シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室 【地図】
TEL(06)6363-1860 mail:
kawamura@simpral.com 


雑誌(商事法務2016年)

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

12月分
2121
    ■建設的な対話の場としての株主総会とその環境整備の進展
「2016年版株主総会白書」を読んで 
    ■機関投資家の議決権行使方針の事例分析
・・・・役員選任議案を中心に
    ■わが国における「監査」の展望
・・・日本取締役会の報告書に寄せて 
    ■日本取締役協会「経営者報酬ガイドライン(第4版)」の解説 
    ■上場会社のインサイダー取引未然防止の現状と留意点(第4回全国上場会社インサイダー取引関k理アンケート調査報告書から) 
    ■2016年商事法務ハイライト
2016年商事法務年間日誌 
    ■米国会社・証取法判例研究No.351
秘密保持契約の違反による敵対的買収の差止め 
    ■ニュース:
消費者庁、「公益通報者保護法をふまえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」を公表
公正取引委員会、「公正取引委員会の確約手続に関する規則(案)」で意見照会
日本IFIARネットワークが設立される 
    ■スクランブル:ESG投資の本格化に向けた対応に関する留意点 
    ■新商事判例便覧No.691 
    ■索引(2015号〜2121号)No.122
2120   
    ■取締役会評価にどう取り組むか
・・・欧米での議論・実務も参考にしたCGコード対応・・
    ■敵対的買収防衛策の導入状況
・・・2016年6月総会を踏まえて 
    ■英国訴追延期合意制度の背景・概要と日本企業への示唆 
    ■M&A実務におけるリスク対応の潮流(5・完)
M&A取引におけるエスクローの活用 
    ■商事法判例研究
併催会社における譲渡制限株式の譲渡に係る売買価格決定の方法 
    ■書評 
    ■ニュース
金融審議会「金融制度ワーキング・グループ」の第4回会議が開催される
金融審議会市場WG「FDルール・タスクフォース」の第3回会議が開催される
金融庁等、「「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(3)」を公表
    ■スクランブル:望まれる議決権行使助言会社による助言サービスの品質確保策 
2119   
    ■「業績連動発行型」の株式報酬の導入
・・・シンプルで透明性の高いパフォーマンス・シェアの普及のために 
    ■企業法務の視点・・・2016年第3四半期の話題 
    ■2016年コーポレートガバナンスの実態に関する調査結果の紹介 
    ■M&A実務におけるリスク対応の潮流(4)
価格調整とロックド・ボックス・ストラクチャー 
    ■実務問答会社法第6回
T 株式会社の合併による消滅の血栓手続の要否等
U 組織変更後の株式会社による「成立の日における貸借対照表」の作成の要否
    ■ニュース
金融審議会市場WG「FDルール・タスクフォース」の第2回会議が開催される
日本監査役協会、「選任等・報酬等に対する監査等委員会の意見陳述権行使の実務と論点・・・中間報告としての実態整理・・」等を公表
平成28年10月定時株主総会の概況 
    ■スクランブル:独占禁止法におけるガン・ジャンピング問題と企業の対応上の留意点 
       
11月分   
2117   
    ■コーポレートガバナンスに関するグローバル展開 
    ■情報漏えいと取締役の内部統制システム構築義務 
    ■議決権電子行使プラットフォームの10年と今後の展望について 
    ■M&A実務におけるリスク対応の潮流(3)
独占禁止法上のリスク分担の手法と契約条項 
    ■アジアにおける会社法の現代化と活用(3)
シンガポールにおける独立取締役制度の変遷と現状 
    ■米国会社・証取法判例研究No.350
監督機関の非公式の調査に起因する費用とD&O保険 
    ■第12回「商事法務研究会賞」受賞論文発表
    ■ニュース
政府税制調査会、「「BEPSプロジェクト」の勧告を踏まえた国際課税のあり方に関する論点整理」を公表
企業会計基準委員会、開発中の会計基準に関する今後の計画を公表
OECDコーポレートガバナンス委員会、 
    ■スクランブル:企業と投資家の建設的な対話促進策への期待 
    ■新商事判例便覧 
2116   
    ■全株懇「企業と投資家の建設的な対話に向けて〜対話促進の取組みと今後の課題〜」の開設 
    ■M&A実務におけるリスク対応の潮流(2)・・・MAC条項をめぐる判例の動向を踏まえた実務対応 
    ■経営陣の報酬をめぐる新たな問題・・・執行役員・子会社取締役の報酬水準・報酬体系の変容を踏まえて 
    ■機関投資家による議決権行使の状況・・・2016年株主総会を振り返って 
    ■アジアにおける会社法の現代化と活用(2)
公開買付勧誘目的等でなされた株主名簿閲覧謄写請求の成否
    ■「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案」の国会提出
    ■ニュース 
東京高裁、笹子トンネル崩落事故の遺族らが同トンネルの維持管理会社の役員等に対して提起した損害賠償請求訴訟の控訴事件で遺族らの控訴を棄却する判決
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の第10回会議が開催される
金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案で意見照会
金融庁、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」で意見照会
中小企業庁、「下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく新興基準」の改正案で意見照会
東証、「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上について」で意見照会
日本取引所自主規制法人等、「第4回全国上場会社インサイダー取引管理アンケート調査報告書」を公表
    ■スクランブル:適切な指標を基準とした非財務情報の開示の充実 
2115   
    ■「M&A実務におけるリスク対応の潮流〜欧米M&A実務の動向を踏まえ〜」の連載開始に当たって 
    ■M&A実務におけるリスク対応の潮流(1)・・・表明保証責任の活用 
    ■取締役・監査役の「相当な注意を用いた」(金融商品取引法21条2項1号)に関する判断枠組み 
    ■日米同時上場に関する検討・・・LINEの上場を踏まえて 
    ■アジアにおける会社法の現代化と活用(1)
・・・・マレーシアにおける新会社法の制定 
    ■実務問答会社法 第5回:
多重代表訴訟の被告適格に係る基準時 
    ■ニュース
東京地裁、インサイダー取引に係る課徴金納付を命ずる決定を取り消す判決
金融審審議会ワーキング・グループ「フェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース」の第1回会議が開催される
全株懇、「企業と投資家の建設的な対話に向けて〜対話促進の取組みと今後の課題〜」
日本取締役協会、「経営者報酬ガイドライン(第4版)」を公表
平成28年9月定時株主総会の概況 
    ■スクランブル:「未来志向型の取引慣行に向けて」が目指す取引環境の改善 
10月分   
2114   
    ■JCOM最高裁決定と構造的な利益相反のある二段階買収における「公正な価格」 
    ■ジュピターテレコム事件最高裁決定の検討 
・・・二段階取引による非公開化に係る価格決定手続における公正な価格
    ■株式等売渡請求に関する金融商品取引法上の諸論点 
    ◆座談会
グループ・ガバナンス強化に向けた企業の取組みと法的論点(下) 
    ■  ■四 グループ・ガバナンスの具体的態様(各論) 
    ●1 リスク・ベースアプローチ 
海外子会社の場合、一度にいきなりすべてを管理する、さらにすべてを日本の親会社と同じやり方にするのは困難⇒リスクの大きなところ、すなわち重要なところから手をつけていくべきという考え方。
◎海外子会社について
〇伊藤忠 
贈収賄の分野の強化
米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)での摘発
UKブライバリーアクト
法律の域外適用がこの分野で特に進んでいる
OECDの加盟国としての観点から、経済産業省の外国公務員贈賄防止指針
海外贈賄防止ガイダンス(日弁連)
上場会社における不祥事対応のプリンシプル
独占禁止法
英国の現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015):
英国内のいずれかの地域において、年間の売上高が一定規模を超えるものに対して、奴隷労働と人身取引がないことを担保するために実施した取組み等について、毎年度、報告書を作成することを求める。
この報告書は、取締役会でその内容を承認し、経営トップが署名した上で公開することが求められている。

自分達がいるサプライチェーンの中でだれかが犯していることがないかを確認する、そういう義務が生じている。
サプライチェーンをきちんとみていかなければならないし、みないことによるレピュテーションの毀損。
欧米でできているベストプラクティス的な法律または考え方の中で、さらに域外適用がされるようなものは注目。
〇キリン 
国内:
食品業界⇒表示の問題
産業廃棄物など環境関係の規制
日本版司法取引
海外:
WHOなどによるアルコール規制の強化
EUの個人情報保護法制と内部通報制度の問題
ミャンマーと人権問題とレピュテーション
リスクベース・アプローチは合理的
but
それから漏れた部分をどうするのか。
〇伊藤忠:
想定していないことが起きた時の対応が課題。
ex.イスラム国の影響
何が起こるかわからない、そういうリスクにどう対応していくべきか?
マニュアル化はできない。
何か起きた時に、すぐにタスクフォースを作って情報共有しながらそのときどきにおいてベストな行動をとるという社内の動き。
〇キリン
有事⇒
リスク管理委員会の招集
社長がそのヘッドをつとめる
大震災の際のITシステム
    ●2 規程類の整備
◎伊藤忠 
コンプライアンス管理対象会社:国内外を問わず子会社

コンプライアンスプログラムを持ってもらう。
現地訪問をして、勉強会。
悩みを聞く。
現地の人は悩みをいろいろと抱えている。
ex.賄賂を払わなければ現地の警察から意地悪をされる等の日々の問題
◎キリン 
キリングループコンプライアンス・ガイドライン
贈収賄については、個別にキリングループ贈収賄防止ガイドライン
トップダウンでで、あらゆる場面をとらえて強調
個別の社内研修
現場に出向いて現地の弁護士と一緒に現地の問題意識や課題解決に即したセミナー
内部統制システム全体:
@セルフチェック
A内部監査
@子会社を直接訪ねる
A 教育
◎  確認書の提出で、規程遵守の実効性を担保
人事を通したガバナンス 
    ●3 内部通報 
@子会社ごとに独自で内部通報制度を整備させる方法
Aグループ全体に共通する内部通報制度をつくり、親会社に窓口を設けるという方法 
◎伊藤忠 
海外のグループ会社については、個別設定。
欧州ブロック、アフリカブロックといった海外ブロック。
欧州ブロックの現地法人⇒伊藤忠ヨーロッパのコンプライアンス責任者に通報。
◎キリン 
国内:
A:主なグループ会社ごとに、社内ホットライン窓口
@個別の電話番号
A担当者のEメールアドレスもしくはグループアドレス
B:専門会社を窓口として、そこに通報するというルート。
C:キリンホールディングスのコンプライアンス(リスク統括)担当役員直通のホットライン

