  ◇4.9.2  
     
     
     
★第9章 使用貸借  
  ◆9.1 
     
     
     
     
  ◆9.5 使用貸借の終了 
  ◇9.5.1 使用貸借の終了事由 
     
  ◇9.5.4 当事者の死亡による終了 
  ■(1) 借主の死亡による終了・・・使用借権について相続なし
    使用貸借は、借主が死亡することによって終了(民法597条3項)
使用借権は相続されない

使用貸借では貸主が借主その人を考慮し、借主その人に対して無償で貸与⇒借主が死亡した場合には使用貸借は終了し、相続人に承継されるべき。
but
民法597条3項は任意規定⇒これと異なる合意は有効。
個々の事案で借主側の居住利益・生存利益を考慮したとき、貸主からの借主死亡による使用貸借終了に基づく目的物返還請求が権利濫用とされる場合がある。
     
  ■(2) 貸主が死亡した場合 
    特約がなければ使用貸借の存続に影響はない。
     
  ◆9.6 使用貸借終了後の法律関係 
  ◇9.6.1 目的物返還義務 
  使用貸借契約終了⇒借主は、目的物を貸主に返還しなければならない。

使用貸借契約に基づいて発生する義務。 
  ◇9.6.2 原状回復義務 
     
  ◇9.6.3 借主の収去義務・収去権 
  ■(1) 借主の収去義務(貸主の収去請求権) 
   
   
  ■(2) 借主の収去権
     
※居住用建物の所有者の同居人による建物無償使用と、使用貸借契約の成立 
    Aが所有している甲建物に、子Bが同居。
Aには、ほかに子C、D、Eがいた。
A死亡⇒BCDEが相続。
CDEは、
@Bを甲建物から退去させられないか?
ABが甲建物を無償で使用しているため、Bに対して適正賃料相当額を不当利得として請求できないか?
●@甲建物の明渡請求:
否定(判例)

共同相続に基づく共有者の1人であっても、
その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(少数持分権者)は、他の共有者の協議を経ないで当然に共有物を単独で占有する権限を有するものではないけれども、
この少数持分権者は「自己の持分によって、共有物を使用収益する権限を有し、これに基づいて共有物を占有する」

他のすべての相続人の共有持分の合計価格が共有物の価格の過半数を超えるからといって、共有物を現に占有する少数持分者に対し、当然にその明渡しを請求することができるものではない。
●A甲建物の無償使用を理由とする不当利得返還請求:
判例(最高裁H8.12.17):
被相続人死亡により成立し遺産分割終了まで存続する使用貸借契約の余地を認め、その限りで、この間の賃料相当額の不当利得の成立を否定。

建物が右同居人の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであった⇒遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償により使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致。

共同相続人の1人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認される⇒被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになる。
◎BがAの内縁配偶者で、甲建物はAとBの共有で、Aの共同相続人がAの子CDEであった場合?
最高裁H10.2.26:
共有者間の合意により共有者の1人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合には、右合意により単独使用を認められた共有者は、右合意が変更され、又は共有関係が解消されるまでの間は、共有物を単独で使用することができ、右使用による利益について他の共有者に対して不当利得返還義務を負わないものと解される。
そして、内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当。

右のような両者の関係及び共有不動産の使用状況からすると、一方が死亡した場合に残された内縁の配偶者に共有不動産の全面的な使用権を与えて従前と同一の目的、態様の不動産の無償使用を継続させることが両者の通常の意思に合致。
     
  ※被相続人の死亡と配偶者の居住権保護 
    (1) 相続法の改正
@配偶者の居住権を短期的に保護するための方策⇒配偶者短期居住権の制度(民法1037条以下) 
A配偶者の居住権を長期的に保護するための方策⇒配偶者居住権の制度(民法1028条以下)
    (2) 配偶者短期居住権
    (3) 配偶者居住権
     
     
★第10章 賃貸借(1)・・・賃貸借契約の成立・効力・終了  
  ◆10.1 賃貸借契約の意義 
   
   
◇     
   
     
  ◆10.2 賃貸借契約の存続期間 
   
     
   
     
   
     
   
     
  ◆10.3 賃貸借における賃貸人の地位 
   
   
   
     
   
     
  ◆10.4 賃借人の地位 
   
     
  ◇10.4.2 用法順守義務 
     
  ◆10.5 賃借物に投下した費用の負担 
     
  ◆10.6 賃貸借契約の終了事由 
   
     
   
     
   
     
  ◇10.6.4 債務不履行を理由とする賃貸借契約の解除
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
★第15章 請負  
  ◆15.1 請負契約の意義 
     
     
  ◆15.2 請負人の義務
  ◇15.2.1 仕事完成義務 
     
  ◇15.2.2 注文者の生命・身体・健康・財産の保護(保護義務) 
   
     
  ◆15.3 注文者の義務 
  ◇15.3.1 報酬支払義務(請負代金支払義務) 
     
