シンプラル法律事務所
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その他百選

★刑訴法(第9版)
     
◆45
最高裁昭和56.4.25  
  ◆45:訴因の特定・明示
事案 公訴事実「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和54年9月26日ころから同年10月3b日までの間、広島県a郡b町内及びその周辺において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩類を含有するもの若干量を自己の身体に注射又は服用して施用し、もって覚せい剤を使用したものである」 
弁護人は公訴事実の特定を欠くと主張。
判断 上告棄却 
本件公訴事実の記載は、日時、場所の表示にある程度の幅があり、かつ、使用量、使用方法の表示にも明確を欠くところがあるとしても、検察官において基礎当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上、覚せい剤使用罪の素因の特定に欠けるところはないというべきである。
規定 刑訴法 第256条〔起訴状、訴因、罰条、予断排除〕
B公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
   
     


★金融商品取引法
     
◆18
最高裁H17.7.14   
  ◆18:適合性原則違反と不法行為責任(1)
判断 証券会社の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である。 
不法行為の成否に関し、顧客の適合性を判断するに当たっては、単にオプションの売り取引という取引類型における一般的抽象的なリスクのみを考慮するのではなく、当該オプションの基礎商品が何か、当該オプションの情状商品とされているかどうかなどの具体的な商品特性を踏まえて、これとの相関関係において、顧客の投資経験、証券会社の知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要がある。
@現物取引の経験があっても抽象的な権利の売買であるオプション取引の仕組みの理解は容易ではなく、特に大きな損失を蒙る可能性があるオプションの売り取引は、各種の証券取引の中でも極めてリスクの高い取引類型であり、その取引適合性の程度も相当に高度なものが要求されるが、
A本件で問題となっている日経平均株式オプション取引は、証券取引法2条22項に規定する有価証券オプション取引に当たるものであって、いわゆるデリバティブ取引の中でも、より専門性の高い有価証券店頭オプション取引などとは異なり、証券取引所の上場商品として、広く投資者が取引に参加することを予定するものである。

日経平均株価オプションの売り取引は、単にオプションの売り取引という類型としてみれば、一般的抽象的には高いリスクを伴うものであるが、そのことのみから、当然に一般投資家の適合性を否定すべきものであるとはいえない。
裁判所は、Xの取引規模、積極的な運用姿勢、BやCの関与と知識経験、当初のNO取引の経緯(限定的な買い取引で利益と損失を実際に経験)、売り取引開始時の自律的なリスク管理(撤退の基準時の決定と遵守)、オプション大量売り時の意図(決算対策)
⇒Xはオプションの売り取引を自己責任で行う適性があった。
解説 ●金商法上の適合性原則と不法行為 
適合性原則:
狭義には金融商品取引業者等に「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘」を禁止する考え方(金商法40条)。
業者の業務規範として定められ、明文規定を欠く本件取引当時も、大蔵省証券局長通達や証券業協会の公正慣習規則において同趣旨の原則が要請されていた。
本判決は、こうした公法上の業務規制等の私法上の効力について、著しい逸脱の場合には不法行為上も違法性が肯定されるとした。
平成18年金商法成立に伴う平成19年の改正金融商品販売法(「金販法」)は、説明義務の一部として、顧客の知識・経験・財産の状況および契約締結目的に照らし、顧客に理解されるために必要な方法・程度での説明意を業者に求めている(3条2項、広義の適合性原則)。
説明しても顧客が投資商品のリスクに対応できない(狭義の適合性原則に該当)場合、勧誘は当然に同項に反すると思われる。
●金融商品の特性と適合性原則 
●投資家の属性と適合性原則 
◆19
名古屋地裁H22.9.8
  ◆19:適合性原則違反と不法行為責任(2)
判断 ・・・・処方薬を適切に服用していない状態の亡Aは、統合失調症の症状である幻覚、妄想が強く現出して思考がまとまらず、相手を問わず、とりとめのない話をするのであって、証券投資能力が容易に否定されるのであり、とりわけ保険取引のような取引内容について適合性を有しないことは論を待たない。 
亡Aの精神疾患について全く知らなかった、気付かなかったという本件各担当者の弁解は採用するこができず、むしろ逆に、本件各担当者は概ね亡Aの精神疾患を把握しながら、処方薬の適切な服用により、時期によっては統合失調症の症状があまり顕在化しないことを奇貨とし、かかる精神疾患のほか、本来的に証券投資に関する知識経験が十分でなく、営業担当者に依存する傾向が強い亡Aに対して、思うがままに取引を勧誘し、本件取引を継続していたものと認められ、かかる本件各担当者の亡Aに対する勧誘行為等は適合性原則に著しく反するものであって、強い違法性が認められる。
個々の取引内容自体の問題性について立ち入るまでもなく、本件各担当者の勧誘行為等が同原則に違反するものであると認定することができ⇒各担当者の使用者であるYは、本件取引により亡Aが被った損害について不法行為に基づく損害賠償義務を免れない。
本件取引きによる亡Aの損害は本件各担当者の故意の不法行為によってもたらされたというべき⇒Xその他亡Aの親族において、Aの財産管理への関与如何につきなんかの落ち度が認められるとしても、それを理由としてYが亡Aないしその相続人に対して損害賠償すべき金額が減じられるべきものではないことが明らかであり、Xその他亡Aの親族の落ち度をもって過失相殺をすべき余地はない。
解説  
●平成17年最判による適合性原則を著しく逸脱した投資勧誘に不法行為損害賠償を認める法理⇒最近の裁判例においては、適合性判断のハードルが上がる傾向にあり、
@顧客の精神上の障害により知的判断能力が十分とはいえない場合、
A当該投資によって顧客の「将来の生活に必要な資産」が危ぶまれる場合
くらいでしか機能していないとの指定。