キリンホールディングスの役員(取締役、執行役員)のレベルで何かあった場合⇒キリンホールディングスの監査役に通報・相談できる直通の監査役ホットライン。
  海外:これから。
〇  2018年5月から施行されるEU一般データ保護規則への対応:
EUから日本への従業員等の個人情報の異丁について、それがビジネス上のものであれ内部通報制度を通じてのものであれ、個人データの域外移転規制の網にかかる
違反の場合は最大で全世界売上高の4%または2000万ユーロ以下の制裁金のうちいずれか高い額が課されるリスク。
内部通報の場合は特に被通報者の個人情報が問題。
会社間での関連契約の手当や従業員からの個別同意が必要。
  解雇の不当を訴えるものがほとんど
日本人駐在員の私生活や政治的発言に関するもの
@個人情報保護の問題
Aデータプロテクションの観点等

海外から、日本に情報をもってくることが本当にできるのかという問題。
入ってきた情報をそのまま放置していたので、かえってマイナスという事態にもなりかねない。 
    ●4 海外子会社の現地における処理との連携
◎伊藤忠 
コンプライアンス事案は、そのように認定された事案。
内部通報は、海外のグループ会社は個別設定。
コンプライアンス事案⇒コンプライアンス管理対象会社であれば、国内外を問わず、コンプライアンス事案と認定された段階で、本社のコンプライアンス室がそれを把握できる仕組み。
横展開的に同じようなことが起きていないか?
その事案から何か学べることがあるのではないか?
本社のコンプライアンス室が入って行って、再発防止策が適切に構築されているのかといったところまで含めてみる。
コンプライアンス事案⇒すぐに報告⇒処理前の段階で情報を入手⇒処理の方法についても親会社として指示
主管の営業部門のコンプライアンス責任者⇒コンプライアンス室に上がってくる。
    ■  ■五 企業買収時における留意点 
DD⇒対象会社における法令違反やその可能性が判明
買収後の是正を見据えた措置
買収前の人事をそのまま維持することによるデメリット
◎伊藤忠 
JVでどこまで監視・管理できるか
海外のJVで、知見がない場合、難しい。
◎キリン 
DD
表明保証条項をどうすか
その実効性確保のためにエスクローで供託
銀行保証
ガバナンスを通じてきちんとマネジメントしていく
DDのあと合併後のDD(=答え合わせ)
◎ 
    ■  ■六 おわりに 
    ■米国会社・証取法判例研究No.349
デラウエア州LPにおける黙示の契約義務違反の判断基準 
    ■ニュース:
金融審議会「金融制度ワーキング・グループ」の第2会会議が開催される
金融庁、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部改正(案)で意見照会
公正取引委員会、「独占的状態の定義規定のうち事業分野に関する考え方について」の一部改定を公表
日本取締役協会、「監査等委員会の監査の展望〜取締役が行う監査について〜」 
    ◆スクランブル:「法人税法の現代化」を目指した平成29年度改正の注目事項 
低収益事業を抱え込む企業経営⇒ROEが低水準
⇒事業ポートフォリオを検証し、機動的かつ大胆な事業再編が求められる。 
「スピンオフの円滑な実施」

@法人レベルにおける移転資産の譲渡損益に対する課税と
A株主レベルにおける配当課税等
について課税繰延措置等を講じる必要。
現行の組織再編税制の枠組:
資産等を移転した法人の課税(移転資産の譲渡損益の取扱い)について、
形式上は資産を他の法人に移転したが、実質的には未だその資産を保有している(ということができる)状態(「移転資産に対する支配が係属している状態」)を適格組織再編成とし、その範囲を「企業グループ内の組織再編成」と「共同事業を行うための組織再編成」としてとらえている。

課税繰延べが認められている税制適格なスピンオフの範囲はきわめて限定的なものにとどまることになる。
会社分割の法的構成:
A:会社分割を合併と同質の事象として組織法的に構成する大陸型
B:会社分割を現物出資による財産の譲渡とその対価として取得した株式の株主への分配の組合せとして構成する米国型
米国では、@スピンオフを実行した会社レベルと、A分離独立した株式の交付を受ける株主レベルの双方に対する課税について、一定の要件の下、広く課税繰延べを認める税制措置が講じられている。
この場合、課税繰延べを認める適格要件は「株主による投資の継続性」を基礎としている。
    ■新商事法判例便覧No.689 
2113
    ◆座談会:
グループ・ガバナンス強化に向けた企業の取組みと法的論点(上)
    ■一 はじめに 
    ■二 グループ・ガバナンスの会社法上の位置づけ
    ●1 グループ・ガバナンスの重要性 
平成26年会社法改正時:
自社の価値の棄損を防止するために子会社管理を行う必要がある。
◎親会社による子会社も含めたグループ全体のコンプライアンス体制の整備を求める海外の法令
○米国の海外腐敗行為防止法(FCPA):
会社取引・資産処分を構成に反映した帳簿・記録の維持義務と、これを合理的に保証する内部統制システムの構築を義務づける内部統制条項
SECは、海外子会社による贈賄行為があった場合、親会社のFCPAの内部統制条項違反だけでなく、親会社が子会社の違法行為に関与していたか、または認識していたかににかかわらず、子会社の贈賄禁止条項違反に関しても親会社に対して厳格な責任を問う傾向
○英国の2010年贈収賄防止法(UKブライバリーアクト):
英国法人のみならず、英国において事業の全部または一部を含む企業の関係者を対象とし、企業の犯罪類型の一つに企業の贈賄防止懈怠罪を挙げており、その抗弁事由の形で、リスクベース・アプローチによる予防手続の確立、経営トップによる贈収賄防止への関与、贈収賄リスクの定期的評価、DDの実際、さらに社内における贈収賄防止体制の周知徹底、コンプライアンスプログラムの監視と精査を挙げている。
 ◎ グループ経営:
@会社法の観点からみて、子会社を管理するという視点
A親会社自身が協働にようrシナジーを享受するという視点 
@会社法上の取締役の義務と
A実務上で意識するグループ・ガバナンス
には開きがある。 
グループ・ガバナンスの本来の目的は、最終的にブランド価値や製品への信頼をいかに高め維持するかというところに力点があり、これを実現するために、子会社をはじめとして参加会社には法令順守をはじめとするコンプライアンスを履践してもらう。
それが守られないと、グループの価値、ブランドの価値を大きく棄損するという事態が容易に想定される。 
コンプライアンスの重要性に関しては、子会社価値の維持よりもグループ全体のレピュテーションやブランド価値の維持とう観点も強い。
    ●2 内部統制システムの構築と経営判断原則 
グループ内部統制システム構築の場面における経営判断原則の適用は、親会社取締役にとって、子会社の法令遵守体制の整備も含めて、コストベネフィットを考えつつ、リスクベース・アプローチをとることを許容するもの。
    ■三 グループ・ガバナンスの具体的態様(総論) 
    ●1 親会社が事業会社である場合と純粋持株会社である場合の相違 
    ●2 兼務役員の責任 
    ●3 グループ会社の性質に応じた管理体制・・・特に「グループ会社」の外延と上場子会社の取扱い 
    伊藤忠グループコンプライアンスプログラム:
@コンプライアンス体制構築の目的
A体制の概要
B未然防止のための施策
C適切な事後対応のための施策
D継続的改善のための施策 
管理対象会社には、上場子会社の含まれる。
日本の子会社も海外の子会社も含まれる。

上場であっても海外であっても、基本的に、同じ内容の伊藤忠グループコンプライアンスプログラムを遵守する必要性。
管理対象会社ではなくても、コンプライアンス連絡協議会というグループ会社を対象としたディスカッション。
新しく法令ができた場合の情報共有の場に呼ぶ。
何のために上場子会社を管理するのか?
@コンプライアンス
A財務報告の信頼性の確保、開示
B金融商品取引法上の内部統制
    子会社というステータスがあることによって、親会社ができることが変わってくる。
できることが多い⇒親会社としても管理する余地があるし、管理しなければならないという場面も増えてくる。
他方で、少数株主の保護という観点から親会社の関与にも一定の限界がある。
●視点:
親会社⇒親会社の利益を守る⇒コントロールが必要
レピュテーション・ブランド価値 
    ■法人税法132条の2にいう不当性要件とヤフー事件最高裁判決(下)
    ■有価証券報告書等の虚偽記載に係る勧告事案における収益認識に関する考察 
    ■米国の新たなインバージョン規制と企業結合型インバージョンの最新動向
    ■アジア地域ファンド・パスポートの概要と利用上の留意点
    ■制度の拡充を続ける英国ISAの概要とNISA制度拡充への展望 
    ■D&O保険の戦略的な支払限度額増額
    ■実務問答会社法 第4回:
支配株式の異動を伴う募集株式の発行等における株主総会の開催時期
    ■商事法判例研究No.603
金融商品取引所による上場廃止処分の違法性 
    ■ニュース:
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の第9回会議が開催される
日本証券業協会、「協会員のアナリストによる発行体への取材等及び情報伝達行為に関するガイドライン」(案)に対する意見照会結果等を公表
日本証券業協会、個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書を公表
平成28年8月定時株主総会の概況
    ■スクランブル:
コーポレート・ガバナンスと会社補償 
       