  ◇15.3.2 仕事を完成することができなくなった場合等の報酬請求権 
  ■(1) 割合的報酬請求権 
  ■(2) 注文者の責めに帰すべき事由による仕事完成不能と報酬請求権 
    注文者の責めに帰すべき事由により仕事の完成不能⇒民法536条2項の法意に照らし、請負人は、注文者に対して、報酬全額の請求をすることができる。
     
  ◇15.3.3 受領義務 
    注文者には、個々の請負契約において、目的物の受領義務を課されることがある。
(請負においては、受領義務を認めるのが一般的)
     
  ◆15.4 仕事完成前の注文者の任意解除権(p245) 
  ◇15.4.1 任意解除権の趣旨
     
  ◇15.4.2 任意解除権における損害賠償の意味  
    任意解除の場合に注文者が請負人に支払わなくてはならない賠償額:
@それまでに請負人が投下した費用相当額(たとえば、投入した労働の価額(労賃)や、調達した材料費。工事原価)
A履行利益(仕事を完成したならば請負人が得たであろう利益)、すなわち、請負報酬全額から履行が完了するまでに投下したであろう費用相当額を控除した額および
B拡大損害(たとえば、仕事を続けることにより獲得することができたであろう技術・経験を活用して、請負人が将来得ることができた営業利益の喪失)の賠償を含む。(民法416条の制約がかかる)
but
Aの賠償と@の賠償は択一的関係に立ち、両者を重ねて請求することは、評価矛盾をきたすゆえ、許されない。
C既履行部分の原状回復するのに要する費用も、ここでの損害賠償として請求できる。(民法416条の制約がかかる。)
     
  ◆15.5 「仕事の完成」と請負目的物の所有権の帰属 
  ◇15.5.1 問題の所在
     
   
     
   
     
◇     
  ◆15.6 仕事完成義務の不履行と請負人の債務不履行責任 
  ◇15.6.1 仕事完成義務の不履行を扱う民法の規律
     
  ◇15.6.2 追完請求権(民法562条の準用)
     
  ◇15.6.3 報酬減額請求権(民法563条の準用) 
     
  ◇15.6.4 損害賠償請求権・解除権(民法564条の準用⇒債務不履行の一般法理)
    注文者:契約不適合を理由として、民法415条以下により、請負人に対して損害賠償を請求できる。

追完とともにする損害賠償
追完にかわる損害賠償
原状回復的損害賠償を認める立場からは、履行利益賠償との択一で、この賠償も認められる。
注文者からの損害賠償請求に対して、
請負人は、契約および取引上の社会通念に照らして「自己の責めに帰することができない事由」による契約不適合であることを主張・立証して請求を免れることができる(民法415j法1項ただし書)。
     
    注文者:
民法541条以下の要件を満たすことにより、請負契約を解除できる。
(a)契約の目的達成不能を理由とする無催告解除のほか、催告解除も認められる
(b)注文者の責めに帰すべき事由による契約不適合の場合には、解除が認められない。
(c)新法のもとでは、仕事の目的物が建物その他土地の工作物であるからといって、契約不適合を理由とする解除が制限されているわけではない。
請負債務の不履行を理由とする解除は、賃貸借や雇用での解除(解約告知)と異なり、将来に向かって効力を生じるのみならず、既にされた給付についても精算・原状回復関係に巻き込むもの。
いずれも、債務不履行の一般法理によって処理される。
     
  ◇15.6.5 注文者の提供した材料・注文者の指図による契約不適合
    仕事の目的物の種類・品質に関する契約不適合が注文者によって提供された材料の性質または注文者の指図によって生じた場合⇒注文者は、契約不適合を理由とする救済を受けることができない(636条)。
     
  ◇15.6.6 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の注文者の権利の期間制限
     
  ◆15.7 目的物の滅失・損傷に関する危険の移転 
   
     
   
     
     
     
     
     
     
     
     