       
9月分   
2112
    ■法人税法132条の2にいう不当性要件とヤフー事件最高裁判決(上) 
    ■社債権者保護の充実に向けた取組み
・・・社債権者保佐人制度に係る社債要項および業務委託契約について 
    ■英国会社を対象とする株式対価のクロスボーダーM&A 
    ■株式投資型クラウドファンディング業者に関する法的論点と実務 
    ■労働契約承継法施行規則・指針および事業譲渡指針の改正等と実務上の留意点 
    ■米国会社・証券法判例研究No.348
二段階の株式取得制限を伴うライツプランとポイズン・ピルの効力 
    ■ニュース:
東京高裁、テーオーシー取締役らに対する株主代表訴訟で株主側の控訴を棄却する判決
東証、「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」の集計結果を公表
監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会の第2回検討会が開催される 
    ■スクランブル:決算取材のあり方と予測記事報道について考える
    ■新商事判例便覧No.688
2111   
    ■株式報酬に関する実務分析
    ■監査等委員会設置会社への移行後の実務課題
・・・指名・報酬に関する規律と重要な業務執行の決定権限の委譲
    ■インサイダー情報の伝達等による法人処罰のリスクとその対応 
    ■公認会計士・監査審査会「平成28事務年度監査事務所等モニタリング基本計画」について 
    ■2015年度株式分布状況調査結果の概要 
    ■商事法判例研究No.602
会計監査限定監査役の第三者に対する損害賠償責任 
    ■ニュース
平成29年度税制改正に関する各省庁の改正要望が公表される
全国株懇連合会、「株主本人確認指針」の改正を公表
金融庁、ウェッジホールディングス株式に係る偽計に対する課徴金納付命令の勧告事案で第2回審判期日を開催
日本証券業協会、「社債権者保佐人制度に係る社債要項及び業務委託契約について」を公表
    ■スクランブル:「日本版クラスアクション制度」の施行と企業実務の留意点 
       
       
2110   
    ■平成28年回生商業登記規則等に基づく商業・法人登記事務の取扱いについて 
       
    ◆「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」の概要について 
  ■一 初めに 
平成28年5月24日 刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立、同年6月3日公布
捜査・公判が取調べおよび供述調書に過度に依存している状況を改め、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため、刑事訴訟法、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(「通信傍受法」)その他の法律を改正して、刑事手続における証拠の収集方法の適正化・多様化および公判審理の充実化を図るもの。
@取調べの録音・録画制度の導入
A証拠収集等への協力および訴追に関する合意制度(「合意制度」)および刑事免責制度の導入
B通信傍受の合理化・効率化
C裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化
D弁護人による援助の充実化
E証拠開示制度の拡充
F犯罪被害者等および証人を保護するための措置の導入
G証拠隠滅等の罪等の法定刑の引上げ等
H自白事件の簡易迅速な処理のための措置の導入
  ■二 本法の制定経過等
  ■三 合意制度 
    ●1 概要および趣旨 
検察官と被疑者・被告人が、特定の財政経済犯罪および薬物銃器犯罪について、弁護人の同意がある場合に、
@被疑者・被告人が、共犯者等の他人の刑事事件の解明に資する供述をしたり、証拠物を提出するなどの協力を行い、
A検察官が、被疑者・被告人の事件において、その協力行為を被疑者・被告人に有利に考慮して、不起訴にしたり、より軽い罪名で起訴したり、一定の軽い求刑をするなどの取扱いをする
ことを内容とする合意をすることができるというもの(350条の2等)。
    ●2 いわゆる巻き込みの危険への対処 
    ●3 合意の手続 
    ●4 協議の手続 
    ●5 公判手続の特例 
    ●6 合意からの離脱 
    ●7 合意の履行の確保 
    ●8 施行期日 
    ■四 刑事免責制度 
刑事免責制度は、裁判所が、検察官の請求に基づいて、
@尋問に応じてした供述およびこれに基づいて得られた証拠は、証人の刑事事件において、これらを証人に不利益な証拠とすることができない
A証人は、146条の規定にかかわらず、自己が刑事訴追を受けまたは有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができない
との条件により証人尋問を行う旨の決定(「免責決定」という)をするというもの(157条の2、157条の3)。

組織的な犯罪等において、取調べ以外の方法により、手続の適正を担保しつつ供述証拠を得ることを可能にする⇒証拠の収集方法の適正化・多様化に資するとともに、公判廷における証言の形で証拠を顕出することを可能にするという点で、公判審理の充実化にも資する。
自己負罪拒否特権(憲法38条1項)に基づく証言拒絶権(146条)の行使により、犯罪の解明に必要な証言が得られない
⇒裁判所が証人に対して一方的に免責を与えることにより、その自己負罪拒否特権を失わせて証言を義務づけるというもの。
    ■五 その他 
    ●取調べの録音・録画制度 
検察官、検察事務官または司法警察職員は、@裁判員制度対象事件またはA検察官独自捜査事件について、逮捕・勾留中の被疑者の取調べ等を行うときは、原則として、その全課程を録音・録画しておかなければならず(301条の2第4項)、
検察官は、前記二類型の事件に該当する被告事件の公判において、逮捕・勾留中に行われた当該事件についての被疑者の取調べ等の際に作成され、被告人に不利益な事実の承認を内容とする供述調書または供述書の証拠調べを請求した場合において、その任意性が争われたときは、原則として、当該取調べ等の開始から終了までを録音・録画した記録媒体の証拠調べを請求しなければならない。
    ●通信傍受の合理化・効率化 
@通信傍受の対象犯罪の拡大
A通信傍受の手続の合理化・効率化
    ●裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化 
裁量保釈の判断(90条)に当たり、
「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情」を考慮すべきことを確認的に明記
    ●弁護人による援助の充実化 
@被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大
被疑者国選弁護制度について、対象事件による限定をなくし、勾留状が発生らているすべての被疑者を対象とする
A弁護人の選任に係る事項の教示の拡充
裁判所や捜査機関等は、身柄拘束を受けた被疑者・被告人に対して弁護人選任権を告知する際に、裁判所や刑事施設の長等に弁護士、弁護士法人または弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨およびその申出先を教示しなければならないこととする。
    ●証拠開示制度の拡充 
(1)証拠の一覧表の交付手続の導入
検察官は、公判前整理手続等に付された事件において、検察官請求証拠の開示をしたときは、すみやかに、被告人または弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表を交付しなければならないこととする。
(2)公判前整理手続等の請求権の付与
検察官、被告人および弁護人に公判前整理手続等の請求権を付与する。
(3)類型証拠開示の対象の拡大
類型証拠開示の対象に、@共犯者の取調べ状況記録書面およびA証拠物の押収手続記録書面を追加
    ●犯罪被害者等および証人を保護するための措置の導入 
@ビデオリンク方式による証人尋問の拡充:
ビデオリンク方式による証人尋問を拡充し、証人が裁判官等の在籍する場所と同一の構内に出頭することにより、その精神の平穏が著しく害されたり、証人に対して加害行為等がなされるおそれがある場合
⇒同一構内以外の場所に証人を出頭させて、同所と裁判官等の在席する場所との間をビデオリンクでつなぐ方式により証人尋問を行うことができる。
A証人等の氏名および住居の開示に係る措置の導入:
B公開の法廷における証人等の氏名等の秘匿措置の導入:
証人等に対する加害行為等のおそれあがるときは、その氏名等の承認等特定事項を公開の法廷で明らかにしない措置をとることができる。
    ●証拠隠滅等の罪等の法定刑の引上げ
@証拠隠滅等の罪等の法定刑の引上げ
A証人の勾引要件の緩和等
    ●自白事件の簡易迅速な処理のための措置の導入 
即決裁判手続の申立てがなされた後に被告人が否認に転じるなどしたために同手続によらないこととなった場合には、公訴取消し後の同一事件についての再起訴の制限の例外として、検察官がいったん公訴を取り消し、再捜査と行った上で再起訴することができる。
    ■施行期日 
●平成28年6月23日:
〇裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化 
〇証拠隠滅等の罪等の法定刑の引上げ
●本法の公布日から6月以内の政令で定める日(平成28年12月2日まで)
〇通信傍受の対象犯罪の拡大
〇弁護人の選任に係る事項の教示の拡充
〇証拠の一覧表の交付手続の導入
〇公判前整理手続等の請求権の付与
〇類型証拠開示の対象の拡大
〇証人等の氏名および住居の開示に係る措置の導入
〇公開の法廷における証人等の氏名等の秘匿措置の導入
〇証人の勾引要件の緩和等
〇自白事件の簡易迅速な処理のための措置の導入 
●本法の公布日から2年以内の政令で定める日(平成30年6月2日まで)
〇合意制度の導入
〇刑事免責制度の導入
〇被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大
〇ビデオリンク方式による証人尋問の拡充
●本法の公布日から3年以内の政令で定める日(平成31年6月2日まで)
〇取調べの録音・録画制度の導入
〇通信傍受の手続の合理化・効率化
       
    ■わが国訴訟における回帰分析の利用と課題・・・近時の事案を振り返って 
    ■企業法務の視点:2016年第2四半期の話題 
    ■実務問答会社法 第3回
T 社外取締役の行為と業務執行
U 代表取締役を退任した取締役との責任限定契約の締結の可否
    ■ニュース 
名古屋高裁、ゲオホールディングスによる元役員らへの損害賠償請求訴訟で元役員らの控訴を棄却する判決
金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対する意見照会結果等を公表
「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」等が公布される
平成28年7月定期株主総会の概況
    ◆スクランブル:事業再編の促進のためにもスピン・オフ税制の早急な導入を
  ●平成29年度税制改正:
@タックス・ヘイブン対策税制の抜本改正
Aスピン・オフ税制 
  ●スピン・オフ:
現物配当その他の比例的配分により、株主に対して既存子会社または事業を切り出して設立した新設子会社の株式を交付することによって、当該子会社または事業を切り出して設立した新設子会社の株式を交付することによって、当該子会社または事業を切り離す組織再編。 
米国では、上場企業の間でも1980年代から利用され始め、1990年代以降、本業とのシナジーの低い事業等の切り離しの手段として広く普及。
欧州でも、スピン・オフさせて上場等(独ヘキストが石油化学大手のセラニーズをスピン・オフ、フィアットがフェラーリをスピン・オフ)、上場企業の間でスピン・オフを実施する動き。
●日本ではほぼ皆無

@企業経営者の間に、ノン・コアの事業部門ないし子会社であっても、それは「会社のもの」、ひいては「自分達経営陣が支配すべきもの」との意識
A「選択と集中」を求める機関投資家株主からのプレッシャーが弱かった
B税制の問題
米国・英国・ドイツ等:子会社のスピン・オフを行っても、一定の要件の下で親会社やその株主への課税は繰り延べられる
日本:
親会社の株主にはみなし配当課税等
親会社には子会社株式の含み益への課税
平成13年度税制改正で導入されたわが国の組織再編税制:
@株式交換による子会社の完全子会社化にみられるように、本業とのシナジーの高い事業を企業集団内に取り込んでいく方向の組織再編には基本的に課税繰延べが認められている。
Aスピン・オフなどの、本業とのシナジーが低い事業を企業集団の外部に放出していく方向の組織再編には、課税繰延べが全く認められていない。
  租税回避防止のため米国等のように課税繰延べのための要件が非常に複雑化することを防止するため、たとえば産業競争力強化法の下で主務大臣の計画認定を要求することで、かかる要件の複雑化を回避することも一考。 
8月分   
2109   
    日本司法学会シンポジウム資料
変化するコーポレートガバナンス 
    ■T 平成26年会社法改正の背景とシンポジウムの企画趣旨 
    ■U コーポレート・ガバナンスにおける規制手法の考察
    ■V エンゲージメントの時代における機関投資家の役割・・・日本における新しい投資家像構築を目指して 
    ■W アクティビスト・ヘッジファンドとコーポレート・ガバナンス
    ■X コーポレート・ガバナンスに関する新しい開示情報とその分析 
    ◆Y 経営学からみたコーポレート・ガバナンス改革 
@日本企業におけるガバナンスの強化を本来の目的としてとらえたとき、CGコードは効果的な手段といえるのか
A日本企業の収益性と成長性の大幅な向上を影の目的ととらえたとき、CGコードは効果的な手段といえるのか
    ■一 コーポレート・ガバナンスとCGコードの適合性 
    ●1 コーポレート・ガバナンスの表層 
所有と支配の分離に伴って持ちあがる利益相反の予見。
所有者たる株主:
過大なリスクをとることなく利益を最大化し、企業価値を損なわない範囲で配当性向を最大限に高め、いつでも株式を公正な価格で売り抜けることが可能な状態の維持を望む。

支配者たる経営幹部:
自己の個人利得を追求するなら、株主の財産を自身の個人口座に移す手段に事欠かない。
株価を下げるニュースを開示して安値で株を買い上げる。
自己実現の欲求を優先するなら、必要以上に社員の待遇や製品の品質を高める。
分散化の進んだ不特定多数の所有者の利益≠集約化の進んだ特定少数の支配者

経営幹部は政治的、経済的、社会的に縛られる必要。
経営学者の視点:
収入ー支出(=経営幹部が経費支出を差配)=利益(=株主に帰属)
⇒株主と経営幹部の間の利益相反は自明。
ex.寄付金、交際費、社用車
あからさまな行為は、容易に対策を講じて封じ込めることができる。
    ●2 コーポレート・ガバナンスの深層 
床に落ちている札束を拾おうとしない社員。
壊れた現場、荒れた現場

@経営幹部が現場に出向かない。
A自身の評価を挙げることだけを目的に起案する管理職を経営幹部を放任。
隠れた動機:
@楽をしたいという動機
大企業だと現場の拠点数は3桁⇒漏れなく巡回しようとすれば、体力と気力の消耗
職務経験豊富な経営幹部といえでも、現場の大半はトップに立つまで足を運んだことすらないことが実情
A善い人でありたいという動機
〜組織の秩序を重視し、権限は可能な限り担当者に委譲したい
コーポレート・ガバナンスとは、このような特異な動機をを持ち、「あからさまでない怠業」を決め込みかねない経営者を、あたかも創業経営者のように振る舞わせるための工夫。

創業経営者の場合「社業=自分の人生の集大成」⇒最後の最後まで全身全霊を傾けてくる。
還暦前後になってはじめて経営者と呼ばれる人たちに同じ動機が成立する余地はない。

越えがたい壁が存在
    ●3 誰のためのコーポレート・ガバナンスか 
強力な現代企業の支配権を握った経営幹部を牽制するとき、誰を守ることを想定すべきか?
〜出口(=自らの判断において必要と思われるときに当該企業との関係を断つことができる)の有無。
IPO以前の株主:実質的には出口がある。
←彼らは往々にして支配権を保持し、ほかの大口株主と支配に関する意見が一致しない場合も、相手の持ち株を買い上げて膠着状態を打開する道が開かれている。
上場後の株主:名実ともに出口を持つ。
インサイダートレーディングのように知らないまま不利益をこうむる事態⇒企業側の情報開示を徹底し、経営幹部の背信行為を厳格に取り締まることで封じ込めることができる。
株主の不不利益は「あからさまでない怠業」に絞られる。
顧客:
購入するのをやめればいい=明確な出口を持つ。
耐久性が高く、購入頻度の低い産業材の顧客:
〜自己の利益を事前契約によって守る術を身に付けている。
⇒単発的な損害を未然に防止または回復するための情報開示、ならびに消費者保護の制度さえ充実さえsておけば、それを超える庇護は不要。
零細サプライヤー:
特定企業への依存度が高く、出口は狭い。
独占禁止法が一定の保護。
従業員:
職務内容の定義が曖昧な日本では、履歴書が履歴書として機能していない
⇒転職時に不当に評価が下がるリスク。
職を得ようとする者に開示されている情報は、あまりに少ない。
入口で合理的な選択をする術が十分に与えられていない現状では、庇護が足りない。
コミュニティも見過ごせない。
    ●4 CGコードの有用性 
環境ガバナンスや社会ガバナンスが世界中で注目されるのは、従来のCGが環境や社会をないがしろにしてきたと受け止められているから。
CGコードは、この面において不足。
基本原則を細則に落とし込むCGコード第二章:
経営理念と構成員が従うべき行動準則を策定し、あとは適切な対応を行うことを求めるだけ。
理念を高く掲げ、準則を緻密に作り込んだ企業が社会に迷惑をかける事例が後を絶たない
肝心なのは「適切な対応」で、その中身を具体的に記述しない限り、この細則の有用性には懸念が残る。
基本原則の三は「適切な情報開示と透明性の確保」を求めるが、そこでも情報を受け取る主体と想定されているのは株主だけで、潜在的な従業員に対する情報開示に関しては何の言及もない
「株主の権利・平等性の確保」についても、そのいずれも、それを細則に落とし込む第1章を構成するのは、@株主総会のあり方、A資本政策、B政策保有株式、C買収防衛策、D利益相反取引。
あたかも創業経営者のように経営幹部を振るまわせるための工夫とは認めがたい。
基本原則の四は「取締役会の責務」を定めているが、それを細則に落とし込む第四章を構成するのは、
@経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行う、
A健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを経営陣に対して行う、
B監督の実効性を高めるべく業績評価を行い結果を幹部人事に反映させる
の3点が柱。
取締役の立場を創業経営者の立場に近づける要素は皆無に等しく、経営幹部の「あからさなではない怠業」を一掃するのは難しい。
    ■二 日本再興戦略とCGコードの適合性 
    ●1 日本企業のローパフォーマンス 
日本企業は1980年前後に世界の主要市場で占有率を大幅に引き上げた。
売上高営業利益率は1980年前後を含めて一貫して低下。
バブル崩壊以降は、日本のGDPの成長率の低位安定を問題視する向きが多いが、調べてみると、日本の企業に関する限り成長率は必ずしも低下していないことがわかる。
日本企業の慢性的な低収益

@株主の財産を殖やすという観点からは疑問が残るのに、従業員のモチベーションを上げるという観点から許容されたプロジェクト
過剰は製品開発プロジェクト、過剰なマーケティングキャンペーン、過剰な値引きを伴う営業活動、無意味な研究開発プロジェクト、無意味な企業買収プロジェクト、無意味な組織横断型プロジェクト、無用なインターンシップ、無用な接待攻勢

単発では巨額にならないが、積もり重なると意外と無視できない⇒制御や管理が難しい。
資金の無駄遣いが人の無駄使いと連動。
従業員の献身に報いるコストとしてプロジェクト類は高くつぎすぎていないか。
本当に貢献した従業員に報酬で応えたほうが、あるかに安くつくのではないか。
なぜ、日本企業の経営幹部は、創業経営者なら目の敵にするような甘いプロジェクト類を放置するのか?
    ●2 旧来の日本型コーポレート・ガバナンス 
メインバンクによるコンティンジェンシー・ガバナンス
but
銀行から派遣された役員が最優先するのは債権の保全
幹部社員によるガバナンス
経営幹部といえど、精通するのは特定の事業部門と特定の機能分野だけで、それ以外については、別の専門家に依存せざるを得ない。
but
往々にして代表者間で部門利益の調整に終始する場となりかねないし、それを通して従業員の視点が経営を支配的に左右する機序となり得る。
それをガバナンスとみなすのは無理。
OBによるガバナンス。

社業に通じるOBの視点は、ガバナンスに近いものがある。
経営者の良心
but
日本の経営者は幾多の暴走を繰り返してきたという事実がある。
    ●3 CGコードの有用性 
独立社外取締役について、CGコードは、経営陣に助言を行い、持続的な成長を促し、企業価値の向上を図れ。

戦略系のコンサルティング会社が生業としてきた内容で、空論。
社業に精通する人々が真剣に取り組んでも実現できていない水準の成長性や収益性を、業務執行に携わらない部外者が達成する術を個人で開拓するとの前提は、果たして満たされるのか?
経営陣を監視し、必要とあれば彼らの選解任に踏み切れ。
but
月に1回か2回の出社で監督すること自体が難しい。
誰かを意に反して解任するとなると軋轢のほどは想像を絶する。
取締役会は企業家精神の発揮に資するように経営陣の報酬を決めよ
取締役会への出席という最低限の義務は果たすものの、それ以外に時間を使わない。取締役会では声を上げない、波を立てない、ただ睨みを利かしている。このような「あからさまでない怠業」を独立社外取締役に決め込まれては、CGコードは瞬時に有効性を失う。 
経営者に任せておいても実現できなかったことを、独立社外取締役に役者を入れ替えることで実現氏よ湯とするのがCGコード。
    ●4 今後の課題 
       