★第16章 委任  
  ◆16.1 委任契約の意義と特徴 
  ◇16.1.1 「法律行為」の委任と準委任 
    民法 第643条(委任) 
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
    委任契約:
ある者(受任者)が他の者(委任者)から委託されて「法律行為」をすることを目的とする契約(民法643)
「法律行為」以外の事実行為の委託を内容とする場合⇒準委任とし、委任の規定を準用(民法656)。
  ※雇用・請負との違い 
役務契約を目的とした契約(役務提供契約)という点で雇用契約や請負契約と共通。
but
次のような違い。
委任と雇用:
役務提供の結果がどのようになるかということの保証(結果保証)を契約内容としない点で共通。
but
雇用:労働者の行なう役務提供が従属的で裁量性がなく、使用者の指図・命令に従い役務提供をすることが内容とされている。
委任:受任者の行う役務提供が独立的で裁量性を有する。
委任と請負:
受任者・請負人の行う役務提供が独立的・裁量的である点で共通。
but
請負:役務提供の結果がどのようになるかについての保証(結果保証)が契約内容となっている
委任:役務提供の結果についての保証は契約内容になっていない。
雇用と請負:有償契約。
委任:無償であることが原則。
but重要な委任契約は、たいてい有償契約。
  ※信託と委任
英米法のトラストの制度に由来する信託。
信託:委託者が受託者に財産権を帰属させつつ、同時にその財産権を一定の目的に従い管理・処分すべき拘束を受託者に加えるもの
英米法:信託は、契約とは別の法体系(コモン・ロー)の体系に対する衡平法(エクイティ)の体系に基づくもの。
日本:委託者と受託者の合意により成立する契約
信託契約としての成立が認められるためには、次の要件を含んでいなければならない。(信託法2条1項、3条1号)
@財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分があること。
A財産の処分を受けた者が、一定の目的(自己の利益を図るものを除く)のために、当該財産の管理または処分その他の当該目的の達成に必要な行為をすること。
信託について、
@財産権が受託者に帰属するという特徴
A管理処分面で受託者に課される拘束の特殊性
B信託財産の管理・処分の物権的効果面にかかわる制度やルールの存在
⇒信託は委任契約とは異なるタイプのものであるとする理解が、有力に唱えられている。
but
わが国の委任類型は、委託された事務の処理に関する委任者・受任者間の規範的な拘束という点で、信託と共通の観点に出たもの

むしろ、信託契約も委任契約の一種(下位類型)と捉えたうえで、@Aの要素に由来する特殊性を考慮した特別の法理・ルールが信託契約において展開されているとみればいい。
逆に、これまで信託の法理・ルールとして展開されてきたもののなかにも、委任契約一般に妥当すべき性質のものがあるのではないかという点を考える必要。
 
  ◇16.1.2 
  ◇16.1.3 
  ◆16.2 受任者による事務処理(p258) 
  ◇16.2.1 事務処理義務・・・「委任の本旨」と「善良な管理者の注意」 
    民法644条:
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
義務の内容:「委任の本旨に従って事務を処理する」こと
その際に尽くすべき注意の程度を測る基準が「善良な管理者」、すなわち合理人。
合理人の注意:
受任者と同一のグループ(職業的地位・社会的地位・技能・経験等を基準に判断)に属する平均的な人ならば、当該委任契約の趣旨に照らして委任事務を処理するために合理的に尽くすであろう注意のこと。
  ◇16.2.2 忠実義務 
    このような規定がなくても、受任者は、
@合理人の注意を用いた事務処理義務を負うほか、
A委任者から新任を受け手事務処理をしなければならない
という忠実義務を負うことが強調。
    忠実義務:委任者と受任者との信任関係に基づき、受任者はもっぱら委任者の利益のために行動しなければならないという義務。

@受任者は委任者の利益と自己の利益とが衝突するような地位に身を置いてはならず、
A事務処理にあたっては自己または第三者の利益を図ることなく、もっぱら委任者の利益を図らなければならない
との原則に基礎を置く。
     
  ※忠実義務と善管注意義務との関係 
    民法644条の起草趣旨を踏まえれば、忠実義務とされる義務は、同条にいう善管注意義務に含めることができる。

「委任の本旨に従い」というのは、「受任者は、委任者の信任に応えて、誠心誠意、忠実に、委任者のために委任事務を処理すべきであって、委任の目的に反する行動をしてはならない」との意味を含む広範なもの。
     
  ◆16.3 受任者の権利 
  ◇16.3.1 報酬請求権 
   
  ◇16.3.2 費用前払請求権 
    委任事務を処理するために費用を要する⇒受任者は、委任者に対して、その費用の前払を請求することができる。
     
  ◇16.3.3 費用償還請求権 
     
  ◇16.3.4 代弁済請求権と担保供与請求権 
     
  ◇16.3.5 損害賠償請求権 
     
     
     
     
★第21章 不当利得制度  
     
     
     
  ◆21.2 不当利得制度の基本 
  ◇21.2.1 「利得」を中心とした制度設計
     
  ◇21.2.2 原則・・・受益の全部返還 
     
  ◇21.2.3 原則の修正・・・「利得消滅の抗弁」と「加重責任」 
     
    悪意の受益者は、利益の管理についても、他人の財産に対するのと同様の注意を尽くしておこなうべき。

悪意の受益者には、利得の全部返還だけでなく、利息の支払も命じられる。 
     
     
★第22章 侵害利得  
     
     
  ◆22.11 悪意受益者と責任加重(p335) 
     
    悪意の受益者は当該対象が法律上の原因なしに自己の領域に属しているものと認識
⇒その対象の管理について他人の財産におけるのと同様に相当の注意をもって行なわなければならない。

民法は、悪意の受益者のの財産管理面での帰責性を捉えて、この者の責任内容を加重し、受益に加え、利息の支払および損害賠償も命じた。