       
    ■米国会社・証取法判例研究No.347
Say on Pay 決議と取締役責任の関係 
    ■ニュース
 
    ■弁護士に活躍の場の広がりと今後の可能性 
       
    ■新商事法判例便覧No.687
2108  
    ◆座談会
最高経営責任者の選解任・後継者計画等をめぐる近時の潮流と課題 
    ■一 はじめに 
    ■二 最高経営責任者の選解任 
    ●1 最高経営責任者の選解任の法的枠組み 
    ●2 各機関設計における最高経営責任者の選任プロセスの法的背景 
    ●3 コーポレートガンバナンス・コードにおける最高経営責任者の選解任の位置づけ 
    ●4 日本型キャリアモデルとの関係 
    ●5 最高経営責任者の選解任に関する諸外国の考え方 
    ■三 最高経営責任者の選任 
    ●1 客観性・適時性・透明性 
    ●2 日本企業の取組み・改革状況の評価 
    ■四 最高経営責任者の解任 
    ●1 解任・解職の法的枠組み 
    ●2 解任手続の公正性・透明性 
    ●3 機関投資家・議決権行使助言会社の影響 
    ■五 最高経営責任者の後継者計画 
    ●1 後継者計画の意義 
    ●2 後継者計画の実務上の課題 
    ■六 社外取締役と後継者計画 
    ●1 社外取締役と後継者計画 
    ●2 社外取締役の継続性 
    ■七 おわりに 
       
    ■平成27年度会社法関係重要判例の分析(下) 
    ■情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律の概要(2・完) 
    ■平成28年改正銀行法・資金決済法等の実務的検討
フィンテックに取り組む上での検討事項を中心として 
    ■平成27年度における主要な企業結合事例 
    ■役員報酬改革における自社株報酬の選択肢と実務上の留意点 
    ■持ち株会社グループに関する法的・実務的論点の整理(下)
    ■本件6月総会における社外取締役の選任をめぐる実務動向(平成28年の状況) 
    ■実務問答会社法第2回
T 監査等委員会設置会社における重要な業務執行の決定の委任先等
U 監査等委員会設置会社の「経営の基本方針」決定の移行前の中長期の経営計画 
    ■ニュース
金融審議会「金融制度ワーキング・グループ」の第1回会議が開催される
監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会が開催される
証券取引等監視委員会、「金融商品取引法における課徴金事例集・・・不公正取引編〜」を公表
東証、上場会社における独立社外取締役の選任状況を公表
日本証券業協会、「協会員のアナリストによる発行体への取材等及び情報伝達行為に関するガイドライン(案)」で意見照会
日本公認会計士協会総会が開催される
平成28年6月定時株主総会の概況 
    ■スクランブル:「監査法人のガバナンス・コード」策定における上場企業と監査法人との対話の重要性 
       
7月   
2107
    ■平成27年度会社法関係重要判例の分析(上) 
    ■情報通信技術の進展等の環境変化に対オするための銀行法等の一部を改正する法律の概要(1)
    ■取締役会実効性評価をめぐる各社の取組み(2)
指名委員会等設置会社・エーザイの取組み 
    ■持株会社グループに関する法的・実務的論点の整理(上) 
    ■米国会社・証取法判例研究No.346
遠隔の情報受領者によるインサイダー取引 
    ■ニュース
公正取引委員会、「課徴金制度の在り方に関する論点整理」で意見照会
国税庁、法人税基本通達等の一部改正を公表
日本公認会計士協会、「監査提言集」を公表
法務省、民法(相続関係)等の改正に関する中間試案で意見照会 
    ■スクランブル:日本版司法取引制度が企業のコンプライアンス体制充実に与える影響 
    ■新商事判例便覧No.686 
2106
    ■議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えの適否(最高裁H28.3.4判決) 
    ■取締役会実効性評価をめぐる各社の取組み(1)
監査役会設置会社・花王の取組み 
    ■任意の指名・報酬委員会の実務
CGコード適用開始1年後の現状と留意点
    ■合意制度の概要と企業における対応課題・・・いわゆる日本版司法取引の導入を受けて 
    ■保険業法改正後における募集関連行為に関する諸論点
・・・保険募集以外の事業を営む者との業務提携による着眼点 
    ■商事法判例研究No.600 
人身傷害条項に基づく支払いにより保険会社が代位取得する請求権の範囲
    ■ニュース
消費者庁、「公益通報保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業向けガイドライン」(素案)で意見照会
CGS研究会の第1回会議が開催される
Fintechの課題と今後の方向性に関する検討会合の第1回会合が開催される
    ■スクランブル:
株主総会プロセスの電子化と株主との対話の促進策 
2105   
    ■金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告の概要 
    ■実務問答会社法第1回
機関設計の移行における各機関の同意等の手続 
    ■インフラファンドの上場制度の概要 
    ■インフラファンド市場への上場に係る実務上の留意点 
    ■「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」報告書の概要(下) 
    ■各種インセンティブ・プランの比較と時価発行新株予約権信託の最新動向 
    ■ニュース
金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案で意見照会
証券取引等監視委員会、平成27年度の活動状況を公表
東証等、平成27年度会社分布状況調査の調査結果を公表
平成28年5月定時株主総会の概況 
    ◆スクランブル:コンプライアンス経営を支える公益通報者保護法
  消費者庁では、消費者基本計画の「消費者団体、事業者・事業者団体等による自主的な取組の支援・促進」の項に掲げられた公益通報者保護法(「保護法」)の見直しの検討。 
  平成14年に米国でエンロン等の巨額不正会計事件⇒SOX法⇒財務に関する不正・疑義等の情報を監査委員会が収集する内部通報制度が導入。
⇒2年後に日本で保護法が制定。
but密告奨励という暗いイメージ。
不正競争防止法改正で刑事罰(営業秘密侵害罪)が導入。
経済産業省は、違法行為の内部告発(すなわち、保護法の保護対象)は営業秘密に該当せず、企業の不正を隠滅することはない旨を強調して同法の改正を進めた。
内部通報制度が企業の自己浄化能力を強化し、コンプライアンス経営に寄与する点を肯定的に評価する企業が増え始めている。
  企業の経営管理の体系は、@「理念、方針」、A「全社の制度・規程」、B「個別業務の標準・基準」、C「現場の作業マニュアル等」の四層になっている。 
これに準拠して行う業務に関する情報は、
@組織を経由、または、A現場の担当者から直接入手(監査・内部通報を含む)する方法で所定の部門に集約され、整理・分析・評価されて、最終的に取締役・監査役等に伝達される。
企業の内部通報の窓口は総務・法務等の部門に設置される例が多いが、コードは、業務を執行する経営陣から独立した窓口(社外取締役と監査役の合議体等)を推している。
社外監査役を含む監査役は法令に基づいて大きな調査権限と違法行為等の差止請求権を持つ⇒米国のSOX法にならって窓口を担当する立場にある。
  通報窓口や監査等の役割を担うことになる取締役・監査役について、コードは、それぞれに適合した「トレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援」と「会社の事業・財務・組織等に関する必要な知識を取得し・・・求められる役割と責務(法的責任を含む)を十分に理解する機会」を与えることを求め、「トレーニングの方針について開示を行う」ことを求めている。 
  企業の違法行為・自己等の不祥事を隠滅するのが不可能な時代になっている。 
平成17年の独禁法改正で課徴金減免制度⇒カルテル等の加担者によるリニエンシーが増えている。
今年は、捜査機関に他人の犯罪を告白する見返りに起訴の見送りや求刑を軽減する司法取引制度の導入が成立。

企業の税法違反、、独占禁止法違反、汚職、文書偽造、詐欺、横領、粉飾決算、インサイダー取引等の機微情報が刑事法廷で明らかになる機会が増える。
国際的にも、企業の不正を明らかにして排除しようとする動きが活発。
TPP協定は、加盟国が詐欺的または欺瞞的な商業活動を規制する消費者保護の法律を制定し、加盟国間で協力・調整等すべきことを定めている。
OECD多国籍企業行動指針は、情報開示、雇用、納税等について企業行動のあり方を勧告し。
現在、国際税務コンプライアンス基準を検討している企業もある。
  企業経営では、経営管理を構成する四層の内容が、それぞれ最近の社会の要請に整合していることを確かめて適宜是正すると同時に、内部通報や監査から得た情報を、経営判断に用いる社内情報の正確性を担保するためのフィルターとして有効に機能させる仕組み(適材の配置を含む)を構築することが必要。
6月   
2104
    ■「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」報告書の概要(上)・・・対話先進国の実現に向けて 
    ■監査等委員会設置会社における任意の指名委員会・報酬委員会等の位置づけと運用 
    ■表明保証保険の実務的考察・・・引受保険会社の視点から 
    ■米国会社・証取法判例研究No.345
特定の株主と株式の売買を行う株主等の開示義務 
    ■ニュース
金融庁、「決済高度化官民推進会議」を設置
公正取引委員会、平成27年度主要企業結合事例を公表
東証、平成28年3月期決算瑕疵はの定時株主総会開催日の集計結果を公表 
    ■スクランブル:目覚めるガバナンス 
    ■新商事法便覧No.685 
2103   
    ■政策保有株式の売却に係る法的留意点 
    ■東京大学比較法政シンポジウム:
ダブルコード時代の攻めのコーポレートガバナンス 
    ■攻めのガバナンス実現に向けた上場企業法制 
    ◆総括に代えて(神田)
■コーポレートガバナンスとはどういう問題であって、答えはあるのか 
株式会社とうい法的な仕組みは、事業を行うための仕掛けであり、ツール。
but
欠点だらけの仕組みで、問題を起こす。
それを解決するのがガバナンス。
答えはあるかもしれないが、1つではない。
制度と実務の組合せであり、その結果出てくる答えは、企業によって異なる。
ガバナンスを担う者の役割分担の最適組合せは、答えはでていない。
制度は変わり続け、そのもとでどうやるかという話。
■なぜ今、コーポレートガバナンスを議論しなければならないのか、そして実践しなければならないのか。 
不祥事が起きる⇒守りのガバナンスを議論しなくてはならない。
企業が成長しない⇒攻めのガバナンスを議論し実践しなければならない。
高度成長していた時代には攻めのガバナンスの議論は不要。
    ■日本版リストリクテッド・ストックの導入(下)
譲渡制限付株式報酬導入に係る実務上の留意点 
    ■商事法判例研究No.599
日本版ESOPと新株の不公正発行 
    ■ニュース
第190回通常国会で成立した主な法律
「日本再興戦略2016」を閣議決定
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の第8回会議が開催される 
    ■スクランブル グローバル課税の適正化に向けたOECDプロジェクトと国際課税制度の再構築 
2102   
    ■日本版リストリクテッド・ストックの導入(上)・・・譲渡制限付株式報酬導入にかかる実務上の留意点 
    ■企業法務の視点・・・2016年第1四半期の話題 
    ■東京大学比較法制シンポジウム
ダブルコード時代の攻めのコーポレートガバナンス
攻めのコーポレートガバナンスに向けた企業の取組について・・・監査等委員会設置会社への移行を中心に 
    ■攻めのコーポレートガバナンスのための役員報酬改革 
    ■ニュース 
東京地裁:ジュピターテレコム株式に係る株式取得対価請求反訴事件で株主側の請求を認容する判決
情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律が成立
刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立
金融庁、日東電工株式に係る相場操縦に関する課徴金納付命令の勧告事案で審判期日を開催
平成27年の株主代表訴訟の新受件数は59件
平成28年4月の株主総会の概況
    ■裁量型課徴金制度において想定される事業者の調査協力の内容と課題
5月分   
2101
    ■東京大学比較法制シンポジウム
ダブルコード時代の攻めのコーポレートガバナンス
ダブルコード適用下のコーポレートガバナンスにかかわる制度面の動向
ダブルコード時代の機関投資家の取組みについて
    ■座談会
コーポレート・ガバナンスの潮流と上場企業の課題(下) 
    ■新しいD&O保険への実務対応(下)
・・・保険料全額会社負担の解禁を受けて 
    ■適格機関投資家安堵特例業務を行う特例業務届出者がとるべき実務上の対応(下)
・・・・平成27年金融商品取引法改正を踏まえて 
    ■米国会社・証取法判例研究No.344
監視義務違反を理由として取締役に損害賠償を求める株主代表訴訟を提起した原告に対して再訴不可能な訴え却下がなされた事案 
    ■ニュース
東京地裁、グッドマンジャパン株式に係る端数株式売却代金および会社法172条2項における利息請求事件で取得日から支払日までの利息を除く原告のその余の請求を棄却する判決。
金融庁、金融審議会「市場ワーキング・グループ」の第1回会議を開催。
金融庁、「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」の第1回会議を開催 
    ■スクランブル:株式報酬に関する税制改正と報酬開示規制
    ■新商事判例便覧No.684
2100   
    ■座談会:
コーポレート・ガバナンスの潮流と上場企業の課題(上) 
    ■TOPIX100構成銘柄企業のコーポレートガバナンス・コード対応の対応
・・・ガバナンス報告書の開示時効を中心に 
    ■「攻めの経営」を促すインセンティブ報酬
・・・新たな株式報酬(いわゆるリストリクテッド・ストック)
    ■適格機関投資家等特例業務の制度改正を踏まえた監督上の着眼点等 
    ■適格機関投資家等特例業務を行う特例業務届出者がとるべき実務上の対応(上)・・・平成27年金融商品取引法改正を踏まえて 
    ■株主総会白書データから読み取る株主総会の実像
    ■新しいD&O保険への実務対応(上)
・・・保険料全額会社負担の解禁を受けて 
    ■商事法判例研究No.598
子会社管理にかかる親会社取締役の責任(福岡魚市場株主代表訴訟事件控訴審判決) 
    ■鴻常夫先生を偲ぶ 
    ■ニュース
東京地裁、ソラスト株式に係る端数株式売却代金および会社法172条2項における利息請求事件で原告の請求を棄却する判決
金融審議会総会・金融分科会合同会合が開催される
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の第7回会議が開催される
「商業登記規則等の一部を改正する省令」が交付される
経済産業省、「地域を支えるサービス事業主体のあり方に関する研究会」報告書を公表
全国株懇連合会、定款・株式取扱規程の変更を公表
企業会計基準委員会、「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」を公表
平成28年3月定時株主総会の概況
    ■スクランブル:ASEAN諸国と日本の信頼関係構築と企業法制をめぐる国家間競争 
4月分
2099
    ■監査等委員会設置会社の監査体制 
    ■平成28年株主総会の実務対応(9)
株主総会終了後の実務
    ■「商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱」が企業実務に与える影響・・海商関係を中心に
    ■株主等の代表訴訟と訴訟参加(下)・・・平成26年改正会社法の影響
    ■米国会社・証取法判例研究No.343
世界的金融危機と連邦法の優先
    ■ニュース:
金融庁、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の第5回会議を開催 
経済産業省、「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」の第6回会議を開催
法務省、塀絵師28年司法試験の出願状況を公表
日本公認会計士協会、「2016年版 上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書」を公表
    ■スクランブル:商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱の実務上把握すべきポイント
    ■新商事法判例便覧:No.683 
2098   
    ■平成28年株主総会の実務対応(8)
株主総会で想定される質問と回答例 
    ■コーポレートガバナンス・コード施行を踏まえた有価証券報告書の記載の見直し 
    ■株主等の代表訴訟と訴訟参加(上)・・・平成26年改正会社法の影響 
    ■上場企業法制における企業の中長期的利益とショートターミズムとの調整(下)・・・最近の欧米の議論の様相から
    ■商事法判例研究No.597
利益相反取引と取締役の責任 
    ■ニュース
東京高裁、Y社および同社の下取締役等に係る独占禁止法違反被告事件で同社らの控訴を棄却する判決
平成28年度税制改正法案が成立 
    ■スクランブル:消費者契約法の一部改正法案のポイントと企業法務への影響 
2097   
    ■勧告事案を踏まえたインサイダー取引規制適用の考察(2・完)
インサイダー取引規制におけるバスケット条項の適用 
    ■平成28年株主総会の実務対応(7)
監査等委員会設置会社への移行および移行後の株主総会の留意点 
    ■上場企業法制における企業の中長期的利益とショートターミズムとの調整(上)
最近の欧米の議論の諸相から 
    ■米国司法省が求める「実効性のある」コンプライアンスプログラムについて
    ■独占禁止法に関する論点の解説(13・完)
独占禁止法の国際的な執行 
    ■ニュース
    ■スクランブル:組織再編成に係る一般的行為計算否認規定をめぐる初の最高裁判決 
3月   
2096
    ■勧誘事案を踏まえたインサイダー取引規制適用の考察(1)
インサイダー取引規制における「情報伝達・取引推奨規制」の適用 
    ■平成28年株主総会の実務対応(6)
株主総会における議事運営
    ■最高経営責任者の選任およびその前提となる後継者計画について
・・・・持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けた後継者の創り方 
    ■平成27年改正金融証券取引法に係る政府令等の改正の解説(下) 
    ■米国会社・証券取引判例研究No.342 
    ■ニュース
金融庁、「会計監査の在り方に関する懇談会」提言を公表
金融庁、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の第4回会議を開催
経済産業省、純粋持ち株会社実態調査結果を公表
日本犬団連、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」を公表
IOSC「証券市場のリスク・アウトルック2016」を公表
    ■新商事判例便覧No.682 
2095   
  ■平成27年改正金融商品取引法に係る政府令等の改正の解説(上)・・・適格機関投資家等特例業務の見直し等
    ■平成28年株主総会の実務対応(5)
事業報告作成上の留意点 
    ■不祥事に伴う株価下落による外国人株主からの提訴リスクの整理 
    ■シャルレMBO株主代表訴訟事件控訴審判決の検討 
    ■商事法判例研究No.596
不成功に終わったMBOにおける対象会社取締役の対第三者責任 
    ■ニュース 
国税庁「新たな会社役員賠償責任の保険料の税務上の取扱いについて(情報)」を公表
経済産業省、「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」の第4回会議を開催
公正取引委員会、「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会」を開催
金融庁、ゲームオン株式に係るインサイダー取引に関する課徴金納付命令の韓国事案で審判期日を開催
    ■スクランブル:インセンティブ型報酬の導入促進に向けた税制改正と今後の課題 
2094
    ◆平成28年株主総会の実務対応(4)
会計監査人の選解任等に関する監査役会等の実務対応 
    ■一 はじめに 
    ■二 会計監査人の選解任等に関する規律 
    ●1 会社法の改正後の規律 
    ◎(1) 会社法 
    会社法 第三二九条(選任)
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
会社法 第三三九条(解任)
役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
会社法 第三三八条(会計監査人の任期)
会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。
会社法 第三九九条(会計監査人の報酬等の決定に関する監査役の関与)
取締役は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
2監査役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査役会」とする。
会社法 第三四〇条(監査役等による会計監査人の解任)
監査役は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができる。
一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。
二 会計監査人としてふさわしくない非行があったとき。
三 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
会社法 第三四四条(会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定)
監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定する。

2監査役が二人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監査役が」とあるのは、「監査役の過半数をもって」とする。
3監査役会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。
    会計監査人は、
株主総会の決議により選任ないし解任され(会社法329条1項、339条1項)
選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、再任されたものとみなされる(同法338条2項)。 
(会計監査人が職務上の義務に違反した場合等、一定の事由に該当する場合には、監査役、監査等委員または監査委員の全員の同意による解任も認められている(法340条))
改正法で、監査役設置会社においては、会計監査人の選解任等に関する議案の内容を決定する権限を、監査役(会)に付与(会社法344条1項、3項)
    ◎(2) 会社法施行規則 
    会社法施行規則 第七七条(会計監査人の選任に関する議案)
取締役会計監査人の選任に関する議案を提出する場合には、株主総会参考書類には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
三 監査役(監査役会設置会社にあっては監査役会、監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)が当該候補者を会計監査人の候補者とした理由
会社法施行規則 第八一条(会計監査人の解任又は不再任に関する議案)
取締役会計監査人の解任又は不再任に関する議案を提出する場合には、株主総会参考書類には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
二 監査役(監査役会設置会社にあっては監査役会、監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)が議案の内容を決定した理由
会社法施行規則 第一二六条
株式会社が当該事業年度の末日において会計監査人設置会社である場合には、次に掲げる事項(株式会社が当該事業年度の末日において公開会社でない場合にあっては、第二号から第四号までに掲げる事項を除く。)を事業報告の内容としなければならない。
二 当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等の額及び当該報酬等について監査役(監査役会設置会社にあっては監査役会、監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)が法第三百九十九条第一項の同意をした理由

四 会計監査人の解任又は不再任の決定の方針
    @会計監査人の選任議案に関する株主総会参考の記載事項として、監査役等が当該候補者を会計監査人の候補者とした理由の記載が求められ(施行規則77条3号)
A会計監査人の解任または不再任議案に関する株主総会参考書類の記載事項として、監査役等が議案の内容を決定した理由の記載が求められ(施行規則81条2号)
B事業報告の記載内容として、当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等について監査役等が同意をした理由の記載を求める(施行規則126条2号)
C会計監査人の解任または不再任の決定の方針については、事業報告に記載(施行規則126条4号)
    ●2 CGコード 
    ◎(1) 補充原則3−2@およびA 
【原則3−2.外部会計監査人】
外部会計監査人及び上場会社は、外部会計監査人が株主・投資家に対して責務を負っていることを認識し、適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うべきである。
補充原則
3−2@ 監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきである。
(@) 外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切に評価するための基準の策定
(A) 外部会計監査人に求められる独立性と専門性を有しているか否かについての確認

3−2A 取締役会及び監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきである。
(@) 高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保
(A) 外部会計監査人からCEO・CFO等の経営陣幹部へのアクセス(面談等)の確保
(B) 外部会計監査人と監査役(監査役会への出席を含む)、内部監査部門や社外取締役との十分な連携の確保
(C) 外部会計監査人が不正を発見し適切な対応を求めた場合や、不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体制の確立
○  CGコードの原則3−2は、外部会計監査人および上場会社は、外務会計監査人の株主および投資家に対する責務を認識し、適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うべきであるとする。

補充原則3−2@は、
監査役会に、
@外部会計監査人候補を適切に選定し、外部会計監査人を適切に評価するための基準の策定を求める。

外部会計監査人が上場会社の開示する情報の信頼性確保のために選任されており、当該情報の利用者である株主等に対する責務を負っていると考えられることから、適正な監査の確保を目的として、外部会計監査人の選解任等のプロセスに客観性を求めるもの。
会社法上の事業報告書で開示される会計監査人の解任又は不再任の決定の方針(施行規則126条4号)は、本補充原則に基づいて策定されることになる基準の一部。
A外部会計監査人に求められる独立性と専門性を有しているかについて確認を行うべきであるとする。
補充原則3−2Aは、
取締役会および監査役会に対して、
「(@) 高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保
(A) 外部会計監査人からCEO・CFO等の経営陣幹部へのアクセス(面談等)の確保
(B) 外部会計監査人と監査役(監査役会への出席を含む)、内部監査部門や社外取締役との十分な連携の確保
(C) 外部会計監査人が不正を発見し適切な対応を求めた場合や、不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体制の確立」
を求めている。
(B)について、
@外部会計監査人と社外取締役との間の定期的な意見交換の機会を設定すること(外部会計監査人と監査役との定期的bな面談の機会に、社外取締役が同席する形もあり得るだろう)が最も適切な対応であるが、
A少なくとも、社外取締役または外部会計監査人から要請があった場合には、速やかに両者の面談が設定される体制が構築されていることが望ましい。
    ◎(2) 実務の運用状況 
    ■三 会計監査人の選解任等に関する検討プロセス 
    ●1 会計監査人の評価および選定に関する基準の策定 
    会計監査人の評価および選定に関する基準を策定
日本監査役協会が昨年11月10日に公表した「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」
評価基準項目例:14項目
選定基準項目例:7項目
    ●2 具体的な検討プロセス 
    ◎(1) 評価に関するプロセス 
T:評価および選定に関する基準の策定
U:当該基準を用いて現任の会計監査人の評価を行う
〜監査役等はこの評価のプロセスを可能な限り可視化し、記録を作成、保持。
V:評価について、監査役会等における審議を経ることが望ましい。
審議の内容および評価の結果については議事録に記載。
W:監査役会等における内規または申合せ事項として「会計監査人の評価および選定手続」を定めておくことが有用。
@会計監査人の評価および選定に関する基準に基づく情報収集(前年7月〜3月末)
A@により得た情報の分析ならびに当期の会計監査の問題点および課題の把握(3月末〜5月上旬)
B執行部門(特にCFOおよび財務・経理部門)からの会計監査人の監査の質および問題点等に関する意見聴取(4月〜5月上旬)
C監査報酬の水準に関する情報収集(4月下旬〜7月ごろ)
といったプロセスを、年間を通じたスケジュールも念頭に置きつつ、具体的な手続として定めておく
以上の評価の結果監査役会等が、現認の会計監査人の再任が相当と判断⇒取締役会に対し、会計監査人の選解任等に関する議案内容の決定権を行使しない旨の連絡。
以上の会計監査人の評価の結果は、次年度における会計監査人の報酬等についての同意見(会社法399条)の行使に際しても有用な情報。
    ◎(2) 選定に関するプロセス 
会計監査人の選定に要する期間や、監査役会等の開催が通常月1回
⇒6月総会会社であれば、遅くとも株主総会の議案が固まる時期(通常5月上旬)の2か月くらい前には、現在の会計監査人についての評価を大筋で固めておく必要。
    ●3 会計監査人に対する行政処分の影響 
    ■四 株主総会における説明内容と株主からの質問等への対応 
       
    ■D&O保険の国際化における視点と課題 
    ■2016年グラス・ルイス議決権行使助言方針と日本のコーポレート・ガバナンス改革
    ■独占禁止法に関する論点の解説(12)
課徴金減免申請 
    ■ニュース:
法制審議会、「商法(運送、海商関係)等の改正に関する要綱」を答申
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の第6回会議が開催される
金融庁、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の第3回会議を開催
平成28年1月提示株主総会の概況 
    ■スクランブル:内部監査が懸け橋となる自律的、他律的チェック機能の有機的統合 
      内部監査:
組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、
合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連する経営書活動の遂行状況を、内部監査人としての規律遵守の態度をもって評価し、これに基づいて客観的意見を述べ、助言・勧告を行うシュアランス業務、および特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務。
     
2月
2093
    ■平成28年度株主総会の実務対応(3)
株主総会参考書類作成上の留意点(役員選任議案以外) 
    ■「株主から剰余金の配当に関する提案が行われた場合の標準モデル」の解説
    ■2016年ISS議決権行使助言方針・・・背景にある考え方 
    ■企業集団における内部統制の研究(6)(7・完) 
■企業集団における内部監査機能の実態と課題
    ■米国会社・証取法判例研究No.341
株主の文書閲覧権と「正当な目的」の立証
    ■ニュース:
金融審議会総会・金融分科会合同会合が開催される
経済産業省、持続的な価値創造に向けた投資のあり方検討会を設置
公正取引委員会、独占禁止法研究会を開催
日本経済団体連合会、全国株懇連合会、証券保管振替機構、「株主から剰余金の配当に関する提案が行われた場合の標準モデル」を公表
全国株懇連合会、「議決権行使書面モデル」等を一部改正 
    ■スクランブル:会計監査の信頼回復に必要な監査の市場競争
    ■新商事判例便覧No.681 
2092   
    ■平成28年株主総会の実務対応(2)
役員選任議案に係る実務上の留意点 
    ■企業集団における内部統制の研究(4)(5) 
    ■海外子会社等による贈収賄リスクと内部統制 
    ■裁判例にみる企業集団と内部統制 
    ■特設注意市場銘柄制度の実務と運用実績 
    ■商事法判例研究 
新株予約券の行使条件変更の効力と行使条件に違反する行使に基づく新株発行の効力
    ■ニュース
第190回通常国会に内閣が提出予定の法律案
平成27年金融商品取引法改正に係る政令・内閣府令の一部改正府令が交付される
経済産業省、「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」の第3回会議を開催
日本公認会計士協会、会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」等を公表
企業会計基準委員会、収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見照会 
    ■スクランブル:債権法改正案の早期成立への期待を企業法務への影響 
  最高裁大法廷判決を受けた再婚禁止期間の見直しなども予定。
法案成立も、施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内の日(改正法案附則1条)⇒平成31年〜32年頃と予想。 
  ●コーポレート: 
消滅時効に関する改正〜現行の10年から5年に短縮
役員の任務懈怠に基づく株式会社に対する損害賠償責任は現行の10年⇒5年に短縮。
不当利得返還請求権も同様。
  ●M&A: 
債権譲渡の対抗要件の変更
事業譲渡〜債権を譲渡する場合には当該対抗要件を備える必要。
債権譲渡の対抗要件について、債務者の異議なき承諾による抗弁の切断が廃止⇒債務者の抗弁を切断するために別途手当てが必要。
  ●その他 
売買契約における売主の担保責任は、債務不履行責任として構成。
動機の錯誤が明文化されるとともに、錯誤の効果が無効ではなく取消しに変更。
表明保証条項は、担保責任と類似の機能しており、また、動機の錯誤が合わせて問題となる場面に適用され得る
⇒担保責任・錯誤に関する影響とそれに対する契約上の手当て
               
2091   
    ◆平成28年株主総会の実務対応(1)
本年定時株主総会に向けての留意点 
    ■一 はじめに 
    ■二 適法性を確保するための総会準備・・・平成26年会社法改正対応を中心に 
    ●1 事業報告 
会社法施行規則118条
事業報告は、次に掲げる事項をその内容としなければならない。

 法第三百四十八条第三項第四号、第三百六十二条第四項第六号、第三百九十九条の十三第一項第一号ロ及びハ並びに第四百十六条第一項第一号ロ及びホに規定する体制の整備についての決定又は決議があるときは、その決定又は決議の内容の概要及び当該体制の運用状況の概要
会社法施行規則126条
株式会社が当該事業年度の末日において会計監査人設置会社である場合には、次に掲げる事項(株式会社が当該事業年度の末日において公開会社でない場合にあっては、第二号から第四号までに掲げる事項を除く。)を事業報告の内容としなければならない。
 当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等の額及び当該報酬等について監査役(監査役会設置会社にあっては監査役会、監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)が法第三百九十九条第一項の同意をした理由
会社法399条
取締役は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
2監査役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査役会」とする。
T内部統制システムの運用状況の概要(会社法施行規則118条2号)
U会計監査人の報酬等について監査役等が同意した理由(同規則126条2号)
を記載することが必要。
Tについては、会社において適宜適切に内部統制システムの運用状況(厳密には5月1日以降の運用状況)がモニタリングされ、その概要が取締役会や監査役会に定期的に報告されていることを前提に、報告されている内容を事業報告に概要として整理する作業が必要。
平成27年8月総会以降に提出された事業報告の記載例を参考。
Uについては、日本監査役協会が平成27年11月10日に公表した「会計監査人の評価及び選定基準策定策定に関する監査役等の実務指針」、第1部、第3部を踏まえた評価。
その上で、記載事例を参考に記載のあり方を検討。
「監査役会は、軽軽監査人の監査計画の内容、会計監査の職務遂行状況および報酬見積もりの算定根拠などが適切であるかどうかについて必要な検証を行った上で、会計監査人の報酬等の額について同意の判断をした」
社外役員に関する記載のうち、配偶者、親族(会社法施行規則124条1項3号)、親会社等からの報酬受領(同項7号)に関する記載が拡充。
特定完全子会社がある会社においては、特定完全子会社およびその株式の帳簿価額に関する事項(同規則118条4号)
親会社等がある会社においては、親会社等との取引に関する事項(同条5号)
監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社のいては、常勤監査(等)委員の有無およびその理由(同規則121条10号イ・ロ)
    ●2 株主総会参考書類 
昨年相当する議案を付議しなかった会社は、本年総会で初めて、平成26年会社法改正に対応した株主総会参考書類を作成する必要。
役員選任議案に関するもの。 
会計監査人選任議案に、監査役会等が当該候補者を会計監査人の候補者とした理由を記載。
会計監査人評価・選定基準実策定実務指針第2部を踏まえた選定のための評価を行っていることを前提として、記載内容を検討。
(既に先例あり)
    昨年、監査等委員会設置会社に移行した会社。 
    ●3 その他 
    4月決算までの会社は、社外取締役、社外監査役の要件に関する経過措置が本年の定時株主総会終結時に終了(会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)附則4条)。
⇒社外取締役や社外監査役の数が減少する会社では法定要件を充足できるように社外取締役、社外監査役を選任することが必要。 
    本年総会に会計監査人選任議案を提出しない場合でも、監査役会において会計監査人の再任を決定する必要。
監査役会等において会計監査人評価・選定基準策定実務指針第1部を踏まえた評価を尽くすることが全体。
監査法人の品質管理を十分に検証し、想定問答等を用意。 
    株主提案。
    ■三 コードを踏まえた総会準備 
    ●1 議案の選定・内容の決定 
ガバナンスの仕組みをどうするか、取締役会をどういう構成にするか、インセンティブとしての報酬をどう設計するか、資本政策の一環として剰余金処分をどうするかといったことは、すべて議案に帰結。
    ◎(1) ガバナンスの仕組みにかかわる議案 
    ◎(2) 報酬議案 
    ◎(3) 剰余金処分案 
    ●2 株主総会の手続面での充実および整備 
    ◎(1) 実質株主の総会出席要請への対応方針の検討 
    ◎(2) 総会関係書類の充実 
    ■四 投資家との対話の充実 
    ■五 監査等委員会設置会社におけるはじめての定時株主総会 
    ■六 その他 
    ■コーポレート・ガバナンス報告書に基づく機関投資家等との対話・・・監査役会設置会社・新日鐵住金の取組み 
    ■企業集団における内部統制の研究(2)(3) 
    ■企業集団における内部統制概念の展開 
    ■企業集団における内部統制の整備と運用(実態) 
    ■独占禁止法に関する論点の解説(11)
課徴金納付命令における業種認定 
    ■ニュース
東京地裁、ライブドアの有価証券報告書虚偽記載等に係る損害賠償請求事件で原告の請求を一部認容する判決
法務省、商業登記規則等の一部を改正する省令案で意見照会
法制審議会商法(運送・海商関係)部会の第17回会議が開かれる
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の第5回会議が開催される
商事法務研究会、「会社法研究会」を設置し第1回会合を開催へ
平成27年12月定時株主総会の概況 
    ■スクランブル:コーポレートガバナンス・コードと法務部門のリーダーシップ 
1月   
2090   
    ◆企業集団における内部統制の研究(1)
会社法の下での企業集団における内部統制・・・問題の所在といくつかの特徴 
  ■1 平成26年会社法改正と平成27年会社法施行規則改正 
大会社である取締役会設置会社においては、平成26年会社法改正により、取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務ならびに当該株式会社およびその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制(「内部統制等の体制」)の整備を取締役会において決定すべき旨が、会社法において明示的に規定。
平成27年会社法施行規則改正により「企業集団における業務の適正を確保するための体制」の運用状況の概要が、事業報告の内容に追加。
⇒字牛報告の記載について取締役会または監査役・監査等委員会・監査委員会はどのようにチェックすべきか。
  ■2 親会社(取締役・執行役)の子会社監督責任
  ■3 内部統制等の整備・構築に係る任務 
東京地裁H26.9.25:
取締役会の構成員としてリスク管理体制の大綱を決定し、代表取締役又は業務担当取締役としてリスク管理体制を構築すべき義務を負い、さらには取締役として代表取締役又は業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務の履行状況を監視する義務を負うものと解するのが相当。
大阪地裁H25.12.26:
「監査役は、取締役に対する業務監査権限に基づく善管注意義務の一環として、取締役がリスク管理体制を構築する義務を果たしているか、構築したリスク管理体制が妥当なものであるかにつちえ監視することが義務付けられている。そして、監査役は、会社において、リスク管理体制が構築されていない場合や、これが構築されていたとしても不十分なものである場合には、取締役に対して、適切なリスク管理体制の構築を勧告すべき義務を負う」
  ■4 内部統制等の体制の運用状況の開示 
常勤監査役は事業報告に記載されているように内部統制システムが運用されていることを、どのように確かめたらよいか?
大阪高裁H27.5.21:
会社が、日本監査役協会が定めた・・・・「内部統制システムに係る監査の実施基準」に準拠して・・・・・本件内部統制システム監査の実施基準を定めていることからすると、監査役の義務違反の有無は、・・・・本件内部統制システム監査の実施基準に基づいて判断されるべきであるということができる」と判示。
東京地裁H25.10.15:
監査役による監査の指針としては、社団法人日本監査役協会が監査役監査基準を作成し、公表しており、同監査役監査基準は、法令そのものではないが、ほんけんにおけるY1らの監査役としての注意義務の内容を検討するにあたって考慮すべきものと考えられる
大阪地裁H25.12.26:
当該会社で監査役監査規定が定められていたという事実の下で、「監査役として、監査役監査規程に明示されている職務をしない理由にはならない」
  財務報告に係る内部統制以外の内部統制等の体制は、会計監査人の監査の対象となっていない。 
大阪地裁H25.12.26:
「A監査法人は、Xの会計監査人として、金融商品取引法24条の4の4に基づき、会社の財務計算に関する書類等の情報の適正性を確保するための体制を適切に構築しているかという点について意見を述べているにすぎず、取締役等の違法・不当な行為を防止するためのリスク管理体制を適切に構築しているかという点について適正意見を述べているものではない。したがって、上記無限定適正意見を前提として、Xが十分にリスク管理体制を構築していたと認める根拠はない」
  ■5 信頼の権利と内部監査部門など 
  ■6 子会社の内部統制等の体制に関する親会社の内部統制等の体制の整備 
  ■7 子会社の内部統制等の体制の整備と親会社の監査役等の任務 
  ■8 海外子会社の問題 
    ■会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令の解説・・・平成28年法務省令第1号 
    ■資料
会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令新旧対照条文 
    ■ガバナンス体制の充実に向けた検討・・・各社へのインタビューを終えて 
    ■新春座談会:
ハイブリッドモデルの取締役会等における経営判断と攻めのガバナンス(下)
果断なリスク・テイクとブレーキの発揮のために 
    ■公益信託法改正研究会報告書の概要 
    ■独占禁止法に関する論点の解説(10)
課徴金納付命令(私的独占、不公正な取引方法)の課徴金算定・・・優越的地位の濫用を中心に 
    ■米国会社・証取法判例研究No.340
追加的情報開示義務にもとづき合併承認決議の予備的差止めが認められた事例
    ■ニュース:
ISS、2016年議決権行使助言基準の日本語訳を公表
企業会計基準委員会、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(適用指針第26号)を公表
日本公認会計士協会、監査実施状況調査結果を公表
公正取引委員会、独占禁止法審査手続に関する指針を公表
    ■スクランブル:TPPで問われるわが国の課徴金制度の透明性 
    ■新商事判例便覧No.680 
2089   
    ◆新春座談会
ハイブリッドモデルの取締役会等における経営判断と攻めのガバナンス(上)
果断なリスク・テイクとブレーキの発揮のために 
    ◆2016年商事法務展望 
    ■民事基本法制の立法動向等 
    ■会社法制に関する今後の動向 
    ■商法(運送・海商関係)の改正に関する動向 
    ■商業・法人登記制度をめぐる最近の動向 
    ■司法制度改革の進展と展望 
    ■金融・資本市場制度等をめぐる現状と展望 
    ■ディスクロージャー・企業会計等をめぐる動向
  ■    ■産業組織関連法制の課題 
    ■平成28年における株式実務の課題と対応 
  ■    ■経済界からみた企業法務の視点からの課題 
  ■    ■商事法判例研究No.594
株式買取請求に係る買取価格決定申立てと個別株主通知
ACデコール定款変更反対株主の株式買取価格決定申立事件 
    ■ニュース
会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令が交付される
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の第4回会議が開催される。
金融庁、金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」の第7回会議を開催
金融庁、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の第2回会議を開催
経済産業省、「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」の第2回会議を開催
政府、平成28年度税制改正の大綱を閣議決定
平成27年11月定時株主総会の概況 
  ■    ■スクランブル:企業法務関係者にとって躍進の年に